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みんなの、別府の、発信基地① - PUNTO PRECOGとは?『HIBINO』&『BASARA HOUSE』

ある時はスープ屋さん、ある時はコーヒー屋さん、ある時は仕立て屋さん、姿を変え続けるお店、プント。開店から8年。
27の新たな店主が誕生し、プントは別府カルチャーの発信基地として、街に欠かせない存在となった。
プント発の店主たちに、お店をつくる成功の秘訣を教えてもらいました。
あなたもお店づくりに挑戦してみませんか?

※本記事にはプントの歩みをまとめた 8周年記念冊子「PUNTO PRECOG みんなの、別府の、発信基地」の内容を掲載しています。(全3回)

PUNTO PRECOG とは

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「今度はどんなお店?」

ある時はカレー屋さん、ある時はコーヒー屋さん、ある時は雑貨店、ギャラリー、イベントスペース。時期によってガラリと変貌するのがPUNTO PRECOG(以下、プント)の大きな特徴だ。

約10畳のワンルームの2階建てに、まだ見たことのない空間が出現しては消え、新しく塗り替えられる。それぞれの店主が思い思いの空間をつくり上げ、新しい文化を呼び込む。そこは、挑戦の場であり、出会いの場であり発信の場でもある。
2012年の創立以来、8年間で27組が店主となり、そのうち8組はプントを終え自らの店をオープンし、他の者もこの信頼を種に新しい人生のスタートを切った。

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創立前の2011年頃、別府駅周辺は空き店舗も多く人もまばらだった。
当時の別府市は中心市街地活性化事業を推進。その一環として団体BEPPU PROJECTがギャラリーやお土産屋をつくると同時に、混浴温泉世界という別府現代芸術フェスティバルも開催した。アートを醸成する機運が高まる中、プントはオープンした。

プントを運営する舞台制作会社、プリコグの課題のひとつは〝アートのニーズが簡単には生まれない地方都市とアートをどう結び付けるか〞だった。生活の中に表現は存在している。アートに通じるような、生活のこだわりを表現できるお店として創立したのがプントだ。

設立から8年、IターンやUターン、後に続く世代交代が生まれたり、新規事業体の開発に使われたり、新しいニーズが次々と生まれている。まずはプントで出店し、その後は別府に根差し自らのお店をオープンする。そんな流れも今では定番になった。別府の街に空き店舗がなくなるほど、新陳代謝を生み出すまでになったのだ。

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創立当初、別府の街になかったお店をキュレーションしていったプント。まだオーガニック食材が珍しかった時代、東京から野菜にこだわった料理家さんを呼びカフェを出店したり、ソフトなパンが主流の別府でハード系のパンを販売したり。コーヒーといえば老舗喫茶店だった頃、サードウェーブ系のコーヒーを提供したのもプントだ。別府カルチャーに流動性をもたらすことに成功した。

寂しかったプント近隣も若返り、街を歩いて行きかう人も増えてきた。
これからも別府が活気づく要因のひとつとして機能し、新たな発信する場所であり続けたい。

プントで初めて行列ができたお店|場所を変えても愛され続けるこだわりパン屋『HIBINO』

#店舗経営 の実験 ■ #地産地消  ■ #田舎暮らし  ■ #リノベーション

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WEB販売や週末のイベント出店などを行っていた『国産小麦と天然酵母のパン工房 HIBINO』。大分県産の小麦と天然酵母を使用して作られるパンは、最初から最後まで多くの手間暇がかけられている。時間をかけて発酵させており、噛むほどに旨さが膨らみ味わい深い。

店主の杉田久美子さんがプントに出店したのは、2013年2月3日〜3月31日の約2ヶ月間。「実店舗は欲しいけど、お店を持つまで踏み切れなくて悩んでいたんです。資金もないし、お店があると気軽に動けないし......。そんなときプントの代表の茜さんと知り合いました。話を聞いて試してみようと思ったんです」

実際のパン作りは別の場所で行い、できた商品をプントに持ち込み販売した。思い切って始めた〝週2回だけのこだわりパン屋さん〞は、たちまち大繁盛。イベントや通販でファンになった人たちもプントに訪れて、行列ができるほどの大盛況だった。
杉田さんは「当時、原材料や手作りにこだわったパン屋があまりなかったんですよ。それもお客さんが来てくれた理由かも」と振り返る。

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実力とお金の流れを把握し得られたお店を持つための「自信」と「見通し」

イベントに行ったり、竹細工をしたり、やりたいことがたくさんあるという杉田さん。そんな彼女は、週2〜3回のペースでパンを焼くのがしっくりくるのだという。
「プントで出店してみて、自分の生産力を知れたのは大きな収穫でした。どのくらいのペースでどれだけ作れるか。あと収入と支出が具体的に数字でわかり、実際にお店を出したときの見通しが付くようになったんです」

店舗運営を経験し、これまで不安に思っていた点をひとつひとつクリアできたそうだ。実際のお金の流れを体感できたのも大きかったという。十人十色、お店の数だけ存在するそれぞれの営業スタイル。自分なりに納得できるリズムが見つかり、実店舗出店への大きな自信となったそうだ。

アウトドアとパン作りを両立させた廃幼稚園で県内外のファンが〝わざわざ買いに行く店〞を営業中

現在は豊後高田市の廃幼稚園で営業している『国産小麦と天然酵母のパン工房 HIBINO』、どのような経緯で現在に至ったのだろうか。
「プント出店は別府に戻って1年くらいしてからのことでした。その前は北海道で、野外料理などアウトドアにかかわる仕事をしていたんです。別府は街なので、アウトドアをするのが難しかったんですが、今は豊後高田市で思う存分アウトドアしています」

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田舎暮らしを実現しながらパンを作る道を模索していた当時の杉田さん。廃校などの情報を探していたところ、現在の店舗である廃幼稚園とつなげてくれる人と出会ったという。資金確保は市からの援助が大きかったそうだ。

「市役所の地域推進課の方にもお世話になりました。銀行から個人でお金を借りるのはかなり難しいですが、市からの働き掛けもあって借りられたんです。市長さんも協力的で、大分県の補助金をいただけたのも大きかったですね」
「豊後高田に来て3年、お店のスタッフもいますが、パンを焼くのは私ひとり。廃幼稚園はちょうどいいサイズ感なんです。お店の隣の部屋が自宅なんですが、パンの面倒をみながらいろいろできるのも重宝しています」と、現在の地の利を生かして生活を送っている。

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最後に、将来お店を持ちたい人へのアドバイスをいただいた。
「お店を営業するなら、環境をみながら計画をたてるのが大切です。街の中か、田舎で営業するのかでオペレーションの仕方が変わってきますね。まずはプントで自分の営業スタイルやペースを掴んだり収支の流れを把握したりするのは、今後の自信にもつながるしおすすめです」

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国産小麦と天然酵母のパン工房
HIBINO
大分県豊後高田市新城68-1
0978-25-6638
営業日=金・土・日
パン=11:00-17:00
カフェ=11:30-17:00(O.S. 16:00)
ランチは11:30ごろ-14:00

試すお店としてのプントから羽ばたいた別府のキーパーソン|様々な店舗を立ち上げ地域に根付かせる『BASARA HOUSE』

#店舗経営 の実験 ■ #移住  ■ #リノベーション  ■ #試住

「たべもの建築家」の宮川園さんといえば、常に動向が注目される別府の有名人だ。いつも周囲を驚かせるようなイベントや試みを続けている。そんな彼女のルーツをより明確にしたのがプントだった。

2013年12月13日〜2014年4月7日、プントに『スープャ ノクード』を出店した宮川さん。コンセプトは〝女性が楽しめる町〞だった。当時、別府のランチといえばラーメンやかつ丼、定食のようなガッツリ系のお店が多かった。そこで女性が気軽に入って一息つけるお店を目指したという。

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お店で提供したのは、宮川さん自家製のスープとパン。パンは国産小麦と天然酵母で丁寧に作られた『パン工房 HIBINO』さんのものを採用した。

当時について宮川さんは、「基本的にはパンとスープだったけど、月曜日だけ『ソノ日のカレー』っていうのをやったんだよね。思えばこれが私が作ってお客さんに出した最初のカレーかな。「たべもの建築家」と名乗り出したのもこの時期で、プントでの出店当時に今のスタイルの基ができたのかもしれない」と語る。

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夢を応援してくれる人からの募金で次なるお店を共同オープン

プント出店後、当時APU(立命館アジア太平洋大学)の学生だったフックさんと出会った宮川さん。タイミングと意見が合い、お互いの実験のために共同でお店を開く流れになった。それが、現在はフックさんが店長を務めるベトナム料理店「スパイス食堂 クーポノス」だ。資金はクラウドファウンディングではなく、ふたりで支援者を探しコツコツ集めたという。

「別府には、夢を持って頑張っている若者たちを応援してくれる人が意外と多いんです。知り合いになればいろんな人を紹介してくれるので、まずはコミュニティを作るのが大切。着飾らなくていい、必要以上に欲しないでいい、頑張りすぎないでいいのが別府かな」

プント出店前も後も、別府で活動を続けた宮川さん。人が周りに集まり、その人たちからまた人や場所につながった結果、応援してくれる人や情報をくれる人たちが増えていったのだろう。

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今度は応援する・教える立場で 別府の魅力的なプレーヤーを育てる

現在宮川さんが経営しているのは『BASARA HOUSE』。『cafe BASARA』では独特のスパイス調合で県内外にファンを持つカレーを提供している。さまざまな年代を感じる剥げかけた壁と、別府の看板絵師・松尾常巳さん作のロゴや手書き文字も加わり、唯一無二の空間だ。宮川さんがお店を休む日には、ハンバーガー屋『R&B』が店を開く。

〝試住〞というのもテーマのひとつ。アーティストやお店を持ちたい人が試しに別府に住み、気軽にいろいろやる拠点になればと考えたそうだ。これもプントでの経験があるからこその考えかもしれないと、宮川さんは語る。

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プント出店を決めた当時、狭い店内でもすぐに提供できるスープ、大量に仕込んでおけるカレーなど、限られたスペースを使っていかに良質なサービスをできるか試行錯誤したという。店の立地や広さとサービス内容、そして利益について最初に考えるのが重要なポイントだそう。

「どうにかなるのが別府。別府に来て10年経って、今やっと落ち着いた状況かな。私自身の希少な部分とか売りとかがはっきりしてきたので、今は教えることに興味があって。おもしろい、魅力的な別府のプレーヤーを育てたいな。表面的でないコンセプトの作り方などをレクチャーして、ファンを増やしていく様子をみたいですね」

現在もプレーヤーとして活躍しながら、今後は若手の育成を目指す宮川さん。〝まずはやってみる〞を体現してきた彼女だからこそ、リアルで実践的な方法を生徒たちに教えられそうだ。宮川さんの教えを受けた新プレーヤーたちが羽ばたき、別府で活躍するのが待ち遠しい。

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スパイスカレー
BASARA HOUSE(出店当時:女性が楽しめる定食屋 スープャ ノクード)
大分県別府市北浜3丁目2-2
070-2304-5195
※BASARA HOUSEは、曜日や時間によってメニューやお店が変わります。

Cafe BASARA
営業日=木・金・土・日
11:00-15:00 ランチのみ
※ラストオーダーは終了30分前まで
月・水・金はハンバーガー屋さん


次回は、「PUNTO PRECOG を彩ったお店たち・前編」としてプント出店後、別府で営業を続けるお店や活動を続ける人たち4店舗をご紹介します。お楽しみに!

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冊子クレジット
執筆・編集:泥ぬマコ
編集:鈴木真子、佐藤瞳(precog)
デザイン:岡本健+ (岡本健、仙次織絵)
イラスト:カツどん子
企画・ディレクション:中村茜(precog)
制作・発行:株式会社 precog
2020年3月5日発行
(冊子PDFはこちら

PUNTO PRECOG
〒874-0944大分県別府市元町3-5
http://puntoprecog.jp/

株式会社precog
https://precog-jp.net/
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