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【ミスドの思いド】OL時代の上司とケンカと笑顔。

今日は私のミスタードーナツとの思い出を話したい。

去年のOL時代のこと。

ちょうど今頃のような秋の日だった。

お昼休みを終えて、わたしは自分のデスクに座り仕事をしていた。

今日は朝からお客さんが来てバタバタしていたので、やっと波が落ち着いて一安心。お昼に食べた最近出来たカツ丼屋さんの美味しさは噂どおり。この美味しさのために生きていると大きなことを言ってみたくもなる。

ガタガタガタガタ、ターン!

前に座っている女の先輩のキーボードを叩く音が大きい。なにかあったんだろうということはすぐに分かった。

機嫌がわるくなったときに、直接相手に色々伝えることができる人とできない人がいるけれど、先輩はいつも後者だった。

強く打ちすぎて、エンターキーの文字が消えかかっていることは朝の掃除のときに横目でチェック済。

私の横にいる上司がポツリ。

「あの子、今日は特別荒れてるよね。実は朝のミーティングのときにさ、意見の食い違いでケンカをしちゃったんだ。」

私は朝のミーティングには参加してないし、なんなら優雅にコンビニでコーヒーを飲んでいたので知らなかった。

「なるほど、どうするんですか?」

私は契約書をトントンとしながら、上司に聞いてみた。彼は自分の言い方が強すぎたと反省しているようだ。

怒っている部下の先輩も、どう気持ちを整理していいか分からず、上司と仲直りするにもうまくコミュニケーションが取れない状況だった。

怒られたり、ケンカをしたあとに露骨に態度に出てしまうのは人間だから仕方ない。社会人としてそれはどうなの?と言われるかもしれないけれど、消えゆくエンターキーの文字の気持ちを無視したくなるほどに感情は言うことを聞かないのも分かる。


上司が立ち上がった。

「ちょっと、ついてきて」

「外出用のホワイトボードにはなんと書けばいいですか?」

「Mで。」
「M?」
「ミスタードーナツのMだ。」
「え?分かりました。」

いや、分からないけれど1番近くにあるミスタードーナツに我々は向かった。
彼は財布を胸の近くで握りしめていた。

これから何かが始まる、そう感じた。

「給料日前だけどね、ありったけ買おうと思う。もうね、ありったけのドーナツを。」

そう、彼はお小遣い制の身。奥さまの顔もチラつきながらも、決心をしたように私にそう告げた。

私はトレイを抱え、彼が横につき真剣にどれを選ぶかを考えた。

「ポンデリング多めね、多めね!!」
どんどん置かれてゆくポンデリング達。

トングで潰さないように正確に運ぶ。
課長ってポンデリングファンだったんだ、知らなかった。

「課長、こんなに買ってどうするですか?」
「いや、あの怒ってる子の機嫌とるんだよ!」
「それなら、もっと他の種類も買いましょうよ!」
「お、おう!分かった。任せるわ」

そこからは、私の好きなエンゼルクリームなど独占状態。

「お会計おねがいします。」

20個以上は買った。

上司の経済力はすごい。
給料日前の男気も感じた。

いつも1人で買うと数個なので、大量のドーナツがミスドの箱に詰められてゆく様はとても贅沢な気がした。キュッときっちり収まっているのは素敵だね。

ポンデリングを数えてくれる店員さんのお目目がやさしい。

「そう、私たちはケンカの仲直りのためにドーナツを、仕事中なのに抜け出して買いに来ているのです」と、店員さんに教えたかった。

ホワイトボードに書かれたMの字。

他の社員の人から、これなに?と帰ってきたときにやっぱり言われた。

「これですよぉ〜!」

課長がお買い上げしてくれたミスドの箱を高らかに掲げて私は元気な声で叫んだ。

私と課長の周りにはワラワラと人が集まる。賑やかな声。人々の笑顔。ドーナツが人を呼ぶ伝説が始まった。

不機嫌な先輩が、キーボードを打つ手を止めた。

こちらをチラリ。

「せんぱーい!!!!ドーナツですよ!」

私はポンデリングを紙に包んで、フリフリしてみた。

少し恥ずかしそうにこちらに歩いてきた彼女。

太陽神である天照大御神が昔、岩戸に隠れていたけど、他の神様達が外でドンチャン騒ぎをして、その楽しそうな様子につられて出てきてしまった昔話を思い出した。

ドーナツと、楽しそうな私たちにつられたな。よしよし。

ここ最近、気を張っていたのか先輩が泣きそうな顔をしながらポンデリングを受け取ってくれた。

「なんかごめんね。話し合うよ。」

ポンデリングの一粒一粒を丁寧に食べる様子を見て、私も真似をした。

そのあと、彼女は数個食べて、バックヤードで課長と話し合っていた。

私は良かったなぁと思いながら、誰よりもドーナツを食べた。この話の主人公にするべきくらいの摂取量で、こころがうれしい。

課長が大人な顔をしてデスクに戻ってきた。

先輩のキーボード音も正常値を保ち出した。

すべてが元通り、いや、それ以上の仕事場の雰囲気になった。この会社、最高だな。

口の中があまい。全社員あまい。

大人のケンカの仲直りの仕方で、ミスドが登場してくるのは初めてだった。

課長の男気とミスタードーナツに感謝だ。

もうこの職場を離れてしまったけれど、この体験は私の心に残っている。

これからも、私の人生の大変なときにミスタードーナツを何度も登場させてみたい。もちろん、すこやかなるときも。

では、これからもよろしくお願い致します!


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トマトハイ飲ませてください。

どう考えてもキミが好きだ。キミからスキって先に言ってくるのずるい。
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こんばんは。私もあなたも宇宙人。私の身に降りかかった事件をちょこちょこ書いていきます。

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コメント (3)
仕事終わりに読んで良い気分になりました。ありがとうございます!
とても心温まるエピソードですね♪私は今は育休業中ですが、復帰したいなぁという気持ちが持てました、ありがとうございます!人との関わり合いってやっぱりいいですよね、そしてドーナツさらに好きになりますね◎
めっちゃくちゃにほっこりしました。ミスド行きたくなってきますね🍩。
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