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「スーパーマリオ ヨッシーアイランド」、至上のオーディオ演出

個人的に交流がある方にはお馴染み(笑)だとおもうのですが、私が「オーディオ演出がスゴいゲームって何?」などと聞かれる時にいつも決まって答えるのが、「ヨッシーアイランド」です!

そして、これを答えたあと毎回、「どういう所がスゴいの?」と聞かれるわけですが、言いたいことを全て説明するのが大変過ぎるのである程度 note にまとめることにしました。

※ ゲームタイトルは「スーパーマリオ ヨッシーアイランド」ですが、文中では「ヨッシーアイランド」で表記します。参考動画の乱れはブラウン管の直撮影の難しさに起因しているので、風情ということでお願いします、笑。

はじめに

ヨッシーアイランドの楽曲群は、一つ一つが良い上に優しげな雰囲気の統一感は保ちながらも振れ幅が大きく、スゴい!というのはもちろんなのですが、本稿ではその「オーディオ演出」としての魅力に着目して説明していきます。

次項から項目に分けてヨッシーアイランドのスゴいオーディオ演出について紹介していきますが、ぱっと解りやすくスゴい演出よりは細かくみると実はスゴい!といったものが多いため、独断と偏見による「スゴ度」「解りやすさ」を併記してお送りします。

1. ゴール&スコア演出 (スゴ度:★★★★★ 解りやすさ:★★★☆☆)

ヨッシーアイランドのゴール&スコア演出は、

ゴールゲートをくぐる
→ ルーレット開始、「GOAL」の表示、赤ちゃんの引き継ぎ
→ ルーレット結果決定
→ ルーレットと「GOAL」が消えて、スコアボードへ移動
→ スコア採点
→ 採点結果発表
→ ステージ選択 or ボーナスステージへ移動

と、かなり情報量が多く忙しいものになっています。

そこに対するオーディオ表現として、

  • ゴールゲートをくぐった瞬間から鳴り出す楽曲がスコア表示終了まで鳴り続け、一連の流れを作っている

  • 各種効果音が楽曲の一部のように鳴るようにテンポ感が調整されている

  • 楽曲のイントロ後に間があり、そのタイミングでルーレットの結果が出るように調整されている

というような演出が行われています。言葉だけではなかなか伝わりにくいところですが、この一連のテンポの良さは体感してみると本当にスゴいです。こういった演出のおかげで情報量の多さを自然に受け取ることが出来るようになっているわけですね!

2. ゲームスタート演出 (スゴ度:★★★★☆ 解りやすさ:★★★☆☆)

ゴールと対のスタート演出ですが、こちらも非常にテンポが良くテンションがアガりますね!

  • ステージ選択を行うとステージアイコンが回りだし、ヨッシーの鳴き声的な効果音でステージの選択を強調
    (同期は取られていないが、テンポはマップBGMと揃っている)

  • ブラックアウトして短いリズムのみの楽曲、ヨッシー登場

  • ヨッシーはそのままでワイプでステージが現れ、ステージ曲に切り替わる

ビジュアルとオーディオ演出がばっちり揃っていてとても気持ちが良く、スゴいですね!

3. ものがたりオルゴール演奏 (スゴ度:★★★★☆ 解りやすさ:★★★★☆)

ヨッシーアイランドのオープニングデモは劇場のような枠の中で動く紙芝居のように展開され、直接物語世界を描くのではなく語り部による物語の読み聞かせの形が取られています。

そこではオルゴールの楽曲が流れるのですが、楽曲の途中で非常に特徴的な演出が取り入れられています。「途中でゼンマイがほどけきって演奏が止まってしまい、巻き直して再開する」というものです。

この演出によって、「ゲームに合わせて BGM を流している」という構造ではなくて、「語り部のいる世界内でオルゴールが演奏されている」という構造が強調され、「語り部のいる世界」自体の説得力にも繋がっています。

物語世界内で実際に演奏されている想定の音楽演出を Diegetic Music と呼び最近一部で注目されているのですが、この演出も直接の物語世界内ではないとはいえある意味 Diegetic Music 的で、音楽演出の構造は面白いなと思いますね!

4. ワタボーのふらふら演出 (スゴ度:★★★★☆ 解りやすさ:★★★★☆)

ワタボーに触れるとヨッシーが酔っ払いのような状態になってしまい、地形が歪んで見えてその歪みに沿ってふらふらするようになります。

(オーディオの話じゃないですが、ただの画面歪みではなく実際に挙動に反映されているっていうの、控えめに言って最高ですよね?)

そして、その演出に合わせて楽曲もぐにゃぐにゃとピッチが安定しない状態に変化します。解りやすくシームレスな変化でとてもスゴいですね!

そして、このぐにゃぐにゃ演出をよーく聴いてみると、ただぐにゃぐにゃさせているだけではなく自然に聴けるように綿密な調整(ワタボーだけに)が施されていることが解ります。

実はぐにゃぐにゃしているのはメロディパートだけで、他のパートはテンポが遅くなっている程度の変化です。また、メロディパートはそもそも本来のメロディラインとは異なる音痴っぽい(笑)外し方をしており、ただ一括でエフェクトをかけたということでは無いわけです!

5. マップBGMの変化演出 (スゴ度:★★★☆☆ 解りやすさ:★★★☆☆)

これはよく紹介されているのを見かける演出ですが、ヨッシーアイランドのマップBGMはステージ攻略が進むに従ってパートが足され、アレンジが豪華になっていきます!

最近ではよく使われる手法にもなっているものですし、当時からどんどんこういう要素を取り入れていたのはスゴいとしか言いようがないですね!

6. タイトルの変化演出 (スゴ度:★★★★☆ 解りやすさ:★★★☆☆)

ヨッシーアイランドは、ステージ攻略が進むとマップBGMが変化するだけではなく、最終ステージまで進むとタイトル画面が昼から夜へと変わります。

そしてそれに合わせてタイトル楽曲の鳴らし方も、静かなイントロ部分が飛ばされ、盛り上がりのある箇所から再生されるように変化します。これによってタイトルの一貫性は保ちながらも、前半ののどかな雰囲気と最終ステージに挑む緊張感との落差が演出されています!

イントロが違うだけでも印象が全然違うので、イントロの重要性を改めて感じますねー!

7. 音楽と効果音のトータルの調和 (スゴ度:★★★★★ 解りやすさ:★☆☆☆☆)

最後に紹介するのは音楽と効果音の調和についてです!これはキーとリズムの 2 つに分けて説明します。

まずキーについてです。ヨッシーアイランドの楽曲群は実はかなり近いキー(共通の構成音が多い)で作られています。具体的には全体として白鍵音が多く、おしろ&とりでなど一部の曲が若干フラット寄りという感じです。

また、ヨッシーアイランドの効果音は音程を持つものが多く、またその音程も同様にほとんど白鍵音になっています。

こうして共通の構成音を使用することによって、どのステージでも音楽に対して効果音が程よく協和するようになっています!怖めの雰囲気を出したいステージで少し協和をずらしているのも、非常にスゴい演出ですね!

次にリズムについてです。ゴール&スコアやゲームスタートの演出にも見られるように、ヨッシーアイランドの効果音は何かと小気味良いリズムをもったものが多いです。

リズムに関しては特にかっちりとした同期がおこなわれているわけではないのですが、音楽も含めて全ての音要素が 60fps という括りで発音されているために、それぞれのリズム感はある程度馴染んでいます!(これは音楽が内蔵音源で鳴っている強みでもありますね。)

こうした音楽と効果音の調和がゲーム自体の一体感にも繋がり、ゲーム体験の印象がぐっと上がっているのですね!

おわりに

ヨッシーアイランドのオーディオ演出は、当時だからスゴいというだけではなく、技術の発展の中で忘れ去られたスゴさや普通に現代でも比肩するものが無いようなスゴさを秘めています。

実際にプレイしてみないと伝わらないことも多く参考動画も控えめになっていますので、興味があるかたは是非プレイして確かめてもらえたらと思います!(本当は実機がオススメですが、Nintendo Switch Online などでも十分確かめられると思いますー)

参考

[GDC 2007: Koji Kondo - "Painting an Interactive Musical Landscape" の記事]


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