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「ふわぁ~生きてるって感じ」で自他の境界線を引き直す~プリキュアでイノベーション④

「ふわぁ~生きてるって感じ」とは、2020年放送のヒーリングっどプリキュア、通称ヒープリのテーマ「自分の身体、感情を大事にする」を象徴する言葉です。それが、イノベーションのプロセスの第3段階「底で内発とつながる」に対応しているとは、どうゆうことなのでしょうか。

ヒーリングっど プリキュア | 東映アニメーション より引用

「ふわぁ~生きてるって感じ」とは

「ふわぁ~生きてるって感じ」とは、主人公の花寺のどか(キュアグレース)の口癖です。のどかは幼少期から原因不明の病でずっと入院していたところから回復したばかり。この台詞は、すこやかであることの喜びを表現しています。

芝生に寝ころび、深呼吸から「ふわぁ~生きてるって感じ」が思わずこぼれだす、花寺のどか
ヒーリングっど プリキュア(第1話) より

弱肉強食VS共存共栄

ヒープリで描いているのは、弱肉強食VS共存共栄。
のどかたちは、地球のお医者さんとして、世界を蝕むビョーゲンズと戦います。自己犠牲がちなのどかを中心に、仲間の思いやりによって、自分自身の身体や感情をより大切にするようになるお話です。

ヒープリは、登場人物の心の機微を丁寧に描いているのが特徴的です。例えば、人間の姿かたちで生を受けた精霊アスミ(キュアアース)が、人間としての生活をしていく中で、様々な感情を覚えてく様子を描いています。

「かわいい」という感情を知ったアスミ(キュアアース)ヒーリングっど プリキュア(第23話)より

自分自身の身体や感情を大切にする=「底で内発とつながる」方法

さて、自分自身の身体や感情を大切にすることが、なぜ「底で内発とつながる」ことにつながるのでしょうか。

私が参考にしたのが、心理療法の一つである、ゲシュタルト・セラピー(1950年代フリッツ・パールズ、ローラ・パールズ夫妻が開発)の「接触境界の機能不全」という考え方です。

パールズは人の心と行動の不自由さの原因を、“接触境界の機能不全”と考えました。(F.S. Perls, 1973, The Gestalt Approach &Eye Witness to Therapy. Science and Behavior Books. p31)接触境界というのは、「私」と「私以外のもの」を隔てる境界のことです。接触境界の機能がゆがんでいると、その世界と内側の世界が自由で創造的な交流を持てなくなるのです。

「実践・“受容的な”ゲシュタルト・セラピー」岡田法悦  p57 より

接触境界の機能不全は、鵜呑み、投影、無境界、反転の4つの類型があり、これが神経症のメカニズムとして、複雑に絡み合って作動している、というのがゲシュタルト・セラピーの考え方にあります。健康な人の心の中でも、多かれ少なかれこれらが作動しているようです。

これを踏まえて、私は「内発とつながる」方法について、こう考えました。
本来、自然に生きていれば、内発はおのずと出てきているはず。それを阻害しているのは、接触境界の機能不全ではないか。であれば、自他の境界線(自分の壁)をいったん崩し、ありのままの自分に沿って境界線を引き直せば、内発の通り道ができるのではないか。

例えば、のどかは「身体の中にかくまってくれ」と敵であるビョーゲンズのダルイゼンに頼まれ、恐怖で逃げ出してしまったものの、「かくまってあげたほうがよかったんじゃないか」と自分を責めます(第42話)。

パートナーのラビリンに思いを打ち明けるのどか(キュアグレース)ヒーリングっど プリキュア(第42話)より

そんな自己犠牲がちなのどかも、「病気の時の苦しい思いをしたくない」という本当の気持ちを支持してくれる、仲間の存在によって、自分を大切にする決意ができました。最終決戦ではラスボス・ネオキングビョーゲンに対して、こう言い放ちます。

「私たちいつも何かと戦ってる。戦いながら生きてる。だから戦い続ける 勝つためじゃなく負けないために。みくだして、したげて、うばう、あなたみたいな人に悲しむ人が増えないように。」

ヒーリングっど プリキュア(第44話)より

つぶやくような出だしから、どんどん力強さを増していく、のどかの台詞回しが、感動的なこのシーン。(ぜひアニメで見ていただきたい・・・!)

病気の時に多くの人に助けてもらった、その恩義を背負いすぎて自己犠牲という接触境界の機能不全を起していたのどかが、自分の身体と感情を大事にした結果、内から湧き上がる力強さを手に入れたのだと、感じました。

(実は、のどかの原因不明の病気も、ビョーゲンズが関わっていたことがストーリーの中で明らかになりました。その点も象徴的なので、また別の機会にお話ししたいです。)

のどかほど優しくはない私ですが、争いを好まないためか自己犠牲が発動して仲間に注意されることもあります。その度に「勝つためじゃなく負けないために戦う」という、のどかの言葉を思い出し、自他の境界線を引き直しています。
日々、ズレを自覚しては引き直し、の繰り返しです。先ほどご紹介した、のどかの台詞の冒頭「私たちいつも何かと戦っている 戦いながら生きてる」という表現とも重なります。

自他の境界線を引き直すとは、端的に言うと、ありのままの自分を受け入れるということだと思います。ありのままの自分を教えてくれるのが、身体や感情であり、自分を大切に思ってくれている仲間たち。身体の底から「ふわぁ~生きてるって感じ」という言葉がでてくるその時が、ありのままの自分なのだと思います。

以上の理由から、「ふわぁ~生きてるって感じ」=「自分の身体、感情を大事にする」をテーマとするヒープリは、「自他の境界線を引き直す」=イノベーションのプロセスの第3段階「底で内発とつながる」の教科書と言えます。

ありのままの自分にあわせて自他の境界線を引き直したことで、つながった内発が外に向かって表出する力が生まれ、イノベーションのプロセスは第4段階に移行します。その時に大事なことは、2021年のトロピカル~ジュ!プリキュア、通称、トロプリが教えてくれます。

プリキュアでイノベーション⑤へ続く

参考:
ヒープリについて気になった方は、ぜひこちらをご覧ください。

YouTube 東映アニメ―ションミュージアムチャンネル
ヒーリングっどプリキュア 第1話 (24分25秒 フルバージョンです)
https://youtu.be/-nKbLe-nSGc

公式サイト
ヒーリングっどプリキュア|東映アニメーション
https://www.toei-anim.co.jp/tv/healingood_precure/

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