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ワタクシ流☆絵解き館その156 ゴッホの描いた、深く温かい眼差し。

フィンセント・ヴィレム・ファン・ゴッホ 「緑がかったレースの帽子をかぶった農婦の顔」
1885年 クレラー・ミュラー美術館蔵

ゴッホの自画像はどれも真剣な顔、かつきびしい顔をしている。一方、近くにいた人を描いた肖像画は、かしこまった処のない、自然なたたずまいの表情だ。たとえば数少ない理解者でゴッホを支援もした、画材商タンギー爺さんの肖像を思い浮かべてもらえればいいだろう。
凄い速さで描いていたというから、モデルを頼んで小一時間の内に、描き切っていたのだろう。
この絵は、「こんなばあさんでいいのかい?」と言っているような心を許した穏やかな表情をしている。オランダのヌエネンに1年間いて、農民を描き続けていた時代の作品。

こういう絵のような、おばあさんを描いた絵を見つめていると、自分の祖母の思い出が甦ってくる。筆者の世代(昭和30年代生まれ)では、高齢者と言っても現在ほどには長寿ではなく、こどもの頃に、祖父祖母と死別した人が多いだろう。筆者はそうだった。
いっぱいの愛を受けただけで、こちらからは何もできなかったなあという、どうしようもない悲しみが、何十年たっても消えない。きっと同感してもらえる人がいると信じる。
そんな思いを一編の詩として…。

                令和4年6月    瀬戸風 凪


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