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富は他人を遠ざけ、幸せを遠ざける💦

 「お金では買えない幸せがある」と分かっていても、私たちはついつい、「お金があれば幸せになれる」と思ってしまう。あれも買えるのに、これもできるのに、でも、お金がないから買えないしできないし、だから幸せがちょっと足らない、と思ったりする。

 「富を増やしても、より幸せになれるわけではない」ことは、様々な研究が証明している。ノーベル経済学賞のダニエル・カーネマン先生の知見は、前の記事「幸せは、お金の殖やし方より使い方」で紹介したとおりだ。でも、カーネマン先生の調査は年収500万ドルとか750万ドルというレベルの結果だから、いささか説得力が足らない気がする。

 一方で、「幸せなお金の使い方 5法則」を使いこなすには「お金があれば幸せになれる」という考え方を改める必要がある。そこで、もう少し「お金と幸せについての基礎知識」をながめてみよう。

 TEDで知られるマイケル・ノートンさん(ハーバード・ビジネス・スクール教授)と、白熱教室で知られるエリザベス・ダンさん(ブリティッシュ・コロンビア大学教授)は「幸せなお金の使い方 5法則」の提唱者で、『「幸せをお金で買う」5つの授業』の著者である。

 同著において、ふたりは米国人を対象に行った調査が紹介している。その調査によると「年収が25千ドルから55千ドルの2倍強に増えても、幸福度は9%しかあがらない」というのだ。

 マイクさんとリズさんはさらに、富は「犠牲が伴う」と述べている。「人と一緒に過ごす幸せ」を遠ざけ「幸せを台無しにしてしまう」からと言うのだ。彼らは、モノポリーのお金の束を手にした学生は手助けの意欲が低くなるという、キャスリーン・ヴォ―スさん(ミネソタ大学教授)の実験や、お金の写真を見せられたりするだけで孤独な活動を好むようになる実験結果を示し、「富を得ることを考えただけで、私たちは他人を遠ざける」ようになると説いている。

 サイエンス・オブ・ハピネスの多くの研究が、幸せには温かい交流が不可欠だと証明している。たくさんのお金を得ることで、交流による「幸せ」が遠ざけられるというのだから切ない。

 さらに、マイクさんとリズさんは、お金持ちになると、幸せを感じ難くくなるとも指摘している。ふたりはベルギーで働く成人を対象に調査を行い、「裕福な人ほど、人生の小さな喜びを味わえなくなる傾向がある」ことを証明した。お金持ちになって、あれこれ買えるようになり、なんでも手に入るのが当たりまえになったら、「ささやかな喜びに感謝する気持ち」が薄れてしまうのは、コロナでプチ失業中の筆者にも分かる。

 お金は確かに、おいしい食事やステキなドレスや快適な住まいなど、「あらゆる素晴らしいものを提供してくれる」こともあるけれど、「お金があるから幸せになれない」「お金がありすぎると幸せになれない」のも真実である。まして、お金をたくさん得るためにあくせくして、人を遠ざけたり、大切な人と過ごす時間を持てなかったりしたら、本末転倒だ。

 金は天下の回りもの。回って来たら、嬉しいけれど、回って来なくても、いまあるお金を大切に賢く使って、いまあるお金から最大限の幸せを創れたら、それもいい。さぁ、そろそろ「幸せになるお金の使い方 5法則」を使いこなせそうな気分になってきた。

 いよいよ、5つの法則を書いていこうと思う。まずは、法則1「経験を買う」である。

引用:「幸せをお金で買う」5つの授業
    エリザベス・ダン マイケル・ノートン(2014 中経出版)

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