化工屋さんのお仕事 ー 丸投げ疑惑?

データシート、スケルトンができあがったら、見積もり用にメーカーさんに渡すわけなんですけど、そこで化工屋の手から離れる訳ではないんですね。

「さて、わからないところはどんどん質問してちょうだい!」

あれ?データシートとスケルトンって、仕様を決めてるわけだから、それに従ってメーカーさんが見積もりしたり作成するんじゃないの?

と思ったあなた。

確かに、データシートとスケルトンは仕様なんですが、それはあくまで基本設計の範囲内。基本設計というのは、そのプロセスを現実にするための、まず「はじめの要求」なわけです。

「はじめの要求」というのは、最低限、こういう機器でないと運転できませんよ、というものです。

実際にできあがる機器というのは、「はじめの要求」が示す「最低限こういう仕様にしてください」というものに肉付けをして現実のものにしているものなんです。

機器を作るときはある程度「規格もの」を使いますし、製作所の加工機械によって加工に制限があったり、製作所ごとの力量があったり、すでに型番として存在している、等々、詳細な仕様が決まるにはいろんな要素があります。

基本設計の時点では、規格ものはある程度予測つく場合が多いですが、そのほかの部分は、メーカーに任せたほうがよいのです。実際に製作するのはメーカーですから。

データシートやスケルトンには、「要求」が盛り込まれているので、基本的には「データシートやスケルトンに記載されている数字や項目は絶対変更してはいけない」のです。

ですが、「ここはこのサイズでは作れない」とか、「うちの型番のものだとノズルサイズが違ってしまう」とか、データシート、スケルトンに記載内容と変更したい場合、というのが生じることがあります。

そこで、メーカーさんは、データシートやスケルトンを作成した化工屋さんに「この寸法は変更してもいいか」といったことを確認します。

確かに、データシートやスケルトンの数値や仕様はメーカー側が変更してはいけないのですが、その寸法や仕様をはじき出すためには何らかの計算をして決めているわけですので、当然、少々の仕様変更をしても問題ない場合もあります。変更できない場合もありますが。

そういうことで、化工屋さんに確認して、「変更してもいいですよ」と許可が下りれば、メーカー側でもその変更に従って詳細仕様を決めることができます。

データシート、スケルトンはそういうものなのですが、問題は、「データシート、スケルトンに適当な数字が入っている場合」です。

データシート、スケルトンの欄を埋めないと!ということで、本当に適当に決めた場合。それは別に従わなくてもいいかもしれないかもしれないのですが、メーカー側からしたらそれは従わなくてはいけない内容。

メーカー側で決めて貰っていいものは「By Vendor」としておけば、メーカー標準とか、その都度化工屋に相談とか、最適なものを選定できるのですが、それが化工屋側で適当に決めてしまった場合は・・・それが、高価なものとか、レアな材料だったり、実は強度不足だったり、特注になるものだったら・・・

そういうわけで、「By Vendor」という記載は決して「メーカーに丸投げ」というわけではなくて、設計の責任範囲を示している記載で、最適な設計にするための記載、なんです。

よくあるのが、直胴部分のノズルの位置。プロセスに直接関係なくて溶接線からなるべく近くに配置したい場合、これはプロセスではなくて製作の方がよく知っていますので、「By Vendor」とか「min」つまり、製作できる範囲で最短の長さにしてね、という意味になります。または、かっこ書きで(300)とか書きます。こうやって化工屋さんで記入してもいいのですが、本当の要求は「なるべく短く」。数字にしてしまったら、「なるべく短く」ってわかりませんよね。それから、()は参考値なんですが、数字が書いてあったらそれに引きずられますし、かといって、参考値だからまるっきり無視されて、端に配置してほしいものがど真ん中に来てたらそれも困りますよね・・・

それから、フランジ取り合い関係ない箇所で、メーカーの標準の寸法があるのに、データシートやスケルトンで決めてきたら「これ、特注で作るん?別に作ってもええけど」・・・困りますよね?

そういう「By Vendor」も含め「この仕様、製作するのにどうなん?」という質問を、化工屋さんは待っているんです。

そういうときのキーワード、「プロセスに問題ありますか?」

この一言に、基本設計から詳細設計に渡すときの全てがかかっているんですね。「初めの要求」つまり、ベースとなるプロセスに問題があるかどうか、問題がなければ変更できて、問題がある場合は、もちろん変更不可。だって、そのプロセスを実現するための設備を設計しているんですから。

ちなみに、昔の話で恐縮なんですが、昔は化工屋さんとメーカーさんのすりあわせが結構あったと思うんです。でも、今はスピード重視で、あまりされないのかな・・・

では。

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学部は工業化学系、研究室は化工研。医薬・化学プラントのプロセス/ケミカルエンジニア、流体解析、プログラミング。現在はCAEソフトのセールスエンジニア。 読み物こちらにも。 https://www.pixiv.net/member.php?id=35355899

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