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経済

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2019年11月の記事一覧

[ファクトチェック]日本のGDPは20年間でマイナス20%

11月16日放送のテレビ番組「教えて!ニュースライブ 正義のミカタ」で藤井聡が「日本とドイツは政府がドケチなので経済成長率が世界で下から1位と2位」「この二か国はこれから落ちぶれていく」との主旨の発言をしていた。 近著にも同じ内容が見られる。 その中で最も激しく衰弱してしまったのが我が国日本だ。 何といっても2015年までの20年間で日本のGDP(国内総生産)は、ドル建て換算で実に20%も縮小してしまったのだ。このマイナス20%という成長率は、断トツの世界最下位である。な

ジョンソン英首相の積極財政論

イギリスのボリス・ジョンソン首相が、12月12日の総選挙で勝利したなら、経済社会を立て直すためにインフラストラクチャー、教育、テクノロジー分野への財政支出を拡大するとSpectatorのインタビューで語っている。 The remedy, he says, is ‘infrastructure and education and technology.’ 金利が上昇するまでは借入を財源にする。 It’s also the backbone of his new econo

ビル・ミッチェルの朝日新聞インタビューとMMTの弱点

これまでの記事と重なる内容になるが、ビル・ミッチェルの朝日新聞のインタビューについて検証する。 ミッチェルに限らず、このような認識(⇩)をしている人は少なくないが、これは事実に反する。 Unfortunately, the government has succumbed to this fear mongering and, at various times, imposed austerity measures, which have halted the growt

MMTの教祖ビル・ミッチェルの世界革命論

MMTの教祖ビル・ミッチェルが来日した際の講演がYouTubeに公開されたが、日本経済に関する事実認識が誤っており、ありがたく聞くような内容ではないことが改めて確認できた。 9:25~では実質GDPの対前年同期比のグラフから、1997年と2014年のマイナス成長をSales Tax Hike(消費税率引き上げ)によるものと説明しているが、1997年はQ2とQ3はプラス成長で、Q4から7四半期連続でマイナスに転じている。この原因は11月の三洋証券のデフォルト→北海道拓殖銀行→

大蔵省と橋本龍太郎が敷いた日本没落へのレール

マイナス金利云々は別として、この「社会的割引率4%は高過ぎるので引き下げるべき」は正論である。 本コラムでも指摘したように、割引率4%は今の金利環境では高過ぎて、日本の公共投資を過小にしてきた。 一部の野党でMMTがもてはやされているが、それよりも、実務的には、ロジカルに割引率を見直した方が公共事業の拡充には早道である。 この割引率問題を直さずにMMTなどに走るのは本質をずらしていると言わざるを得ない。MMTをいくら主張しても、実際の実務では割引率を是正しないと公共事業を

ラグビーと日本経済

ラグビーのワールドカップで日本は史上初の準々決勝進出を果たしたが、その原動力は大量の外国人選手だった。 日本経済も、製造業の海外生産比率や、対外直接投資の民間企業設備投資に対する比率は1/4を超えるまでに上昇している。 それと並行して、企業の利益率は高度成長期を大きく上回る水準に上昇し、法人企業所得はバブル期の2倍、配当は5倍に増大している。 ラグビーも企業も、国内から海外に比重を移すことで好成績(業績)を達成したわけだが、その裏側では国内の選手・労働者が日陰に追いやら

2020年頃に名目GDP600兆円

忘れてしまった人も多いかもしれないが、安倍首相は名目GDPを2020年頃に600兆円にすると表明していた。 2018Q3~2019Q2の名目GDPは552兆円なので、2020年度に600兆円にするためには年率+4.9%が必要になる。 安倍首相の表明後に1993SNAから2008SNAに変更され、名目GDPは約30兆円増加したので、目標を630兆円にすると年率+7.8%が必要になる。 消費税の増収分が上乗せされるものの、この目標が実現可能と本気で思っている人は応援団にもほ

ビル・ミッチェルもZSS(全部消費税のせいだ)

来日したMMTの教祖ビル・ミッチェルが日本経済についていい加減な分析を披露していたようである。 48分48秒~で質問に回答しているが、ブログ記事と同じく、消費税率引き上げが景気後退の原因だとしている。 これも同類。 「デフレ圧力は今後さらに強まる可能性が高い。日本の長期デフレは、1997年の消費増税と、その後の政府支出の抑制が主たる原因。このままでは“失われた20年”が“失われた30年”になるのは確実でしょう」 藤井聡の講演資料にも1997年4月の消費税5%、2008

ドイツと日本の奇妙な死

ドイツの連邦雇用調査研究所の専門家が2040年までにドイツの人口の約40%が移民系になると予測している。フランクフルトなど大都市では65~70%になるという。 既に25%は移民系だが、経済力を維持するためには、今後も世界中から移民を集める必要があるとしている。 Currently, 25% of the people living in Germany are either immigrants, or first or second-generation descend

大学英語試験と日本のフィリピン化

11月5日に衆議院第一議員会館で行われた第2回MMT国際シンポジウム「MMTから考える日本経済の処方箋」での、柴山桂太(京都大学大学院准教授)の講演「MMTは新自由主義を超えうるか」の資料が公開されていたので、MMTとは関係ない二点について取り上げる。 人口の一極集中一点目は川端祐⼀郎(京都⼤学⼯学部助教)提供の「人口の一極集中度」のデータから「⽇本の⼀極集中はサウジよりひどい」というものだが、これは比較がおかしい。 日本 30.03% サウジアラビア 20.26% 韓国

日本の梅毒患者増加とリベラルの目標

朝日新聞が梅毒患者増加を記事にしている。 第二次安倍政権発足後に急増している。 女の増加率が高い。 女性は20~30代に多く、男性は20~50代に多い。性産業に従事する若い女性や客となる男性の間での感染が指摘されている。 特に20代前半の女が多いことは、性産業が拡散の中心になっていることを強く示唆する。 増加のタイミングと性風俗との関係から、外国人、特に中国人の「風俗爆買い」との関係が推測されるのは極めて自然である。 疫学調査がないため特定はできないのですが、20

ジンバブエの隠れ財政赤字とハイパーインフレーション

中央銀行が文字通り「お札を刷って」市中に大量に供給した結果、ハイパーインフレーションを招いて自国通貨ジンバブエドルの紙屑化→廃止に至ったのが2000年代のジンバブエである(現在は復活中)。 日本人にはなじみがないが重要なのが、中央銀行のRBZが信用創造したマネーで補助金等を政府に代わってファイナンスする準財政活動 (quasi-fiscal activity)で、IMF Country Report (2005)や The high rates of money grow

経済成長を志向しない経済学者

この記事について少々コメントする。 人口1人当たり実質GDPの伸びは、アメリカと比べても遜色がなく、生産年齢人口1人当たりではアメリカを凌いできた。 そうした事実が記された文章として、次のようなものがある。 日本の1 人当たりGDP の伸びは、他の先進諸国と比べて遜色のない伸びを示してきた。(「社会保障と国民経済――序章 医療政策会議における基本認識」日本医師会・医療政策会議報告書<2018年4月>) この(⇧)執筆者は権丈本人である。 生産年齢人口1人当たり実質GD

企業の変化に取り残される経済学者

脇田成がこのように書いているが、現状認識が時代遅れになっているように思われる。 筆者としては日本経済の現状認識をもとに、今後どうすればよいのか、読者自らが考えてほしいと思っている。本書がその際の判断材料を提示したガイドブックとなれば、筆者としては望外の幸せである。 ここではこの箇所についてファクトチェックする。 そもそも日本企業のガバナンスを考えるならば、企業の借入低下、デレバレッジを問題とすべきだ。図4-9が示すように、総資本営業利益率、売上高営業利益率は過去30年以