小さな記憶をデザインする
昔から、衝撃的な事実より、小さな出来事ばかり覚えている。
古い友人と話していても、学校であった大きな事件のことはとうに忘れていて、
ブランコの錆、先生が私を睨みつけた眼つき、柔道場にあった煙草の吸い殻、冬の倉庫裏の空気感、断片的にピントの合う景色だけが五感に積もっている。尤も、私と同じ記憶のある“誰か”がいるわけもなく、私の気持ちの中で、ウイスキーのグラスの氷を溶かすように、何度も頭の中でころがして、楽しむ癖がある。時々。
例えば、小さな鳥が地面から飛んでいく瞬間を思い出して