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ワクチンできる?金利上昇?そのときどうする?

ワクチン、金利上昇が話題です。これらのニュースが株価に与える影響について、イマイチ仕組みがよくわからなかったので、自分の理解のために整理してみました。

株式市場で長く投資をする多くの方にとっては、常識の部分が多いと思いますので、もし自分と同じように、「なんで金利が上がると株価が下がるの?」、「なんでグロース株への株価の影響の方が影響が大きいの?」、「巣ごもり需要はどうなるの?」、「リア充銘柄どう選べばいいの?」というハテナマークが頭をたくさんよぎっている方のみ、一緒にお付き合いいただき、これをきっかけに情報・意見交換できれば幸いです。

また、以下で書かれていることは、個人的に調べた内容を整理したメモであり、間違っていることもあるかもしれませんので、その点ご了承ください。そのような点がありましたら、ぜひ、ご連絡いただけると嬉しいです。

金利と株価の関係

金利と株価はシーソーの関係にあります。

一般的に金利が低下すると、株価は上昇します。例えば金利が3%から0.5%に下がるとすると、投資家は銀行に預金して金利を稼ごうとしてもあまりの低金利で利益を期待できないので、株式投資での期待リターンを狙い株式投資にお金が多く集まる = 株価上昇しやすくなります。

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一方、金利が上昇するとどうでしょうか?仮に金利が0.5%から3%に上昇したとすると、投資家は株式ではなく、リスクが少なくリターンも上昇することから、債券・預金など他の投資商品の相対的魅力が高まり、株式市場からお金が抜けるため、株価が下落しやすくなります

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金利上昇のグロース株への影響

■グロース株への金利の影響大
株価は長期的な企業の利益創出を評価して、その現在の価値に基づき決定されています。金利上昇は、企業にとっては、事業活動を行う上での、資金調達コスト上昇を意味するので、多くのセクターで利益を圧迫します。その結果株価に悪影響が生じます。

加えて、バリュエーションの評価という観点で、金利の上昇がグロース株に与える影響は大きいと考えられます。グロース株は、長期的により大きな利益を上げるために、短・中期的には投資フェーズとして損失を計上している企業が多くあります。IPOで上場する企業の多くが成長に向けての投資を重視して、一時的に赤字であるのはこのためです。この赤字は、一定期間内に急成長を遂げ、将来獲得されることが予想される利益が急速に拡大されるという想定のもと正当化されます。

現在の株価は、将来の利益を現在の価値に割り戻したものです。現在価値への割り戻しの際の割引率は、時間が遠ざかれば遠ざかるほど上がります。グロース株はバリュー株に比べて、利益計上の想定が、将来になるにつれて幾何級数的に上がることが織り込まれている傾向があります。そのため金利が上昇し割引率が高くなると、より将来に獲得される予定の利益ほど現在価値に戻したときの価値の目減り幅が大きくなり、株価の低下がより顕著になります。

■巣ごもり銘柄の業績成長低下懸念

次に金利を除いた純粋な企業業績について考えてみましょう。特にコロナ後人気だった、Zoom, Peltonなどの巣ごもり系グロース株については、ワクチンの完成により、巣ごもりが終わることにより需要が低下し、業績の伸びの低下懸念が生じます。確かに、Zoomなどの企業のサービスは、デジタル化は不可避の流れ、仮にワクチンがコロナを抑え込めたとしても、ユーザーはBehaviorを変えているため、引き続きユーザーは減らず、業績は悪化しないと考えられるかもしれません。そしてそれは正しいかもしれません(私も個人的にはZoomなど、コロナ後も売上低下影響は少ないと考えています)。ただ、重要な点は、自分がそう考えたとしても、他の投資家が同じように考えるかどうかです。仮に自分が正しかったとしても、他の投資家が本質を見抜けず業績が悪化するに違いないと考えてしまった時点で株価は下がります。

■「グロース」+「巣ごもり」銘柄の受難
このように「グロース」+「巣ごもり」銘柄は、ワクチンの誕生により、金利と業績成長低下懸念の二つの点で株価の低下圧力を受けることになり、短期的に不利な状況となります。もし特定企業の業績に関して自信がある場合、他の投資家たちがどのように考えるかを想定しながら、底を探っていく動きが必要になりそうです。

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金利上昇の他セクターへの影響

では、金利上昇時にどのようなセクターが追い風を受けるのでしょうか。また逆風となるセクターはあるのでしょうか。

銀行(追い風)
銀行は調達金利と貸出金利の金利差で利ザヤを稼ぐビジネスを大きな収益源の一つとしています。低金利だと金利差が出にくいですが、金利が上昇すると利ザヤ幅を大きくとることが可能になります。そこで利益が拡大しやすくなるため、金利の上昇は銀行にとって有利になります。

ファイザーからの発表があった月曜日、多くの銀行(特に大手ではなく中堅地銀)が株価を20%以上上げていたのは、事業環境の改善による融資機会の上昇に加えて、金利の上昇、上昇可能性が好感された形と考えられるでしょう。

例えば以前のノートで取り上げたダイレクトバンクLive Oak Bancsharesなどは業績改善の余地がありあそうです。同社のローン事業にとってプラスになりそうです。(この会社はコロナ下でも伸びる銀行として取り上げましたので、今後の株価の伸びは出遅れ株のほうが伸びる可能性が高いかもしれません)


保険(追い風)
保険業界は、ユーザーが購入した保険サービスで集めたお金を運用し、収益を上げています。金利が上昇することによってこの運用益が上昇することが見込まれますので、業績の改善に寄与すると考えられます。

公益企業(逆風)
金利が上昇すると公益企業の株価はパフォーマンスが低下するといわれます。これは金利の上昇により債権などの相対的魅力が高まるため、安定した株価と配当を求めて投資家を集めている公益企業の株の競合が増えるためと説明されます。ただ、今回の場合ワクチンニュース後に大きく上げている企業が目立つことから、金利上昇の影響よりも、コロナによる経済回復による業績改善期待が上回っていることが伺えます。

ワクチンによるコロナからの回復=リア充銘柄選択に当たって

これまでコロナで業績が低迷し、コロナ以前に戻ることによって業績改善が期待できる企業には、注目と資金が集まります。これまで一番大きな痛手を受けてきた企業、例えば航空・レジャーなどはワクチンの中間報告のニュースを受けて大きく上昇しました。ただ、ここで一つ気を付ける必要があります。これらの企業はまだまだいろいろなリスクと隣り合わせの部分もあります。

例えばカーニバルクルーズ社を考えてみましょう。この会社は文字通り、クルーズ旅行を運営する会社です。コロナ後クルーズ船の運航は著しく制限されているので、売り上げはほとんどありません。コロナが回復したらすぐに以前のように客足が戻り業績が急改善、株価も急回復するかというとそうとは限りません。以下の会計士ケイさんのTLで議論されている内容を参照ください。

まず会計士ケイさんが懸念されているように、株価Upsideポテンシャルは大きく秘めながらも、財務体力が持つか、が懸念です。売り上げが回復する前に、キャッシュがなくなり、倒産してしまう、という可能性は十分に考えられます。

春先のレンタカー会社HertzのChapter 11申請を思い出しましょう。あんな大手企業が簡単に倒産します。今まで生きているからと言って、明日死なないとは限りません。仮に来月ワクチンが承認されたとしても、ワクチンが全員に行き渡り、経済が全体として正常化するまでは、まだしばらく時間がかかります。アメリカでは過去最高のコロナ新規感染者を連日更新する中で、この冬はこれまで何とか踏みとどまってきた企業も最後の一撃をくらい倒産してしまうかもしれません。もちろん政府による救済策の期待もあり通常の不況期とは異なりますが、固定費が高く、売り上げ減が大きい企業は要注意です。

固定費がクルーズ会社やエアラインほど重くないリテールでさえも、店舗売上に依存している企業は体力が尽き始めてきています。Francesca's の店舗閉鎖のニュースに加えて、破産申請検討のニュースです。このようなニュースが流れると株価は一気に下がります。


また、仮にキャッシュが保てたとしても、簡単に以前と同じ事業環境で売上・利益を期待できるかというと、そうとも限りません。コロナを経て、事業環境がコロナ前とは異なる状態になっており、以前ほど事業パフォーマンスが出ない可能性もあるからです。前述のTLで議論でFAMGMAN丸さんが以下のような鋭い指摘をしています。

また、ワクチンニュースで株価が上昇しても、新たな資金調達で短期的に株価が下がる懸念も捨てきれません。カーニバルクルーズ社はワクチンの中間発表で株が高騰した直後の翌日、増資のニュースを発表し、その後株価は再び低迷しています。(増資の場合、株式の希薄化が起こるので短期的に株価が下がるケースが多い)。長期的には事業を立て直すための資金調達ですから株価の上昇を伴うことが多いとは思いますが、短期的には下落することが多いので注意が必要です。

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話は脱線しますが、アメリカン航空もカーニバルクルーズと同様にまるでこのニュースに合わせて図ったように増資のニュースを発表、同様に株価を下げています。固定費が重く、何も事業をしないでも毎日毎日キャッシュが燃えていく企業の受難が伺いしれます。

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リア充銘柄、ただ単にリア充ならいい、というのではなく、上記のような点を考慮しながら選択していく必要がありそうです。

銀行の投資家への情報提供では何を言っている?

自分は普段ツイッター他から情報を得ていますが、このような重要な変化の局面において、投資家向けにサービスを提供している銀行が何を言っているかを参考にするため、見てみました。

こちらはJPモルガンの投資家向けレポートをそのまま以下に引用します。

====引用=========

Q. ~今後の2大イベント②~ 新型コロナのワクチンの早期実用化が実現したら、金融市場はどう動く?

A. 来年以降のコロナ禍からの脱却期待が高まり、コロナの打撃が大きく、出遅れていた株式が見直される可能性。

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新型コロナに有効なワクチンは、(依然不透明ですが)米国などで早期に実用化されるとの期待があります。仮にワクチンの早期実用化が実現した場合、株価はどう反応するのでしょうか。この点を考えるに当たり、まずはコロナ禍でどのように企業業績見通しや株価が動いてきたのかを確認してみましょう。

【上】で、2020年の利益の変化率見通し(前年比)【水色】と、年初来のリターン【赤色】の関係を見ると、ヘルスケアや情報技術、グロースなど、コロナ禍でも業績が相対的に安定しているセクターやスタイルの株価が堅調だったことがわかります。

一方【下】で、2021年の利益の変化率見通し【緑色】を見ると、コロナの悪影響が大きかった景気敏感やバリュー株式ほど、反動で増益率が高くなる可能性が示唆されています。

年末にかけて、①投資家の目線が2021年に移行する過程で、②仮にワクチン開発が成功し、「コロナ禍から徐々に脱却していく」という見通しの確信度も高まれば、今年と来年の業績変化率の「逆転」を先取りする投資家が増え、出遅れていた株式の見直し買いが強まる可能性があると見ています。

【補足】 企業業績や株価の「水準」と「変化率」の区別

ここで注目しているのは、利益の「変化率」です。一方「水準」の見通しは、例えばITやヘルスケアセクターの2021年の「利益水準」はコロナ前の2019年の水準を上回りますが、エネルギーセクターなどの2021年の「利益水準」は2019年を下回る点に注意が必要です。但し、投資家が株価の「今後の変化率」を考える上で重視するのは、利益の「水準」よりも「変化率」であると考えられます。

====引用終わり=====

雑感

いろいろな変化が目まぐるしく起きています。その中でどのようにポートフォリオを変化する環境に寄り添うように変えていくのか、頭が大混乱します。今回自分の頭の整理のために情報を咀嚼したことで、いくつかのポイントが見えてきました。

今回のコロナでは、以前から見られていた経済成長局面におけるグロース株の優位が圧倒的に加速しました。多くの企業がコロナ禍の中で業績低迷を受ける中で、投資家がコロナ禍の中で利益成長が期待できる企業を積極的に、また消極的に選択した結果もあり、巣ごもりグロース株に投資家の資金が集中しました。またこれまでバリュー株に対してPER、PBRなどを用いて利益創出力を評価してきた手法が、特殊な環境の中であまり参考にすることができなくなり、過度の「ストーリー買い」が広がっていた可能性もあります。

今週のファイザーによるワクチン中間報告のニュースで実感した通り、ワクチンと金利の影響は大きく、個人的にはグロース・巣ごもり一辺倒のポートフォリオを変更せざるを得ないです。

一方でコロナ感染者数は記録的拡大を続けていることから、特にワクチンが行き渡るまでのこの冬は巣ごもりへの揺り戻しがある可能性があると考えられます。

よって、多くの方が薦めている通り、ポートフォリオをバランスよく配分し、リスクを分散しながらリターンを得る必要があることを痛感しています。

以下のようなことを考慮して、ポートフォリオを適宜調整していこうと思います。

・個別株は、ボラティリティが高まることが予想されるため、安定性を求めるのであればインデックスETFなどを選択する。また今後の個別株を選定するまでの間の、資金の退避場所としても利用可能

・個別株を選ぶ場合、当該企業の基本的な事業パフォーマンス(決算)と将来ストーリーに加えて、以下のことに気を付ける。1)他の投資家が何をどのように考えるか、2)倒産リスクはないか、3)利益の変化率

1)自分がいかに企業分析し、この企業は大丈夫と思っても、株価は市場の投資家全体がどう思うかによって決定されます。特にストーリ買いによって株が上昇した可能性がある銘柄は、ストーリー売りの影響を受けやすくなるとも考えられるため注意する

2)倒産リスクがないかどうか

 A)財務体質
  ・借金比率が大きく金利負担が経営を圧迫しないか?
  ・十分なキャッシュを持っているか?手元キャッシュが減っている場合、増資がありうる。増資のニュース後は株価が下がることが多いので気を付ける
  ・固定費が重い事業を行っている企業は、売上回復が先か、倒産が先かのレースをぎりぎりのところで行っている。固定費が重い事業はリスクが高いと認識の上で投資をする

 B)コロナ後の事業環境が本当に以前の事業環境と同じように回復するか?

3)利益の変化率
株価が将来生み出される利益によって決定されるのであれば、利益率の変化が一番大きな影響を株価に与える。出遅れ株のリバウンドが一番株価上昇が見込めるため、これまで見ていなかった出遅れ株をポートフォリオにいくつか組み込む。ただしコロナロックダウンなどのリバウンド時は株価一気に低迷リスクがあるので注意。とはいってもワクチンがコロナを抑え込めるのであれば、低下は一時的か。

当面はワクチン承認、コロナ再蔓延によるロックダウンのどちらにも対応できそうなETF・個別株を中心とし、ポストコロナのリア充銘柄を徐々に増やしていく感じでしょうか。また、もしお目当てのグロース銘柄の株価がワクチン承認や金利の上昇によって低下してきたら、事業として中期的に高い成長を見込めるのであれば、株価は後からついてくるはずですので、少しずつ拾っていければと思います。当たり前の感想ですいません。

最後に、少しでもお役に立てましたら、イイねボタンをクリックしていただけると次の記事も頑張って書けそうです。よろしくお願いします。

参照

米国株式市場は『バブル』なのか / みずほ銀行







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