日本経済の問題はデフレではなくwageless growth

本業が忙しくて勉強不足なのか、信者ビジネスに走ったためなのかは分からないが、中野剛志の日本経済診断はいい加減で藤井聡と五十歩百歩になっている。

2:54~や3:58~では「日本経済は20年以上成長していない」「成長していない国は日本だけ」との趣旨の発言をしているが、これは事実ではない。

確かに、GDPは名目ではほとんど増えていないが、実質では増えている。橙マーカーの二時点を比較すると、名目は+3.3%だが、実質では+17%である。

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(シャドー部は戦後一番と二番目に長い景気拡大期)

日本の実質成長率が他国に比べて低くないことはクルーグマンも認めている。

9:07~では、20年間デフレで景気が悪いから企業は設備投資せずに貯蓄に走る(内部留保が積み上がる)と説明しているが、これも事実ではない。

そもそも、物価は20年間も下がり続けていない。また、2002年1月~2008年2月と2012年11月~2018年10月には戦後最長と二番目に長い景気拡大を実現している。

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企業利益も激増している。

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日本経済だけが停滞しているように見えていたのは、経済の構造変革(→経済成長が賃金に反映されない傾向)が世界金融危機ではなく1997年の金融危機を契機に起こっていたためである。

アンヘル・グリアOECD事務総長は、パリで開かれた本報告書の発表会見で次のように述べました。「雇用が増えている一方で経済成長が賃金に反映しないというこの傾向は、世界金融危機によって深化した経済の構造変革を浮き彫りにしており、特に低技能の労働者に対する支援が急務であることを明らかにしている。包摂的成長の実現には、的を絞り込んだ政策手段と市民社会のパートナーとの緊密な連携によって、労働者が急激に変化する労働環境に適応しその恩恵を受けられるように支援する必要がある。」

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日本企業の性格はこの10年間で本当に変わったと思います。[引用者注:初版刊行は2004年]
もっとも端的にいえば、経営者マインドにおける経営目標の優先順位の変化です。15年前だったら、株価の維持よりも従業員の待遇をよくすることが、ずっと重要に思われていました。今はその逆なのです。
賃金が上昇しないのは、経営者マインドの変化、すなわち株主への奉仕を優先目標にしてきたことに起因しています。

設備投資の不足も「デフレだから」ではなく、IRRやROIに比べてハードルレートが高過ぎるためである。

人口減少のために国内需要の伸び率が低い→IRRやROIが低い
ハードルレートがグローバル水準に上昇

ファンダメンタルズがこれ👇なのにハードルレートが上がれば、投資が国内から海外に流出するのは必然である。

日本は世界のどこよりも早く長期停滞を経験している国です。その主要な要因は人口の高齢化です。人口動態の変化が、需要の低迷、投資需要の低迷をもたらし、それが経済の停滞につながっているのです。

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中野の分析はリフレ派の「金融政策が引き締め的→需要不足→デフレ→投資から貯蓄へ」の金融を財政に変えただけで、財政政策・金融政策では対処できない人口減少と経済の構造変革を軽視しており、素人をミスリードする有害なものと言わざるを得ない。

14:50~では森永が成功した企業経営者が政治の話をすることの弊害を語っているが、これはその通りで、その最たる例が松下幸之助が1979年に設立した松下政経塾であろう。卒塾生たちが日本の経済社会に与えた害悪の大きさは計り知れない。

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