反緊縮派議員の粗雑な議論

反緊縮派でMMTシンパの安藤裕議員がテレビ出演していたが、ロジックが粗雑すぎる。

国債残高が増えても財政破綻しない理由を三つ挙げていたが、そのことはMMTが正しいことではなく正しくないことを補強している。

❶MMTに基づく安藤議員の説明「国債発行は新しく通貨を発行する行為」
❷財務省の外国格付け会社に対する反論(2002~2003年)
❸安藤議員のもう一つの説明(⇩)

日本国という経済主体は永続するので、100年後に返す、200年後に返す、極端な話、1万年後に返すでもいいわけですよ。それまでずっと借りっぱなし、借り換え借り換えで回していってもいいわけですね。

❶と❷❸は基本設計が根本的に異なる通貨システムを想定しているので、オーソドックスな解釈の❷❸で財政破綻しないことが説明できることは、MMTの通貨システムの記述が正しくないことの根拠になってしまう。❷❸を地動説、❶を天動説に当てはめればよい。地動説でも天動説でも天体の動きを説明できるが、地動説で説明できるのであれば天動説に居場所はない。

❶が厳密な意味では正しくないことは、現行制度ではマネーの発行主体は民間銀行と中央銀行に限られていることからも明らかである(補助貨幣の製造元は政府だが、銀行券を含む通貨の流通は中央銀行に一元化されている)。「国債発行は実質的に通貨発行に等しい」と言えるのは、中央銀行が政府の「打ち出の小槌」になる=(事実上の)ゼロ金利で直接引き受けする場合だが、原則禁止というのが世界標準である。中央銀行は民間金融機関向けに通貨を供給し、政府はそれを徴税または市場経由での借入によって調達する仕組みになっている。

安藤議員は挑発的なツイートもしているが、

「低金利のもとで政府債務が膨らみ続けている」ことは謎ではないので、MMTが正しい根拠にはならない。

国債価格を決めているのは債券市場なのだから、債券投資のファイナンス理論を無視して議論しても意味がない。

But President Richard Nixon famously ended the gold standard in August 1971, freeing the government to take full advantage of its currency-issuing powers.

素人MMT信者が誤解しているニクソン・ショックの意味についてはこちら(⇩)を参照のこと。


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