化工屋さんのお仕事 ー お役に立ちたい

はい、タイトルを見て内容の予想が付いた方もいると思います。

用役、つまり「ユーティリティ」です。UTTと書かれることも多いです。

「ユーティリティ」って名前、最近では普通でもよく目にすることが多いですね、「ユーティリティソフト」とか。「便利ソフト」みたいな感じの意味合いですね。

プラントにおける「ユーティリティ」とは、メインの部分の流体を「プロセス(流体)」と言うのに対して、プロセスの部分を支えるもの、冷却水とかスチームとか、を、「ユーティリティ」と呼びます。普通の家で言えば、上下水道みたいなものです。

では、蒸留塔周りを考えてみましょう。

メインのプロセス流体は、蒸留塔のフィードから入って、アウトレットから出て行きます。

蒸留塔の運転では、メインの蒸留塔はただの細長い容器の形をしているだけですが、上にはプロセス流体の蒸気(ベーパー)を凝縮させて液にするコンデンサー(凝縮器)があり、下には、プロセス液を蒸発させるためのリボイラーが設置されています。

コンデンサーはベーパーを冷やすので、それには冷却水などが使われます。

コンデンサーは、熱を加えてプロセス液を沸騰させるので、蒸気が使われます。

その、冷却水とかスチームのことを「ユーティリティ」と呼びます。

だいたい、冷やすものと温めるものくらい、かな・・・

使う量をどうやって計算するのかと言うと、メインのプロセス部分は、プロセスシミュレーターで熱収支(ヒートバラ)を計算しているので、その値から計算します。

熱収支をとっていないものは、例えば、メカニカルシールとかで通水が必要なものなんかは、カタログに記載があるので、その値を使います。センサーとかで、特に除熱・加熱が必要な箇所は、その時々で化工屋さんが手計算したります。ちりも積もれば山となる、で、ちまちました箇所が多いと、メインプロセスよりもちまちま使いが多くなったりしますが、使うことにはかわりがありません。

冷たい関係

冷却水には何種類かあります。使用温度によってプロセス機器への使用箇所が決められたりします。

・工水 ・・・工業用水。使用温度は25度くらい。基本、使い捨て。
・再冷水・・・再冷塔で冷やされて繰り返し使われる。35度くらい。
・ブライン(冷媒)・・・水じゃないんですが、0度以下で使われる。成分はほぼ車の不凍液と同じ。繰り返し使う。

熱い関係

スチームは、プラントによって条件がいろいろですが、すごくざっくりと

・低圧スチーム・・・だいたい0.2MPaG だいたい130度くらい。普通の沸点よりちょっと上って感じ。
・中圧スチーム・・・だいたい1.0MPaG だいたい200度くらい。これだけあれば、普通の蒸留なら大丈夫だろって感じ。
・高圧スチーム・・・プラントによりすごくいろいろ。手強い物質対応。

・熱媒・・・高温まで加熱できる、液体状のもの。レンジでチンするカイロの中身とだいたい同じ。

・上水・・・水道水のようなものですね。プロセスに使う場合とか、目の洗浄用の水道とかに使われます。

ガス関係

・窒素・・・プロセス機器の中身を空気にさらしたくない場合、窒素を封入します。反応しないので希ガスじゃないのに「イナート」と呼ばれます。真面目にアルゴンとか使うと値段が高いです。
・エア・・・エアブローとか必要な場合に使いますが、計装エアで代替することもあります。
・計装エア・・・エア駆動の計装品のために使われます。フィルターに通してあって、湿度0(ドライエア)にしてあるのでとってもきれい。ただ、引き回しとか管理を配管屋ではなくて計装屋がやるので、配管図にラインが出てこないことが多い。現場で「こんなのあったっけ」となるが、基本、見て分かる。

こんな感じで、ユーティリティって結構種類が多いんです。

で、PFDでプロセスを記述するんですが、ユーティリティも、きちんと記述するドキュメントがあるんですよ。「UFD」、Utility Flow Diagramです。これをPFDレベルで作るプロジェクトはあんまりないかもしれませんが・・・

UFDはなくても、とっても重要なのがユーティリティの使用状態を積算した「Utility Consumption」。日本語でなんて言うんだろうな・・・だいたい、「ユーティリティ・コンサンプション」って言ってますから・・・

これを作る作業を「ユーティリティの積み上げ」って言います。こつこつ作業するのが好きな人には、とっても楽しく作業してもらえると思います(作者は結構好き)。

どうして積算するのかというと、これを元に機器の設計をしたりするからなんですね。

再冷水なんかは、この積み上げの値を元に再冷塔の設備の設計をしますし、スチームは、基本、お客さんのプラントにすでにあるスチームを引いてくるので、使用上限が決まってたりします。それをオーバーしないように、機器の設計や運転条件を決めていきます。あと、当然ですが配管のサイズやポンプの容量を決めるのに必要です。

バッチ運転の場合は、使用量のピークをならすために、時間軸での使用量を計算する必要があります。ピークが突出していると、そのピークにあわせた設備が必要になってしまいますから・・・

なんだか、イベントの裏方さんみたいですね。

こんな感じで、裏方さんは陰ながら忙しく活躍してるんです。

では。


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学部は工業化学系、研究室は化工研。医薬・化学プラントのプロセス/ケミカルエンジニア、流体解析、プログラミング。現在はCAEソフトのセールスエンジニア。 読み物こちらにも。 https://www.pixiv.net/member.php?id=35355899

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