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原則3:「時間を買う」の落とし穴は、効率化💦

原則3:時間を買う Buy Time

 ビジネスの世界では「効率化」は重要課題であり、時間管理はその要として位置づけられる。そのせいだろう。「時間を買う」というと、効率化のためにお金を使うこと…と理解されやすい。もっとも分かりやすいのは、お掃除ロボットである。その購入によって、お掃除は効率化され、生まれた時間で別の何かをこなせるようになる。時短のため効率化のために「時間を買う」を理解するのに、最適な事例といえるだろう。

 Zoom「幸せなお金の使い方」講座のMC あっきーこと和田氏は「原則1も原則2もピンとこない」と浮かない顔をしていたが、「これはすんなりと理解できた」と明るい表情。「例えば、分からないことや難しい仕事を専門家に外注して時間を買えば、効率があがりますよね!」と意気込んだ。ところがドッコイ(笑)、「幸せになるお金の使い方」とはひと筋縄ではいかない、もっと哲学的な技術といえる。

 あっきーはじめバリバリのビジネスパーソンに訊ねてみよう。専門家を外注して生まれた時間をいかに使うのか? 多くは、別の業務に使うだろう。そして、その業務は本当に打ち込みたい仕事、心から楽しいと思える仕事だろうか? そうであれば、効率化に加え、自分の喜びと組織の生産性アップも実現できる。けれども、別の業務とはたいてい担当業務として配分された義務的な仕事、場合によっては煩わしい仕事ではないだろうか。

 かくして、せっかく外注によって生まれた時間は、別の業務に振り替えられ、次から次へと降ってくるシジフォスの岩のような仕事を「あれも片づけなきゃ、これも片づけなきゃ」と、かぎりなく片づけ続けるビジネスパーソンのいかに多いことか!   せっかく生まれた時間をそんな風に使っているとしたら、あなたは幸せといえるだろうか?

 幸せなお金の使い方としての「時間を買う」とは、効率化や時短だけではなく、むしろ効率的でなくても幸せになる「時間を買う」ことを意味する、と筆者は思う。

 お掃除ロボットでお掃除を時短しても、生まれた時間を義務的な仕事に振り替えるだけなら、シジフォスの岩の苦を背負うだけだ。むしろ、多忙感が増してしまう。一方、お掃除を時短してもっと好きなことや大切なことに使うなら、どうだろう。例えば、同じ家事でもお料理のほうが好きな人がお料理に時間をかけられるようになったら? 子どもと遊ぶゆとりのなかった人が遊べるようになったら? 

 そもそも、お掃除が大好きな人にとって、お掃除ロボットは喜びを奪うとんでもない脅威である。「幸せをお金で買う 5原則」を提案するリズさんとマイクさんの調査によれば、シングルファザーのダンさんは4人の息子を抱え「しちゃかめっちゃか」だったが、「がんがん掃除機をがんがんかけることで、ある種のコントロールを取り戻すことができた」という。

 リズさんとマイクさんは「時短は、敵!?」と問題提起する。ファストフードのような商品は日常を効率的にするが、カナダ大学のチェン・ポ・ウォンさんらの研究では、こうした商品のロゴを見ただけで、人は急かされた気分になるそうだ。効率化を主な目的とした商品は、いらだたしさを増幅して、時短商品がさらに欲しくなるよう、人を仕向けるのだという。

 時間に価値があると思えば思うほど、多忙感が増すことも明らかにされている。彼らは、裕福な人はより時間に追われていると答えがちだが、それは時間が貴重と感じているからだと考える。ふたりは米国の発明家ベンジャミン・フランクリンの格言「時は金なり」は罠だ、との警鐘も鳴らす。米国人のみならず日本のビジネスパーソンの多くは、「時は金なり」という言葉どおり、時間をお金に換算する習慣がしみついている。その結果、経済換算できない活動をおろそかにしてしまうというのだ。

 確かに、私たちを幸せにしてくれるのは、経済換算ではムダとされる時間ではないだろうか。家族と一緒におしゃべりをしたり、ペットを抱きしめて昼寝をしたり…。つまり、経済換算より感情換算! パンデミックで経済活動が停滞している今こそ、経済換算で価値が高いと思われる活動よりも感情換算して豊かな気持ち、幸せな気分になれる活動に時間を使いたい。

 リズさんとマイクさんによれば、時短すれば幸せアップ効果があがるのは通勤時間やTVを視る時間。そして、時短で生まれた時間はボランティア活動や交流に使えば、幸せが増すという。緊急事態宣言でステイホームに倦んだら、テイクアウトで家事を時短し、家族と対話しつつ料理を味わえば、幸せになるお金の使い方であり、幸せな「時間を買う」ことになる。

引用:「幸せをお金で買う」5つの授業
    エリザベス・ダン マイケル・ノートン(2014 中経出版)

    「ハーバード流 幸せになる技術」
     悠木そのま (PHPビジネス新書)

 

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