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君は『デイライツ・エンド』を知っているか

ここ最近生き恥の記録ばかりだったので、久しぶりに映画の話をしようと思う。


今回は『デイライツ・エンド』という作品だ。2016年に制作されたアクションホラーだが、2021年最も私を夢中にさせたカス映画である。謎のクリーチャーが、生き残りの人間を襲う、よくあるゾンビ映画の悪い所(褒めてる)が雑にぶち込まれた闇鍋のようなストーリー。

"吸血鬼のような生き物に襲われた荒廃した終末後の世界を彷徨うトーマス・ロークは、ダラスの警察署に立てこもった生存者を助けることに同意する。" 
ウィキペディアより


 オープニングは1台の世紀末改造車がこちら側に向かって走ってくるところから始まる。もう面白い。降りてきた男が、車にレッカーしていた保冷ボックスを銃弾で解錠すると、中から黒い女が転がり出てくる。日光の下に放り出された女のような生き物は呻き声を上げ、徐々に皮膚が煙を立てて焦げていき、最後には焼死体に。なるほど、ゾンビというか、吸血鬼が跋扈する世界か、とプロローグからも読み取れた。
DAYLIGHTS ENDというカッコいいクレジットのあと、スライドショーのようなオープニングが入り、世界が荒廃した経緯が分かりやすくまとめられているので、「お、これはなかなか面白いのでは?」と期待させられた。

良い感じなのは残念ながらここまでだった。

開始15分で既にめちゃくちゃになる。よく分からない警察っぽいのにやたら軽装の女(後に自警団と発覚、だとしても軽装すぎる)が、よく分からないギャングっぽい男たちに囲まれてガンファイアが勃発!そこにうっかり上裸で鉢合わせた主人公・ロークがヤケクソで乱入!!初対面の女性がいるから念のために上裸はやめて、男の正装でああるタクティカルベストonタンクトップでドレスアップ!!知性的に感じる!!
そして絶妙なタイミングで挟まれるメインテーマのカッコいいメタルサウンドが残念感を加速させる。

話が進むと、「物を手に入れるにも苦労する」という設定の割に、主人公ロークを含めて服装がやたらピカピカなことに目が行き始める。世紀末なのに軍人ばりの重装備という絵面だけでもうダメだ、これ以上俺を笑わせないでくれ。手榴弾とか炸裂弾の威力もマチマチで、思わず「イタリア軍製かよ!」とツッコミをいれたくなる。そしてモンスターが跋扈する世界でTシャツ1枚という、戦うにも生きるにもカジュアルすぎる男の中の男・ドリュー。JUST DO IT FOR MYSELF.

さらに吸血鬼の群れのボスこと「アルファ個体」の細やかな動きが雑で完全に挙動不審のため、画面に映るだけで笑ってしまう。ちなみにロークとの因縁を匂わせるのに全く回収されない。伏線の放置はB級映画のお約束だ。

極め付けは、吸血鬼の牙城に乗り込んで掃討作戦をするも普通に失敗して、モンスターを大量に引き連れノコノコというか爆速で基地に帰還する、使えなさすぎるロークに笑いが止まらない。お前マジで何してんだよ!


という具合なので、某映画レビューアプリでは、もちろん評価は低い。こんなに面白いのに…。

それにしても「ゾンビ映画」と書かれているコメントがかなり目立つが、Wikipediaにもあるように一応ヴァンパイア映画だ。「日光に弱い」「動きが俊敏」という、近年の映画やゲームで確認されるゾンビの特徴はどうやら民間伝承の中で吸血鬼から派生して生まれたようなので、あながち間違いではない。
「人の首を噛む怪しい怪物=ゾンビ」という公式が有名になったのは、ゲームのバイオハザードの功績と言って問題ないだろう。バイオはハリウッドでの映画化に成功したことで、「ゾンビ」という一大カルチャーを世界に広めた作品だと思う。ちなみに太陽に弱いはバイオのゾンビにはない設定らしい。

最近見た、韓国で爆誕した吸血鬼映画『王宮の夜鬼』にも「ゾンビ」映画とたくさんコメントされていた。夜鬼はどう見ても吸血「鬼」じゃん…。でも『鬼滅の刃』の鬼は「ゾンビ」じゃなくて「吸血鬼」としてみんな判定する。そこの違いはなんなんだ?「理性」だろうか。確かに吸血鬼と言えば「ドラキュラ伯爵」など一応理性(それが果たして「理性」と定義して良いのかは不明)があるよなあ。吸血鬼でググってみたら、大体は貴族みたいな服着てるし。でも雑魚はギリギリ理性がなかったりするよなあ…。結局、作品側がきちんと「これは吸血鬼/ゾンビです」と受け手に説明しているかどうかなのかしら…。

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