見出し画像

「問う」さんになろうよ

アートライティングを読んでみる

まずは先入観なしに、これから書かれている文章を読んで、書かれているものを想像してみてほしいです。

 水を注ぐための容器。形としては急須で、白地の磁器。注ぎ口と取っ手は一直線上になっています。
 容器を詳しく見てみます。取っ手と注ぎ口を除いた水が入る部分は、まるでかぼちゃのような形をしています。ただ、水が入って溜まる胴の部分(急須などの陶器の形は、人間の体に良く例えられて説明されます。)、ふたが重なる所は、ほんの少しくびれが出来ていて、くびれの形に合わせてふたが乗っています。
 瓜っぽさを感じる部分は細部にもあって、水が入る胴の側面には、一定間隔で縦に線が装飾として入っていて、瓜にある縦線を思い起こされます。さらに、ふたのつかみの部分も、細かい装飾で瓜のへたに似ています。
 模様について見ていきます。
本体全てに釉薬がかかり、白いガラスのような輝きが見えます。文様は、大きな二本と、その枝にたくさんの赤い花が咲き誇っています。木の上には、鳥っぽいものが飛んでいます。ふたを真上から見ると、側面と同じような木と花が描かれています。
 取っ手を真上から見ると、木の葉の文様が描かれています。注ぎ口は横から見ると同様の木の葉の文様が描かれています。
もし触ったら、冷たい印象を受けると想像します。ただ、お湯やお茶が入ることで、直接手で持てないほど熱くなりそうです。そうした場合は、取っ手で持ちたくなります。
 ところどころ、使用された形跡があって、注ぎ口やふたと本体の接地面、本体の底は、少し赤く水垢のような跡が見えます。
ふたを開けて中を覗いてみたら、茶渋の線が見られたり、お茶の葉の匂いがたりしてきそうです。

さて、ここまで読んで頂きありがとうございます。何を書いてるのだねと思いましたか?
そしたら、写真を見てもらいましょう。
今記述されていた文章は、この写真を見て書いたものでした。

スクリーンショット (4069)
「色絵梅樹文水注」〔柿右衛門 江戸時代前期 出光美術館蔵〕

いかがでしたか?
想像通りだったか、想像したものと違いましたか?
想像と全く違ったのであれば、それは私の文章力が至らなかったです。精進します。
美術品を記述することをアートライティングと言います。やってみて分かりましたが、かなり難しいです。自分の表現の限界を感じます。

 写真を見た後、もう一度文章に戻ると、何の事を言っていたのか納得されると思います。この部分は自分とは表現が違う、この部分は触れていないななど、各自見えてくる所もあるかと思います。
 その部分は、ぜひご自身の言葉にしてみてください。
そこは、自分自身の言葉、表現の幅で、私には持っていない表現、見方、感性です。

言葉にする訓練

 三次元のもので、特に、手を触れる事が出来るものを表現するのは、なかなか大変。
「触ったらどうなるだろう?」
「匂ってみたらどうだろう?」
「手に持ってみたらどうだろう?」
視覚以外の情報を、自分で問いを立てて想像させることで理解していきます。

 三次元で理解できるものは、直接手にすることが出来れば表現しやすくなります。ただ、こういった美術品は美術館に所蔵されている場合、ガラスケースなどに入っているため、視覚情報に頼る他ありません。
そうであったとしても、茶器や陶芸品は、元をたどれば日常で使われるものです。もし、日常のこんな場面で使っていたらを考えていくことで、よりそのモノを理解出来ていると思います。

想像力を働かせて、肌触りや、お茶を中に入れて机に置いたところを想像させてみる。言葉に表していきましょう。

最近読んだ本とのリンク

視覚的な情報だけでなく、五感を通して得られる情報を言葉にする。
試してみたくなったと思います。

さらに実践したくなる事も考えてみました。

 今見てきたアートライティングにとどまらず、自分の一つ一つの周りの事象に対して自分がどう思ったのかを、自分の感性で表現出来るようになっていくこと。それは、自分の身の回りで過去に起こった事、現在起こっている事、そしてこれから起こる事を、想像力を働かせて記述する事です。
何かが表現されている時点で、それは過去のものです。一つ一つの身の回りの事象の表現の仕方は、本を読んだり新聞を読んだり、たくさん学べます。

表現の仕方を学びつつ、自分が目にしている物事に、何を感じたのか表していく。その訓練を積み重ねていくと、今起きていないこれから来るものに対して、表現が出来る。未来にならないと、実際の表現は出来ないけれど、ある程度、今を表現して行く先に、将来のことが見えてくると思います。
例えば今みたいに、茶器を五感で表現していく。この視点だったら、どういう感覚が得られるか、自分に「問い」を立てていく。
 「問い」を立てる事で生まれる視点は、アートライティングを通して分かりました。

 最近読んだ本と、少し関係している箇所がありました。
「問い」を立てていく事がアート思考だと、吉井仁美著『<問い>から始めるアート思考』という本でも紹介されていました。


「アート思考」という言葉をよく耳にするようになりました。〜(中略)〜 アートは常に新しい思考を生み出し続けるものだと思います。仮にある一つの思考があったとしても、必ずそれを打ち破ろうとする動きが出てきて、別の思考があって、やがてその思考も次の新しい思考にバトンを渡していきます。それがアートの本質的な営みだと思っています。
 だから、「アート思考」を私なりに解釈すると次のようになります。
   ・アート思考=問う力
〜(中略)〜
 アートに触れて「問い」を感じる。その感性はやがて社会の事象や出来事から「問い」を感じ取り、そこから生活や仕事につながるアイデアの創出力を育むようになる。


アートを通して「問い」を立て、生活に応用していくという内容です。それが「アート思考」であると述べれられています。

アートから「問い」を立てるだけでなく、毎日の中での出来事に対しても「問い」を立てていく事で、新たな視点を手に入れ、未来について考える事が出来ると思います。

筆を執った一歩目は、なんの変哲もない茶銚(ちゃちゅう)を表現した事かもしれません。だけど、「問い」を身の回りの事象に立てる毎日の積み重ねで未来を表すことが出来たら、自分の行動がもっと変わるかもしれない。
将来のビジョンは、「問い」から立てていく。


今回のアートライティングのブラシュアップは、引き続きします。
表現の幅と、内容をもっと良くしたいです。

今後も、身の回りに対する表現を続けて、想像力と表現力、自分の出来る幅を広げます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?