見出し画像

「LIFE SCIENCE(ライフサイエンス) 長生きせざるをえない時代の生命科学講義」という本について

拙書「LIFE SCIENCE(ライフサイエンス) 長生きせざるをえない時代の生命科学講義」が刊行されました。

今年は、PCR、集団免疫、中和抗体といった言葉が否応なしに耳に飛び込んでくる1年でした。これらは生命科学の用語です。そして、パンデミックでなくても、今、遺伝子組換えなど生命科学は好むと好まざるに関わらず一般の生活に浸透してきています。

本書はそのような生命科学の最先端を理解してもらうために、基礎に遡って紹介しています。専門知識が全く無い一般の人、特に文系の方が「わかる!」ことを目標にし、バリバリ文系の編集者と企画取材担当者にがんがんダメ出ししてもらいました。

そうすると、そもそも、科学的に考えるってどういうこと?、科学者ってどういうふうに考えて研究しているの?ということがふつうの人には知られていないことがわかり、そこから書き始めることになりました。科学者は、自分らが毎日やってることを当たり前だと思ってしまうのですが、世間ではちっとも当たり前じゃ無かったりするわけです。

それで、ふつうなら細胞や遺伝子の説明から始まるところを、第1章は「考え方」に費やしました。こういう入門書にしては、ちょっとユニークだと思います。実は「科学的思考」はそんなに難しくないし、生命科学だけではなく、あらゆる科学に共通でしかも日常生活にもとても役立つのです。

第1章を読んで貰えれば、後の生命科学の内容も飲み込みやすくなります。続く第2章は、生命の基本単位である細胞の説明です。細胞とは何かを理解すれば、人間を含む生き物のことがわかります。教科書などでは端折られるようなところもじっくり書いてあるので、「ついていけない…」と悲鳴をあげることはありません。

そして第3章ではそれを踏まえて、誰もが関心のある様々な病気がどうして起こるのかについて勉強します。ウイルスや免疫の話は特に詳しく書きました。また老化や死についても最新の考え方を紹介しています。

その次の4章で、最先端の生命科学として、私の専門である「オートファジー」を取り上げます。オートファジーとは、細胞の新陳代謝を促すと同時に細胞内の有害物を除去し、細胞の健康維持と若返りに働く細胞の機能のことです。私はオートファジー研究のパイオニアである現東工大栄誉教授の大隅良典先生と共にこの分野を黎明期から切り拓いてきました。大隅先生はその偉大な功績により2016年ノーベル生理学医学賞を受賞されました。

今、生命科学のなかでも最もホットなオートファジーですが、特に老化との関係が注目されています。オートファジーを活性化すれば、寿命を延ばし、かつ加齢に伴って起こる様々な病気を防ぐことができるかもしれないのです。健康に長生きすることは、個人にとっても社会にとっても今一番望まれていることです。

最後の第5章では、オートファジーを活性化して健康長寿を実現するために普段の生活で何ができるかを書きました。人間では実験ができないので証明は難しいのですが、動物実験などから推測されることを色々と紹介しています。私も実践しているので、多くの人に試して欲しいと思っています。少なくとも害は無いので。

本文の合間に、コラムとして、間違いが科学を進めるとか、薬ってどうやって作るのかとか、大隅先生がどのようにしてノーベル賞の発見をされたかとか、研究はチームプレーだとか、一般の人があまり知らない科学の現場の話を挟んでいます。大学発ベンチャーについても、日本の現状を書きました。

皆さん、如何でしょう。読みたいと思われたでしょうか? 生命科学について知ってもらうだけではなく、生命科学の研究がわくわくするような面白さに満ちていることが伝わればこんなに嬉しいことはありません。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?