見出し画像

原則1:幸せは、モノより経験を買うことで✨

 法則1:経験を買う Buy Experiences 

 今より羽振りのよい時期があって、ついつい買い物をしていた。大型液晶TVもまだ高額だったが、買った。大きな画面に感動したが、そのうち馴れた。世界最小と話題になったビデオカメラも買った。片手で映せる軽さは嬉しかったけど使いこなせず、半年くらいで使わなくなった。仕事がらワードローブもそれなりに買いこんだけれど、これらのほとんどが、数回手をとおしただけでクローゼットで在庫化。サイズもたぶん変わったのに支払い金額を思い出して処分する勇気もわかず、断捨離の崖っぷちに立っている。

 どんなに欲しかったモノを手に入れても、幸せを感じるのは一刻。「幸せをお金で買う 5つの授業」の著者マイクさんとリズさんは、子どもたちがスロットマシンのチケットで手に入れたゴムのカエルは、車の床で犬の毛とパンくずにまみれ、消しゴムはデイパックの底で忘れ去られてしまう、と表現している。モノを買うことでもたらされる幸せの賞味期限の短さは、私には大いに心当たりがある。

 一方、経験を買うことでもたらされる幸せは長続きすると、サイエンス・オブ・ハピネス(幸せについての科学)が明らかにしている。コロラド大学のリーブ・ヴァン・ボーベンさんらの調査では、モノは「だんだんと背景の一部に化していく」の対し、経験は「時間が経つにつれますますよいものに感じられるようになる」という回答を得た。ウィスコンシン大学のトーマス・デレイアさんの研究によると、支出のうちで幸福度に影響するのは、彼らが「レジャー」と名づけた支出だけだった。「レジャー」に分類されたのは、旅行、映画、スポーツ観戦、ジムの会費である。

 筆者が開催したZoom「幸せなお金 使い方」講座の参加者たちは「レジャー」の他にも、資格取得のためのセミナー受講や東北被災地に暮らす友人に会いにいく…などを幸せな経験として、リストアップした。

 一方で、モノを買った場合でも、そのモノは大切な経験とセットだから幸せ、という声もあがった。マユミさんは、イチゴを食べると幸せを感じるが、それは幼い頃、おばあさまの家で食べたイチゴが美味しかったから、と語った。彼女にとってのイチゴは、おばあさまの想い出とセットであり、だから、イチゴを食べると幸せになれる。誰にでもそんなモノはあるかもしれない。Zoomの画面の中でも、多くのメンバーがうなづいていた。

 マイクさんとリズさんも、モノの買い物か経験の買い物かを区別するのは難しいと述べている。そして、経験は、その人の本質を表わす。だから、自分の本当の姿を明らかにする経験を買うことは高級品を買うよりも、多くの幸せをもたらしてくれる、と結論づけている。ふたりは、体験から幸せを感じるのは、次の4つの基準を満たす場合と述べている。 

・他の人々と交わることにより、社会的なつながりが生まれる経験
・この先何年も、楽しい気持ちで繰返し語れるような想い出につながる経験
・自分らしいと感じる自分、なりたいと思う自分に密接に結びつく経験
・他の選択肢と比べようがない、めったにないチャンスを与えてくれる経験

 著者の母は高齢で、軽い認知症だ。先ほどのことも昨日のことも、おおよそ忘れてしまう。その母がある朝、京都の大原で道に迷った夢を見て、すごく幸せに感じたと言う。確かに、その数ヶ月前、私たちは京都へドライブし、大原の狭い道で迷ったことがある。仕事のついでのドライブで、多少のやましさを感じていたのに、母は夢を見るほど幸せだと言う。思わず、涙がこぼれた。あの大原の道を思い出す度に、私たちは幸せになるだろう。

 法則1の原稿を〆るにあたって、マイクさんとリズさんはモノが「即座に喜びを与えてくれることを否定しない」と述べたうえで、「モノを買うために財布に手を伸ばしたときに、モノへの誘惑のせいで経験がもたらしてくれる幸せを逃してしまわないように気をつけてください」と釘をさしている。

引用:「幸せをお金で買う」5つの授業
    エリザベス・ダン マイケル・ノートン(2014 中経出版)

   「ハーバード流 幸せになる技術」
     悠木そのま (PHPビジネス新書)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?