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経済

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#小林慶一郎

日本が貧乏国に転落したのは日本人がエコノミック・アニマルだから

日本が貧乏になっているという言説が増えている。 実のところ、1人当たり実質GDP成長率は他の主要先進国と比べて低くなかったのだが、賃金が上がらない+円安のために、国民の購買力が相対的に著しく低下している。プラザ合意後によく聞かれるようになった「内外価格差」という言葉も、いつの間にか「高い日本」から「安い日本」の意味に逆転している。 その急速な貧乏化の原因だが、日本を敗戦からわずか23年後(1968年)に世界第二位の経済大国へと成長させ、1979年にはアメリカ人に"Japa

ベーシックインカムの「影」の面

この番組で長妻議員が注意喚起していたBIの「影」の面は重要なので改めて取り上げる。 一つ目が、賃金に関する社会規範を根本的に変えてしまう可能性である。 ロナルド・ドーアは、アメリカでの所得の「中位の人が下の人とのギャップを大きくしたというより、上の方の人が中位とのギャップを大きくした現象」の主因がcodeの変化にあると指摘していたが、codeの変化は下には逆方向に作用する。 重要なのは、社長たちの巨額の報酬が一例である貧富の差は、どこまで開いていいのか、同一社会内に莫大

自国通貨建てでも「国が支払えなくなる」の意味

この番組で、森永卓郎の「国が自国通貨で支払不能になることはない」との趣旨の発言に小林慶一郎が不明瞭な反論をしていたが、本題ではなかったために議論が打ち切られたので、小林に代わって「国が支払えなくなる」ことを説明してみる。 例えば、日本政府が「国民1人当たり月30万円(2020年価格)を定額給付するために全額を国債発行→日本銀行の直接引き受けで賄う」政策を恒久的に続けると宣言して開始したとする。 GDPの約80%に相当する通貨供給の継続は必然的に激しいインフレを引き起こすの

森永×小林の財政破綻論争の補足

ネット反緊縮派に目立つのが反知性主義で、知識量と理解力が乏しいために、専門家の意見が自分の信念と異なっていると、即座に「財政破綻論者」や「商品貨幣論者」などとレッテルを貼って思考停止→「敵」の論理展開を全否定→勝利宣言してしまう。 反緊縮派のスローガンの一つが「自国通貨を自由に発行できる国は財政破綻しない」で、この番組(⇩)での森永卓郎と小林慶一郎の議論でも森永に軍配を上げたようである。 議論の内容についてはこちらを参照。 確かに、歯切れの良さと勢いでは森永が優勢だった

BI財源論争:小林慶一郎×森永卓郎は小林の勝ち

この番組で、森永卓郎の「国債を70兆円発行→全額日本銀行が買い取り→国民に定額給付」を半永久的に続ける案を、小林慶一郎が「かなり同意できない」としたことから、財政破綻するか否かのミニ論争が起こった。 議論が噛み合わなかったのは、両者の破綻の定義が異なるためである。 森永の定義は債務不履行(デフォルト)なので、国債は自国通貨建て→中央銀行に買い取らせる→破綻はあり得ないことになる。 一方、小林の定義は「価格が上がって本来人々が求めていた消費財の価値を政府が保証できなくなる

荒唐無稽なBI財源論

この番組で森永卓郎が ◆現行の社会保障制度は基礎年金等の一部を除いて維持する ◆新たに年間70兆円を定額給付する というベーシックインカムの財源について 私は半永久的に70兆円ずつ日銀が国債保有を増やし続ければ、誰も負担せずにこれを導入できると思ってます。 と述べていたが荒唐無稽である。 70兆円は国の税収を上回り、家計最終消費支出(除く持ち家の帰属家賃)の約30%に相当するので、それが半永久的に続くとなれば、名目消費支出の増加に財・サービスの生産増加が追い付かない