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ある高校生からのメール

見ず知らずの高校生からメールを受け取った。

まず文章がとてもしっかりしていて礼儀正しいことに驚いたが(私は高校生の頃にこんなちゃんとした手紙が書けただろうか)、それよりなによりそこには生物が好きで研究が好きであることが切々と綴られていた。

彼女の研究に対する情熱と、研究が楽しくて仕方が無い様子が活き活きと伝わってくる。

科学立国を標榜していたはずの我が国の科学の衰退が言われている。私も憂慮すべき状況だと思う。研究者を志す若者も減っている。だが、このように研究に目を輝かす子供達は潜在的に多いはずだ。

実際、高校生に大学で研究を体験させる大阪大学のSEEDSプログラムや、同様のことを小中学生向けにボランティアの先生方が行っている「めばえ適塾」は非常に人気がある。

しかし現在の受験中心の教育システムでは、そのような芽は摘まれていってしまう。受験のためにたくさんの知識を詰め込まなければならず、研究マインドは萎縮する。そして大学入学がゴールになってしまい、折角大学に入ったのに受験戦争に疲れ果て目の輝きは失われる。

私は現行の教育体制を完全否定するつもりは無い。良い点もある。また、皆が皆研究に興味を持つ必要もないと思う。だが、一部の、かって私もそうであったような「オタク」な研究好きの子らが受験勉強に押しつぶされずに、ゆくゆく科学者に育つような社会であって欲しい。

そのような仕組みが作れないかと、同様の考えを持つ先生達と策を練っている。大袈裟だと言われるかもしれないが、継続的に科学者を育てられるかどうかが、この国の命運を握っていると思う。

下記に個人情報を省いて、私が感動したその高校生のメールを載せる。


科学研究に男女差など全く無関係なのに、我が国では長く女性がするものではないという風潮が強かった。下記メールの主が女性であることに、希望の光を見出すのは私だけではなかろう。

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…略…


生物や遺伝子が好きで、オートファジーについても大隅先生が行われた東工大の公開講座に出席したり、吉森先生が書かれたLIFESCIENCEの本を読み進めていたところ、〇〇さんから吉森先生のお話を伺ったため、滅多にこない貴重なチャンスを無駄にできないとの思いが募り、突然ですがぜひ夏休みにインターンの機会を与えていただきたくメールをさせていただきました。

インターンと書きましたが、研究室の掃除や片づけ等の雑用でも喜んで行います。
本当にどんな形でも構いませんので実際の研究室にお邪魔させてもらい、研究者の方々や先生が研究室でどんなことを考えて何をしているのかを実際に間近で見れるだけでもとても嬉しいです。

私は小さい頃から「生物は何故生きているのか、どのように生きているのか」を長い時間飽きもせずに考えたり、いきなり家で実験まがいの遊びをして両親に怒られるような知的好奇心が旺盛な子供でした。
高校生になって受けた生物の授業で、遺伝子や細胞の働きによって「生きる」ということが成立しているという事実を知り、初めて私が長年考えてきた疑問への答えに近づけたようでとても感動しました。

私は現在、高校の理系のコースに所属し、〇〇の再生に関わっている可能性がある機能未知遺伝子〇〇について再生への関与や特異性を特定する研究を行なっています。(私が行なっている研究については高校の卒業論文用に書き進めている書類を添付させていただきました。研究者の方に見せられるほどのものではないので本当にお恥ずかしい限りですが、お手すきの際にお目通しいただけたら幸いです。)

現在の研究は、高校1年生の時に〇〇の高い再生能力の源が遺伝子であること、細胞内の分子過程などを解明することが再生医療の発展に繋がることを知り、自らも〇〇の再生プロセスの謎の一端を解明してみたい!との思いで、友人と2人で始めました。
初めて原著論文までを自分の力で読み、理解し、メンターの先生と話し合いながら実験を組み立てました。

研究がなかなかうまくいかないときは、そのとき個人的な興味から参加していた動物の系統樹とDNA解読実験についてのセミナーで講師をされていた〇〇大の〇〇教授にオンライン越しに質問する機会をいただく等で、様々な調整やコントロールなどを加えひたすら実験を試みました。

電気泳動で綺麗に結果が見れた時、研究発表に出席した時、賞を取った時、一つ一つのイベントがどれも貴重で嬉しく、楽しくて、やはり研究は最高だな、やめられないなと心の底から研究の面白さを体感しました。

現在は研究を始めて3年目になりますが、とてもやりがいがあり楽しいことだという認識に変わりはなく、これからも猛進猪突で自分の学びへの好奇心を深めていきたいと考えています。

お忙しいところ突然のご連絡大変恐縮です。
何卒ご検討いただきますようよろしくお願いします。

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