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【学校では教えてくれない世界の秘密】苦しかったときの話をしようか【2章】

前回に続き,こちらの書籍の2章についてまとめてみました.


そもそも人間は平等ではない

我々はみんな違って生まれてきている.例えば,生まれつき背の高い(低い)人,太りやすい(にくい)人,運動神経の良い(悪い)人などを見れば,決して皆が同じ能力を持って生まれてくるわけでないことがわかる.そして,経済的格差を生みやすいのが,生まれつきの「知力の格差」である.
東大生の親の平均世帯収入が多いのは,知力が高いからであり,その子どもも親の遺伝子のおかげで知力が高く生まれる確率が高い.それら先天的な格差に加えて,後天的に恵まれた教育環境でその差を増幅することは間違いない.このように,そもそも人間は平等どころか,本人の意思に関係なく,スタートラインから不公平で残酷な差がいくらでもあり,最初から自分のスペックはほとんど決まっている

しかし,その先天的な特徴,後天的な特徴,その組み合わせは一人ひとりが極めてユニークなものを持っている.ゆえに,自分のユニークさをちゃんと認識し,それを磨けば特別な価値を生む可能性があることに他ならない.大事なのは,自分の特徴をより早くより明確に認識し,その特徴が活きる環境を探して泳いでいくことである.つまり,我々がコントロールできるのは,1. 自分の特徴の理解,2. それを磨く努力,3. 環境の選択,最初からのこの3つしかなく,この事実を直視することがキャリアを築き上げるのに大切なスタートラインとなる.

資本主義の本質とは何か

我々が暮らしているこの社会は資本主義社会であるため,資本主義について理解することで,キャリア形成において役立つはずである.
資本主義の本質とは「人間の欲」であると筆者は述べている.例えば,「より便利でより快適な暮らしがしたい」という欲のベクトルは,人類の歴史において逆行したことがなく,この欲をエネルギー源として,人々を競争させることで社会を発展させるのが,資本主義社会である.
そして,資本主義社会においては,大きく分けると2種類の人間しかいない.それは,自分の24時間を使って稼ぐ人と,他人の24時間を使って稼ぐ人である.前者をサラリーマン,後者を資本家と呼ぶ.そして,資本主義とは文字通り,後者の資本家のためにルールが作られた社会である.そのため,サラリーマンとして過ごした人生と,資本家として過ごした人生とでは,生涯年収の桁数がいくつも違う結果となっている.色々な面で資本家の方が優遇されるためである.これについては以下の記事でも触れている通りである.

では,なぜ全員が疑いもなくサラリーマンを喜んでやっているのか?それは,日本の教育システムが大量の優秀なサラリーマンを生産するように作られているため,普通に教育を受けているだけでは,自分の外の世界(資本家)に気づくことができないためである.つまり,良い成績をとって,良い大学を出て,大きな会社に入って,安定した生活を送る,それが幸せな成功者の目指す道だと,教えられることが多い.
ここで伝えたいのは,サラリーマンではなく資本家を目指せ,ということではなく,サラリーマンの外に資本家の世界があることを知った上で,自分を活かす環境がサラリーマンなのか,資本家なのかを見極められることが大事ということである.

我々の年収を決める法則

我々の年収を決めるファクターは,持っているスキルの価値,業界の構造,成功度合い,の3つである.自分が持っているスキルが希少かつ価値のあるものであれば,年収は高くなるだろう(例えば,医師免許).また,就職する業界がお金を払える業界であれば,年収も当然高くなる(現在のAIブームなどが良い例).また,その業界の構造も大事である.例えば,プロ野球選手の平均年収がプロサッカー選手の平均年収よりも高いのは,プロ野球の方が1年に多くの試合(イベント)を行えるという構造があるからである.最後は,説明しなくてもわかりやすいと思うが,どの程度成功したかである.
以上の3つの要因を組み合わせて,人の年収は決まっている.そのため,就職や転職をする際には,どのスキルを磨くのか,どの業界を選ぶのか,そして自分がどの程度成功できるそうなのか,を考えることが大事である.
特に転職に関して言うと,現在いる自分の会社から同業界の似たようなポジションで別の会社に転職するという選択は,年収という観点では同じような給料しかもらえないことが多いことになる.年収を上げるために転職するならば,「自分のスキルが活きる」かつ「もっと給料が払える他業界へ転職する」というのが正しい選択になる.

上記の年収の法則を踏まえた上で大事なのが,それでも自分にとって情熱を持てる好きな仕事を選ぶべきということ.それは,好きでないと3つ目の成功度合いを上げることが難しいからである.仕事というのは基本的に辛いことのほうが多く,お金のために好きでもない仕事を選んでも成功できる可能性は低い.どの業界だろうが,どの仕事だろうが,その世界で成功すること(プロになること)がキャリア形成において重要である.どの業界でもある程度のプロになれば,それまで培ったスキルと実績を土台にして,業界の構造を飛び越えてスキルのステップアップが可能になる.例えばカレー屋で成功したならば,そのノウハウ自体を売るビジネスにステップアップしたり,フランチャイズ・カレーチェーンのオーナー社長という別次元の仕事に就くこともできる(CoCo壱番屋が良い例).

会社の将来性を見極めるコツ

多くの人は安心と安定を求めて,東証一部の会社やよく名前が知られた会社に集まるが,その考え方は正しいだろうか.もし本当に安定したいのであれば,今の大企業に入るのではなく,将来の大企業に入った方が良い.今は小さくても,将来大企業になるような会社に入れれば,会社とともに成長でき,経験できる質と量という意味で,キャリアは他の人に比べて豊かになる可能性は高いからである.
では,そのような将来の大企業や中長期にわたって安定する企業をどう見極めれば良いのだろうか.以下でいくつか紹介しよう.

持続可能な「需要」の有無をみる
まず注目すべきなのは,需要の変化である.その社会の主な売上を支えている市場の需要がどれだけ将来にわたって安定してあり続けるのか,という観点である.例として,自動車産業を需要という観点から考えてみよう.
原則として,市場の需要は大きな目でみると必ず消費者の欲に従う,ということに注意が必要である.つまり,消費者は必ず「より便利でより快適なもの」を求め続け,世の中の産業は消費者が求めるその方向へ動かざるを得ないのが実情である.
では,自動車産業はどうなるのか.1つの可能性として,自動車需要は先細ることが考えられる.そもそもマイカーを保持し,自分で運転することが金銭的にも身体的にも負担であることを考えると,AIによる自動運転が普及した場合,自動車需要は大きく先細ることが考えられる.
もし自分で運転すること自体に価値を置く消費者が大半だったならば,MT車に対してAT車がこれほど普及することもなかったはずだろう.高齢化が進むという観点でも,自分の判断力や運転能力に依存しないと移動できないよりも,AI時代はきっと快適で便利で事故も少なくなっているに違いない.自分で運転などしない,マイカーなど要らない,必要なときに好きな自動車に自分を迎えに来させる、そんな時代がやってくる.
そう仮定すると,次世代への備えがどうかという観点である程度ならば個別の企業の未来の予測をたてることができる.自動運転に関して言えば,現在のAIは膨大なデータを必要とし,Googleなどの巨大なテックカンパニーがそれらのデータ蓄積および技術開発を行っているため,伝統的な自動車会社に比べて随分先行しているようにみえる.
このように,様々な情報の手がかりを集めて,自分なりに自分が検討している企業の主な売上の未来の需要,そしてその企業が開拓しようとしている新規ビジネスの未来の需要,それらを考えるのが大事である.

持続可能な「構造」の有無をみる
2つ目のコツとして,その需要から持続的にシェアを取り続けるための「構造」を見極めることが重要である.わかりやすい例として,東京ディズニーリゾートを考えよう.
東京ディズニーリゾートの強力なシェアの源泉は何か.それは,「ディズニーブランドというオリジナルのコンテンツ力」である.そして,ディズニーを陳腐化できるようなブランドが関東圏に出現する可能性は小さく,またディズニーブランドを使った競合の同商圏での出店は契約で封じられている.さらに,ディズニーリゾートほどの規模をもった直接投資を実行できる競合出現の可能性もそもそも小さい.これらのことを考えると,東京ディズニーリゾートは,持続可能な強力な構造をもっているとみなすことができ,需要が存続するならば中長期で東京ディズニーリゾート(オリエンタルランド)は関東圏で強力かつ安定した企業として君臨する未来が予想できる.
もう一つの例として,コカ・コーラを挙げよう.彼らの売上を支えている構造は,「その圧倒的な規模」である.例えば,競合となる企業を起業し,コカ・コーラに対抗しようとしても,世界中の製造から流通までの圧倒的な規模で支配する彼らに対し,利益の出るビジネスモデルを構築することが難しい.なぜなら,コカ・コーラの規模だからできるコスト構造に対して,同じような消費者価格で,巨額の予算を投じて長期間にわたる大幅赤字覚悟の勝負を仕掛けることは非現実的であるからである.そして,人間の喉が渇く限り,世界の人口が増え続ける限り,コーラとしての需要は先太いのも強みである.


資本主義社会や年収の法則を把握し,安定した企業を見極めたとしても,結局は自分の目的に合致するかどうかが最重要なため,目的に合わない就職や転職は意味が無いことに注意が必要である.そのため,自分のキャリアの目的を明確にすることが何よりも重要となる.これについては,別の記事で紹介していきたいと思います.

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