【注目】中国ライブコマースについて!急成長の裏で撤退が相次ぐ中国ライブコマース市場。何が起こっているのか解説します!
こんにちは!PreVenture編集部です!
今回の記事のテーマは「中国のライブコマース」です。YoouTubeライブやTwitchの隆盛からみてもわかるように、近年、ライブ配信が非常に盛んになっています。そんな中で、頭角を現し始めているライブコマースとは、どのようなものなのでしょうか。その中心地とも言える国、中国を中心にみていきましょう。
ライブコマースについて
ライブコマースとは、ライブ配信の動画を活用してユーザーの購買を促す新しいオンライン販売形態です。
ライブコマースの大きな特徴は、リアルタイムで配信される動画で商品やサービスを紹介し、コメント機能を介して視聴しているユーザーの質問に答える点です。
これまでのECでは困難だった双方向のコミュニケーションをもとにした販売を可能にしました。
ライブコマースについてはこちらの記事をご覧ください!
中国のライブコマースについて
ここから、中国のライブコマース市場について見ていきます。
市場規模
中国のライブコマースは大きく発展しています。KPMGとアリババ集団傘下のアリ研究院が発表したレポート『1兆元市場に向かうライブコマース』によれば、2021年の中国のライブコマースの市場規模は1兆9,950億元に達すると推測されました。日本円で、約33兆9,150億円(1元=約17円)になります。この数字は、前年比90%増であるということも驚きです。
急成長した背景
中国でライブコマースが普及した背景には、「大手テック企業の参入」、「SNSによる普及」、「広告への信頼の低さ」があげられます。
大手テック企業の参入
一つ目は「大手テック企業の参入」です。
2016年、アリババ傘下のECサイト淘宝(タオバオ)が「淘宝直播(タオバオライブ)」を開設し、ライブコマース領域に参入しました。さらに同年、EC大手の京東(JD.com)も越境ECプラットフォームを始めとしたEC事業に乗り出しました。
淘宝と京東という2大プラットフォーム企業の参入以降、中国のEC市場は急速に拡大し、世界でも飛びぬけた存在となりました。
SNSへの展開
また二つ目としてあげられるのは「TickTock等、SNSによる更なる普及」です。
TickTockを始め、中国内ではオリジナルのアプリが利用されています。SNSで配信することで、若者を中心に広がりました。
商品や広告への信頼が低い
中国では、消費者の商品や広告への信頼が低いという特徴があります。ECサイトで購入した商品に欠陥があったり、誇張された適切でない広告が配信されているなどがあり、トラブルも発生しています。
そこで、動画で商品を確かめられる、実際に使用している様子を見ることができることは、消費者にとってとても大きな意味を持ちます。そのため、家電やコスメを購入する際に、ライブコマースを使用するユーザーが増えています。
ライバーをバックアップする業界構造
中国には、「MCN機構」というものがあります。「MCN機構」(Multi Channel Network機構)とは、
ライバーの育成
マネージメント
コンテンツ作成
などを行う企業です。
MCN機構は、ライバーに商品販売を依頼する企業から手数料や広告費などを徴収することで収益を得ています。MCN機構の企業は、2019年末時点で全国に2万社以上あるとされています。
従来のライバーは、アカウントの立ち上げ、企画、動画撮影、編集、案件の獲得などを全て個人で行います。また、どのようなコンテンツが注目されるのかなども自分で分析する必要があります。
ライブ配信によるエコシステムが成立
そこで、MCN機構では、ライバーの育成やコンテンツの作成などをそれぞれ企業が担当する構造になっています。この構造のため、より効率的にコンテンツ作成やライバー育成に投資することができます。
さらに、MCN機構はライバーが販売する商品の品質管理なども行っているようです。
より、ユーザー数を増やすことで案件を増やすことができます。そして、ユーザー数を増やすためには、商品の品質が非常に重要になります。
商品を購入するユーザーの「信頼」を得るために、ライバーの育成だけでなく、ライブコマースの流通網全体を管理しています。
品質管理の専門チームを立ち上げる団体も
中国のある有名ライバー団体は、2019年から社内に商品選定や品質管理を行う専門チームを立ち上げるほどの徹底ぶりです
中でも専門チームの人数は従業員全体の3分の2を占め、公的な品質監督検査機関である上海市質量監督検験技術研究院や規格認証を行う企業などと協力して品質管理を行っています。
中国ではこのような、ライブコマースをしやすいような「環境」が自然に作られていることこそ、急速にライブコマースが発展した原因でしょう。また、ライブコマースが急成長した背景には、中国人の即決即断の行動力や、リアルタイムコミュニケーションを取りたがる国民性も根底にあるようです。
現在の様子
このようにして、発展してきた中国のライブコマース市場ですが、現在はどのような状況になっているのでしょうか。
中国のライブコマースプラットフォーム
ではそんなライブコマースですが、具体的にはどのような企業が業界を席巻しているのでしょうか。現在、中国国内で多く使われているプラットフォームは年齢や特色によってさまざまです。よく使われているプラットフォームは、
淘宝直播 Taobaoライブ
抖音直播 TikTok
快手直播 KuaiSho |快手 ライブコマース
小红书 REDライブ
斗鱼 DOUYU
bilibiliライブ
微信ライブ
の七つです。
それぞれにはそれぞれで活躍しているライバーがおり、それぞれが多くのリスナーを持っています。利用者数は1000万人〜10億人もいて、中国の人口の多さに付随して利用者も非常に多いことがわかります。ゲーム実況などを中心に扱っているサイトやファッションを中心に扱っているサイトなど、それぞれがそれぞれの特色を持っています。
KOL
中国では、KOL(キーオピニオンリーダー)と呼ばれる、より専門的な知識をもったインフルエンサーが登場しています。KOLは、元は医療業界で製薬企業の販売促進に貢献する医師などの専門家を指す言葉です。
中国のライブコマース市場でも、コスメや家電など商品の専門的な知識をもつ人が影響力を持ち始めています。
KOLは、専門的な知識をもったインフルエンサーです。広告・宣伝にKOLを起用することで
専門的な知見からの商品を紹介できる
ユーザーからの信頼が強まる
商品やサービスのブランディング
を実現することができます。
中国のライブコマースのトレンド
中国ではなぜ人々がライブコマースを使っているのでしょうか。中国のライブコマースには五つのポイントがあります。今回は五つのポイントを紹介します。ズバリ、中国のライブコマースのポイントとは
〇社内で専門チームを立ち上げ、継続的に取り組む。
中国市場のマーケティングにおいて、ライブコマースは重要な手段となっています。
そのため、企業側でもライブコマースによる販促活動に力を入れており、社内にライブコマースに特化したチームを立ち上げプロジェクトを行うケースも増えています。
ライブコマースは、単発のプロジェクトにとどまらない、長期的な施策として捉えられています。中国では、社内にライブコマースのノウハウを蓄積することで、継続的にライブコマースを自社で運用する力を付けている企業が増えています。
〇自社商品に詳しい経営層や販売員をライバーとして育成
さらに、自社商品に詳しい経営人材や販売員をライバーとして育成する企業もあります。外部のライバーを採用するより、自社の商品についてより詳しい人材をライバーとして育成することで、コストを削減しながら、より効果的なライブ配信ができます。
〇権益保護の問題が多発
一方で、権益保護の問題が多発していることも事実です。
ライブ配信が普及すると同時に、ライブ配信を通じて購入した商品に対するクレームが増えています。クーリングオフ期間にも関わらず、クリ―リングオフを拒否した事例も確認されています。
また、SNSから外部サイトに誘導し商品を販売しトラブルに発展する事例もあります。この場合、個人の取り引きとなり、責任の所在が不明確なため、消費者が損する場合があります。
そこで、中国政府はライブコマースに関する法整備を進めています。2021年5月には「インターネットライブコマース管理弁法」を施行しました。
プラットフォーム運営企業や出品企業だけでなく、ライバーやMCN機構に対しても法律が定められるなど、ライブコマースに関して、中国政府は健全な成長を促すために力を入れています。
〇売れれば売れるほど損をする企業も
ユーザーがイブコマースを利用する最も大きなインセンティブは、商品を安く購入できることです。特定の配信者から購入すると割引価格で購入できるなどの理由から、ライブコマースを通じてネットショッピングを利用します。
また、より有名なライバーを起用した方が、より強い影響力を期待できますが、その分人件費は大きくなります。
その結果、商品を割引価格で販売することに加え、大きな人件費も重なり、企業によっては商品が売れれば売れるほど損をする企業も現れています。
〇撤退する企業も相次ぐ
ライブコマース市場の急速な拡大によって、多くの企業が参入し競争が激化しています。その結果、人件費や運営費が値上がりし、対応できなくなった多くの企業がライブコマースから撤退しています。
また、撤退の背景には、競争の激化だけでなく、ゼロコロナ政策などの政府からの厳しい規制も影響しているようです。
現在の中国のライブコマース市場は、市場の拡大によって売り上げを伸ばす企業や、本格的にライブコマースに取り組む企業が現れた一方で、厳しい競争環境のために撤退する企業も現れ始めています。
今後の展望
中国のライブコマースからはどのようなことが学べるのでしょうか。中国のライブコマースからみるライブコマースのメリット、デメリットを見てみましょう。
メリット
商品の魅力を動画で伝えることができる
一度に多くのお客さんを相手にできる
場所を選ばない
その場で質問対応ができる
魅力の伝え方、一度に伝えることのできる量、利便性から見たとき、ライブコマースはメリットが大きいです。その場での質問対応ができるのも非常に大きな利点の一つでしょう。
デメリット
配信者の選定が必要
集客力が必要
ライブ配信のため、トラブルが発生する恐れがある
急成長してきたライブコマースではあるが、一方で問題も多いようです。
法整備はまだできておらず、責任の所在もあいまいなため、取引のトラブルが少なくないのも事実です。
また、企業にとって売れても利益が少ないといった問題もあります。
課題はあるものの、政府は積極的に支援
中国では政府をはじめ、ライブコマース市場の健全な成長に力を入れており、ライブコマース事業を支援する地方自治体もあります。
中国のライブコマース市場は今後も拡大していくことが予想されています。人口が増えていき、SNSの発展により誰でも簡単に情報にアクセスできるようになりました。そのおかげもあって将来的にも盛んになっていくことでしょう。
まとめ
いかがだったでしょうか。今回は「中国のライブコマース」について紹介してきました。今回見てきたように、ライブコマースは市場規模が大きく拡大している一方で、デメリットも多く見られています。日本は中国がライブコマース領域で感じているデメリットから、法整備の促進、責任の所在をはっきりさせる仕組みづくりなどに注力していく必要性があるでしょう。今後のライブコマースの展開にも期待です。
最後に。。。
弊社では、転職前にベンチャー適性がわかる診断サービス「PreVenture」も運営をしています。40問の質問に答えるだけでベンチャー企業への適性診断を無料で受けることができます。ベンチャー/スタートアップ企業で働くことに興味がありましたらぜひ参考にしてみてください!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?