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16歳の愛犬がリンパ腫になりました②~診断結果と治療方針~

愛犬の名前は「れお」。そのダンディな佇まいから愛称は「れお氏」。茶色と黒色の混じった胡麻柴でした。
生後数か月で後ろ足3箇所を骨折した状態で公園に捨てられていた元保護犬。同居人が管理センターのHPを見て一目惚れし、我が家にやって来た犬です。

これは、れお氏がリンパ腫と診断されて亡くなるまでの僅か1ヶ月間の介護記録です。

介護福祉士の資格を持つ介護のプロである私が、経験をフルに生かして介護にあたりました。少しでも、リンパ腫を発症した愛犬を持つ方の手助けになれば良いと思っています。

診断結果

結果が出た週末、再び先生に相談しに行きました。

検査の結果、れお氏は『多中心型リンパ腫』と診断。

リンパ腫は発生する部位によって、多中心型や消化器型、皮膚型などに分類されます。「多中心型」は全身のリンパ節に腫瘍が出来る、リンパ腫の8割を占める非常に一般的なものです。

この検査時に、同時にリンパ球クローナリティ検査というものもお願いしていました。

これは、遺伝子レベルでリンパ腫の細胞のタイプを判断するものです。この結果によって治療の反応性や薬剤の選択が変わってくるそうです。

こちらでも、非常に一般的な進行速度の速いリンパ腫であることを告げられました。

この2つの検査で、確か2万円弱だったような…?

動物の検査はお金が掛かるんですよね。まあ、仕方なし。

治療方法は抗がん剤

もし、何か治療をするとしたら出来るのは「抗がん剤治療」だと言われました。

そして、抗がん剤治療に関して先生が強調したのは以下の2点。

①抗がん剤治療には必ず副作用がある

ネットを見ると、リンパ腫の抗がん剤治療はそんなに副作用が無いように書いてあります。

でも、私はこれまでの自身の経験で周りの抗がん剤治療経験者で副作用がほとんど無かった人を知りません。味覚障害や嘔吐、腹痛や下痢など何らかの副作用が必ずあります。これだけ人間に副作用があるのに、犬だけ副作用が出ないとは思えません。

もし、若くて体力もあったら、その程度の副作用は体への負担にならないかもしれません。

でも、れお氏はすでに16歳を超えて食欲も衰え、数か月前に前庭疾患を発症してからは歩くのもやっとです。この状態での副作用は大きな負担となると思います。

また、周りで愛犬がリンパ腫になって抗がん剤治療をした飼い主さんが何人かいました。

結果、リンパ腫告知から半年以上生きていても、そのうちの半分以上は抗がん剤治療の期間です。副作用に苦しんで毎週の治療はれお氏にはツラいのでは…と思いました。

②リンパ腫は必ず再発する

抗がん剤治療をしても必ず再発するよ、と言われました。

このセリフは重かったな…。

治療で腫瘍が小さくなっても、再発したら同じ事の繰り返しです。何回か抗がん剤を繰り返すうち、いつかは腫瘍が小さくならない日がやって来ます。その日がくるまで、癌を抱えたまま治療を繰り返す必要があるのでしょうか?

私達の決断

私と同居人はもう心に決めていました。

れお氏には、痛みやしんどさを取る以外の治療は止めようと。

このまま、れお氏は最期までれお氏らしく、彼のQOLを尊重して生き方をしてもらおうと決めていました。

16歳まで生きてくれたんだもの、きっとこれが彼の寿命なのです。

本当はもっと生きてもらいたけれど、長生きを望むのは人間のエゴでしかないんですよね。

だったら、なるべく痛みや苦しみを取り除いて穏やかな最期を迎えられるようにするのが飼い主の役目だと。

この決断の裏には、先生の「そんなに苦しんだり、痛がったりすることはないよ」という言葉がありました。

だんだんと食べられなくなり、水を飲めなくなり、枯れていくような亡くなるのが一番楽な死に方だと聞いています。病気自体の苦しみがそんなにないのなら、れお氏のもそうやって亡くなってもらいたかったのです。

介護士の私が思う事

私は療養型の病院で介護士をしていたこともあります。

療養型。要は胃ろうや栄養点滴で生かされている、寝たきり状態のお年寄り達のお世話をする病院です。

ここでの経験は、私の死生観にとても大きな影響を与えました。

私は、ここで枯れていくように静かに亡くなってい行ったお年寄りを見た事がありません。

何故なら最後の瞬間まで、体に栄養が行き渡ってしまうからなんです。

本人はとっくに食べられる状態ではないのに、管から栄養が入ってくるので体は拒否できないのです。

正直なところ、苦しみが長引いているだけだと感じる事も何度もありました。

こんな経験を経て、生き物はやたらと延命すべきではないという考えに至りました。

もちろん自分が病気になった時も延命は望んでいませんし、癌によっては抗がん剤も使わないと思います。

私の中の後悔

2020年の9月、れお氏の妹分のくるみが腎臓病で亡くなりました。

この子の最期を、私はちょっと後悔しています。

腎臓病になると、だんだん食欲が低下してきます。

くるみは、元々野性味が強くて自分の弱みをあまり見せない子でした。あまり食べなくなってからも結構普通に日常生活を送り、散歩も毎日行っていました。

そんなくるみに少しでも栄養を摂らせようと、私は強制給餌で液体栄養食を与えていたのです。結局1ヶ月間、くるみはその栄養だけで生きていました。

給餌を止めた次の日、くるみはあっさりと逝ってしまいました。

これが私の後悔です。

多分、くるみの体はもう限界を超えていたんだと思います。それなのに、私は無理に食べさせ続けました。飼い主に絶対に逆らわなかったくるみは、給餌も仕方なくさせてくれました。でも、そのせいで苦しかっただろうな…と。もっと早くに開放してあげるべきだったと感じているのです。

抗がん剤治療をしないという選択

もちろん、 リンパ腫は癌なので多少の痛みや苦しみはあると思います。

でも、それらは痛み止めなどの対処療法で対応していこうと。

後は自然に任せて受け入れようと決めました。

先生も「やりたくなったら、いつでも出来るから」と言ってくれたし、当面は何もせずにこのままでいくことに。

結局、この選択は正しかったと思っています。

れお氏は最期までたいして苦しむ事もなく、マイペースな日々を過ごせたのですから。


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