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超密着!世界ランタンロイヤル

 我が魂は年一度ハロウィーンの夜に甦る その時地上で最も強大なジャック・オ・ランタンを産み出した者の願いを叶えて進ぜよう

 ジョン・バンボギンが死んだ、その暴力と異能を以って世界を牛耳る鬼子は腫瘍で呆気なく逝った。均衡は崩れ、世のアウトロー共は彼の遺言に野心を駆られるのだった。

 それから始まった世界ランタンロイヤルも今年で52回目、今回も我々取材班は独自に注目した選手達に密着取材を試みた。


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 SPLASH!SPLASH!一面の南瓜畑の只中で作物盗難を試みた賊共は高圧水銃で撃たれたのち、体が溶解し死んだ。百人はいた筈の賊は今や二桁数もいない。

 「要はソウルの在り方よジャコランタンの定義はね、顔の形かどうかなんて関係ないの」

 農園主にして郷土料理『ぼうぶらぞうせ』の最後の伝承者、斎藤カロテノイダー麗子(78)はノールック狙撃の傍ら答える。

 ぼうぶらぞうせは南瓜や豆に団子を煮込んだ雑炊で、彼女はサラマンダーの膵臓、死後千年の妖骨等を加えアレンジしている。今は資料も燃え詳細なレシピを知る者は彼女の他にいない。彼女は今大会をこのぼうぶらぞうせで挑む。

 過去に数多の挑戦者が伝説の亡霊にジャコランタンを捧げた。近年では西海岸に氷河期をもたらした『冬の貌』、内部の時空ゲートから歴代ファラオが出現した『愛しのヘレンよ、再び』が印象的だったが、かの男の御眼鏡にかなう作品は未だ出ない。しかし今回初参戦となる麗子は自信を露わにする。

 「ジョンの早死に坊主にコイツをブチ込んでやるさ」賊の最後の一人が叫び散らしながら麗子に襲い掛るも、麗子の肘打ちで仰け反り重い後ろ回し蹴りで土に伏せられ、額を水銃で貫かれた。水銃で撃ち込む内容物は無論、ぼうぶらぞうせ。

 賊の死体は南瓜の黄色を呈していた、肉体がぼうぶらぞうせと変じたのだろうか。「こうやって魂も雑炊にしちまえるかね」老女の寂しげな呟きが、我々の脳裏にこびり付くのだった。

 【続く】

 

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