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猿田彦(さるたひこ)って何? 誰? 夢から始まった「神様を探す旅」①

夢のお話

夢を昔からよく見ます。眠ってみる、あの夢ですが、時折濃い印象のものを見ます。
20代の前半に見たひとつの夢がありますが、それは結果的に私の人生を変えてしまいました。今回はそんな夢のお話です。

23歳の誕生日あたりに決まった再就職先では、私は北陸中日新聞本社の隔週発刊の主婦向けの情報紙の制作現場の進行管理という立場で印刷会社から1人出向することになりました。
入社してすぐに素人だった私はゼロから営業、取材、広告制作、という実際の制作現場の中に飛び込んだ形でひとつずつを覚えていきました。

その頃に見た夢です。
とある夜中から朝方にかけての夢でした。


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渦の中で今にも溺れる!

味噌蔵とか醤油蔵、お酒の蔵にあるような木製の大きな樽がありました。それは人がすっぽりと入ってしまっても余裕のある人の背丈よりも深い高さの樽でした。
気が付いたときには、私はもうその樽の中に居て、今にも溢れ出しそうな水が張られ渦を巻いて回転している樽の中で、流れに押されてあっぷあっぷしている状態でした。
溺れまいとして樽の縁に手をかけて、それでも勢いのある水の回転に押し流されてしまうので、滑りそうになる手を伸ばして樽の縁を掴み、ぐるりと巡っていました。
回転の渦の勢いで、水は容赦なく顔や頭にまでかぶってきて、
「溺れる! 手を離しちゃいけない!」
と必死だったのがリアルでした。
それは例えば、回転している洗濯機の中の水に似ています。私は洗われる洗濯物のような状態で、抵抗しながら波にもまれていたのでした。

樽の縁を掴みながら一周するかしないかのところまで来た時に、どこからか男性の声が聞こえてきます。
「さる…ひ…の……がある……しっ…お…か?」

「はぁっ?」
こっちはそれどころじゃ無いんだよ! 
私はそっちに気を向けては溺れてしまう、危ない、と感じて、滑りそうな樽の縁を掴みながら流されていました。

気が付くと渦の流れは先ほどのように荒くはなく、静かに回転しています。実際は自分がその回転の渦の流れの中にいることに慣れて少しだけ周りのことが見える状態になった、ということなのかもしれません。そこで再び声が聞こえてきます。
「さるたひこのたからがあるのをしっておるか…」

太い男性の声でした。その声の方を探そうと顔を動かすと、その人が居ました。その人は大きな樽の渦を巻いて流れている水の中心にいたのです。中心に居ながら水の影響をまるで受けることなく、重力にも影響を受けること無く、ただ浮いているかのようにそこにいました。おじさんが何を言ったのかはよくわからずにいました。

「なんですか、それ?」と聞き返しました。
「私は見ての通りそれどころじゃないのです」と思いながらです。
「危険な状態なのだから助けて!」
「おじさん、一体どうして浮いているの?」
そう思ってもいました。

そのおじさんは50代~60代くらいの印象の人でしたが、私の投げかけた言葉をまるで聞いていないような雰囲気で続けます。私に向って喋っているのにも関わらず、私の危険な状態に一切興味など無いように話し続けました。
「さるたひこのたからがある」
「それは無いようでもあるが実はある」
「誰の手にも入らぬ宝」
「本来手に入れて当然のように思える立場のものたちがいるが」
「それは長く、長い間、探されても来ているが」
「もはやあきらめてもいるが」
「それはその位置からは手に入らん」
「そういうものだからだ」
「無いのではない」

浮いたままのおじさんは最後に言いました。

「だが、ある。探すがいいぞ」

その瞬間、そのおじさんと目が合ってしまったのを覚えています。
あっ!って思ったその時から、この夢と夢の中での出来事は何をしても忘れない、そうなってしまったような気がしていました。
直後に、ハッとして目が覚めます。夢から覚めました。

忘れないようにすぐにメモを取りました。聞いたことも無い音があったので忘れてはいけない、間違えてはいけないと思ったのです。


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調査チームの発足!

その日会社に出勤した後、一緒に仕事をしているライターをしていたYさんにまず尋ねることから始めました。
「あの、さるたひこって何ですか? 知ってますか?」

先輩はすぐに言いました。
「うん。確か道案内の神様だね。そう言われてるけど謎の多い神様だよ。」
「神様ですか?」
「そう、神様。有名じゃん。それが何か?」

もともと私の環境は両親によって法華経という仏教の世界観に溢れていたので、仏様のことについてご僧侶が古文を読んで解説され、その意味と出会うという当たり前の日常がありました。それは幼い頃から保育園とか幼稚園のような感じで、いつも通っている世界、場所でした。
仏様についてのことはある程度は知っていましたが、それゆえに別の世界観である神様の世界については全く何の情報も持っていないという状態でした。
仕事場で超初心者向けにYさんが話してくれる「古事記」や「日本書紀」に出てくるの様々な神様の話に、その「さるたひこ」という神様が有名な存在だということも知らず、頷くばかり。「猿田彦命」「猿田毘古神」など様々な表記があるよとか。「天狗」とも言われているよとか。
ほぉ、とか、はぁ、とか言いながら。何にもどこにも私は「ぴん!」とは来ませんでした。


Yさんは日本の歴史が好きな人でした。特に神様や神社が好きなのだと言うのです。夢で変なものを見たんだと言うと興味を持ってくれました。
ある日突然、私の夢の中に聞いたことも無い神様の名前が登場した私は大慌て。おまけに宝って? あるけど無いとか、なかなか手に入らないとか、その宝を探せってこと?
何? いったい何? どうしてそんな夢見たの私は?
いくらひとりで考えても答えに到着出来るとは思えず、結局は夢の流れの全部をYさんに話をしました。ラッキーなことにYさんは私の夢の話を面白がってくれました。
「宝!」
そこに反応? と思いながらも、この際一緒に探してもらおう、そう決めました。なにしろ楽しそうでワクワクしてきます。
ということで、夢の中で水の渦の中心で浮いたままのおじさんが言っていた「猿田彦(さるたひこ)の宝とかっていうもの」それがあるのか無いのか、その宝とは何なのか、何のことを指しているのかを探すことになったのです。

まずは図書館、そして書店へ。「猿田彦(さるたひこ)」について書かれているものを片っ端から読んでいきます。Yさんの人脈を通して、さらに神様について詳しそうな歴史研究をしている人などに「猿田彦(さるたひこ)」という神様の「働き」について調べ続けました。とある時は集中し、とある時はゆっくりとしたペースでYさんと二人して「猿田彦(さるたひこ)」について考え続ける日々が年単位で続くことになったのです。
今思えば、あの頃のそれはまるで長い長い夏休みの研究、まるでプロジェクトのようでした。

探しても考えても「猿田彦(さるたひこ)の宝」には一向に私達は到着することも無く、近付く気配さえも無く、もうこれ以上は新しい情報は出てこないねぇ、という状態になって私達の調査は暗礁に乗り上げてしまったようでした。時々その調査からも離れて、関係の無い他のことに向うことも少しずつ多くなっていくような日常でした。


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一本の電話が導く

そんな時、ある日我が家に突然一本の電話が入りました。
それは母の知り合いの、とある関西にある芸能関係の会社の会長さんからの紹介でかかってきた、畳の焼け焦げ修理の技術への問合せの電話でした。

「畳の焼け焦げが修理できるって聞いたのですが、本当ですか?」

畳の焼け焦げ修理とは、当時父親が運営していた会社のもので、落としたタバコ等による畳の焼け焦げを修理する技術のことです。当時は方法特許取得の技術でした。私はその問合せに答えました。
「はい。その場で修理することが可能です。」

さて、その一本の電話が思わぬ「猿田彦(さるたひこ)」との出会いとなる次の旅への入口になるとはつゆ知らず…。


このお話は「猿田彦(さるたひこ)」って何? 誰? そこから始まった「神様を探す旅」②へと続きます。


写真と文 sanae mizuno
https://twitter.com/SanaeMizuno

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