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オンライン演劇『音の世界』という企画に関わって③ 出演者から


ー「音の世界」という企画にまつわる文章を、出演者の皆さんに書いていただきます。第3回目は、小川浩平さん(主人役)。


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正直言えば、情けなくも周期的に演劇熱が冷める時期があるのは否めず・・・現実、やはりサバイバルな業界で浮き沈み激しいもので。
そこに追い討ちを掛けるようにコロナ禍襲来、年内に決まっていた仕事がすべて延期か中止になり、こんなに晴れやかな季節を、こんなに茫然として無為に過ごしたのは人生初かも知れませんね。

もはや私の演劇熱は風前の灯というそのとき連絡をくれたのが、他でもない西村壮悟だったわけですよ。
最近いつも、演劇熱が落ち始めると【お芝居の神様】から連絡が来るんですよね。
今回の神様は、壮悟だったわけです笑

地元の後輩でもあり、もう20年以上の付き合いで、今年の年明け京都駅で二人で呑んでて「久しぶりに共演したいな」って話してたのも束の間、あっという間に実現したってわけです。
20年後の再共演がリモート劇ですからまた驚きましたね。あれだけアナログだった劇創作を電子ネット上に作るんですから、正直気後れしたのも否めませんが、でもせっかくの壮悟の誘いですし、熱再燃チャンスでもあるし即快諾しましたですが。

やはり、歳重ねる毎に新規な物事に億劫になっていきますし、熱を再燃させるのにも時間がかかるようになって来てますね。でも新しい出会い、新しい自分会いの機会をプレゼントされたわけですし、幾つになっても未知事に飛び込めるなんて幸せなことですしね。
新鮮に感じることが減って人間老いると言いますし、ワクワクドキドキできる状況に自分から飛び込んでいかないととも思いましたね。
今回の創作まさに、ワクワクドキドキの連続、右も左も分からないリモート劇なるものだし、久し振り出演でしたし、なんか20年以上昔の初舞台を再体験したような気分になりました。
こんなに細胞活性した新規体験が、この状況下で出来たのは、本当に幸せでしたね。
壮悟ありがとさんきゅう。
我が心の劇聖火、再点火したわ笑


それから、私がこの創作でもう1つアップデートしたのは【出会い】ですかね。
よく言う、俳優は演じる役と出会い、物語と出会い、劇場でお客さんと出会い、LIVEで物語を共有体験するのが【演劇】だ!みたいな。
スタッフサイドも然りで、たくさん出会い、切磋琢磨し、アーティスト個々が持つ違う劇イメージを擦り合わせながら劇細胞を育んでいくわけです。携わる全メンバーの【出会い】連鎖の結晶が【演劇】だということが言えると思うんですよね。

そんでもって、この【出会い】連鎖反応が上手くいくと、おもろい芝居が出来上がる。
「音の世界」座組もこのようなことが当てはまる良い現場だったと思うんですよね。
素直に、稽古場に行きたいと思えたからです。リモートなんで言い方おかしいですけど、みんなに毎日会いたいと思えました。大切なことなんですよね、行きたくなる稽古場。行きたくない稽古場になったらホント毎日地獄ですからね。
行きたくなる稽古場だったお芝居は、お客さんにとっても面白い作品になる、行きたくない稽古場だったお芝居はお客さんにとってもつまらない劇になる。やはり稽古場=劇場なんですよね。
あと、今回確信持って言えるのは、ひとえに座組全員が、心から芝居を愛しているメンバーだったということが1番ですね。


まだまだ賛否あるリモート劇ですが、私的実感としてですが、それ相応の劇創作の場になるような予感はしました。

正直言うと、コロナ禍前の演劇現場でのコミュニケーションより、リモートでの方が、コミュニケーションが能動的になっている自分がいましたね。
新しい領域だということも多分にあったと思いますが、とにかく、物理的なというか、皮膚感覚的なコミュニケーションが無い不安から言動がオーバーになったり、実対面よりコミュニケーション努力が必要だと思ったのが実感ですかね。

それともう1つ、【出会い】として結構な強制力があると思いましたね。
実は普段は、意図的に【出会い】を避けたり加減もできたりできますよね。
だがしかし、リモートだとガッツリ出会わなければいけない。
リモート画面から逃げられないから。
それに、肌触り?皮膚実感が無いから、気が合う合わないとか分からない。ゆえによくも悪くもがっつり出会う。
実は人間関係避ける系人間の私も、リモートではそうはいかない。
だから、そういう煩わしいことから逃げる系人間は、リモートで矯正してもらえて良いかも知れませんね(笑)
とにかくも、今回のリモート創作によって、マンネリ惰性化してた他者とのコミュニケーションを、改めて考え直し、再確認した思いですかね。


また、こんな言葉があります。

「our myriad minded shakespeare」
(万人の心を持ったシェイクスピア)

何百年も残ってる古典劇の素晴らしさは、幾万以上あるという人間の複雑多気な心理が描かれているからです。
到底、現行の学校教育なんかでは教えられない、人間の複雑怪奇な生や性を、やはり、演劇,映画,ドラマなどを通して学ぶんですよね。我々もそうだったように。
だからこそ、今回のような世界的災禍に見舞われて、こんな私のような片隅演劇人でも、そういう機会や場所を守らなければと思ったんですよね。
より多くの物語や登場人物を学ぶことで、他者を思い遣れるようになる。他者や他国を思いやるために想像力が不可欠なんです。
私の周辺にも多発してますが、往々にして想像力の欠けてるやつほど他者を傷つける。このパンデミック時のニュースに日々直面してそう強く思ったんです。
自分を取り巻く世界や他者に対して、より優しくなるための学び舎の一翼として演劇はあるべきなんです。
たとえ超微力だと分かっていてでも、演劇を絶やさないために1歩でも行動したことが大事なんだと思います。
南米の蝶の羽ばたきが、やがて竜巻を起こすように、小さな小さな演劇活動が、やがて大きな大きな演劇界再興の上昇気流を産み出すのを願ったり祈ったりしています。


こんな乱文最後まで読む人はいないだろうと開き直り、纏まらない脳裏を長々書き乱してしまいました。

心より謝罪致します。

万が一最後まで読んでくださった方がいましたら、本当にありがとうございました。
ご連絡いただければ、何か謝罪の品お贈り致します。

ではではみなさま、
まだまだ予断は許されません。くれぐれもお身体ご自愛のほどを。


演劇集団円文芸演出部
小川浩平


0322 - コピー

主な演出作品に「ヴェニスの商人」(劇団本公演)
「夏の夜の夢」「十二夜」「お気に召すまま」「ビロクシーブルース」「象」など。



(西村壮悟より)

僕が大学生のころ、お世話になった大阪の劇団にいはったのが小川さんです。
2コ上で、よぉ聞いたら同じ高校の先輩で、僕が超恐れていたラグビー部の先輩のツレで、しかももうちょい話聞いてみたら、実は隣の町に住んでる、同じ向島中学の先輩でもありました。

ヤングライオンズという、その劇団の若手の仲間内で「小川マン」と呼ばれる小川先輩とは、公演前の最終稽古を大阪は守口で夜10時までしたあと、京阪に乗って僕の親父の2tトラックを京都は伏見区向島まで取りに行って、そっからまた門真の劇団倉庫まで行って、二人で大道具やら何やら積んで、一号線で京都に戻ってきたんが、もう朝になったころ。
なんやもうエエ加減疲れたしヤケくそで、一緒に吉祥院あたりの横綱やったか天一で、ラーメン食って、帰ってちょっと寝て、また二人で三条のART COMPLEXへ9時に小屋入りしたのが、忘れられません。
ちなみにこの劇場、搬入がクソ狭い階段を3階まで手上げで、床も古くて全養生で、とにかくアホみたいに大変でした。
とにかく何から何までそんな感じで、入りたての僕はまだいいんですが、
制作として外回り中に倒れはった小川マンら先輩方を見てると大変さがハンパなく、僕はあれ以来、劇団というものには入ってません。
でも、今となってはこれもいい思い出です。
そんで、今になっても何で積み込み朝までかかったんか、謎です。
小川さんが「ハンドルめっちゃ重いわ~」言うてはったんは覚えてます。

ちなみに、数年前に円で小川さんの同期の吉田久美ちゃんと共演したときに「小川マン同期だよー!」言うてて「そこでも小川マンなんや」と、一人嬉しくなりました。何の話や。


えっと、今回の話では、
小川さん、さすが演出部の仕事もたくさんしてるだけあって、
稽古で、小道具や音楽の用意や、
「こんなんどう?」と、万がいち配信中断になったとき、画面に表示するテロップみたいなのを作ってきてくれたりと、本当に助けてもらいました。
それも「経費払います!」と僕が言っても、全て「ええ、ええ」です。
それか「カルビ一枚」ですから。(これは結局先輩がおごるパターンですね、小川さん!)


そんな小川さんは、『音の世界』の男甲役の山森信太郎さんの髭亀鶴で、
今月末に演出をします。面白い戯曲らしいです、しかも日本初演。
タイトルがそそります。
カナダの戯曲だけど『アイスランド』。
イギリスの、冷凍食品がめっちゃあるチェーン系スーパーの話かもしれません。
ぜひ、チェックしてください!





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