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ショートショート「ヤクザとメリーさん」

ある日の昼下がり、1本の電話があった。 「はい、こちら〇〇組事務所」 「私メリーさん、今、ゴミ捨て場にいるの」 「…あ?」 プー。プー。プー。 電話が切れた。 暴力団らしからぬ事だが、俺は突然の電話に怯んだ。 メリーさんの物語は知っている。 捨てた人形から電話が掛かってきて、場所を言って、最終的に後ろにいるってやつだったような。 ただ、その物語が実際に自分に降り掛かるとは思わなかった。 不思議に思っていると、また電話がかかってきた。 「はい、こちら〇〇組

    • ショートショート「桃の川」

      昔々、人里離れた場所に1人のお爺さんが住んでいました。 そのお爺さんには配偶者がいません。 いた事はあったのですが、その人はもう他界してしまいました。 そんなお爺さんが川で洗濯をしていると、大きな桃が、どんぶらこ、どんぶらこと流れてきました。 そんな大きな桃を見たことがなかったお爺さんは、珍しく思い、持ち帰ろうと思いました。 持ってみると見た目よりは重たくはなく、お爺さんでも簡単に運ぶことができました。 それを家まで持ち帰ると、お爺さんは早速、桃を切りました。

      • ショートショート「罪人」

        愛していた女を殺した後、死体を埋めた。 愛していたからこその決断だった。 決断を下した後、僕は怖くなって山から逃げようと思った。 山の中を走り抜けていると、足元には1匹の蜘蛛がいた。 人間を殺したのに、僕は何故かその蜘蛛を踏んでは行けないような気がした。 微塵の道徳心なら僕にも備わっているみたいだ。 山の中を走る。 不思議なもので、完璧な殺人事件だと確信していたのにも関わらず、常に誰かに見られている感覚になる。 木々が過ぎていく。 目の前の情景に必死になる。

        • ショートショート「睡眠妨害」

          まただ。 また、そこにいる。 俺の仕事帰り 毎回、家に帰るとそこにいる。 ベッドにいる。 仕事帰りで疲れている日も、 飲み会で神経を使った日も、 休日、家で何もしていない日も、 ベッドにいる。 仕事帰りは特に早く寝たい。 でも、邪魔で寝られない。 普通に起こそうとしても起きない。 俺はソイツの事を 「眠れる森の美女」 ならぬ、 「眠れるベッドのブス」 と呼んでいる。 ずっと寝ている。 しかも、このブスは俺が知っている人物ではない。 つまり

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