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2019年5月20日という一日

2019年5月20日、尚はPOLARISプロジェクトのPRビデオ撮影に出ていた。これは、2017年末ごろから本格スタートし、2018年11月1日にオープンした学びのスペース「POLARIS」のプロジェクト主体である人事が、人事グローバルアワードに応募するためのビデオだ。

尚は、2018年年初から一年間、企画グループのリード役としてPOLARIS生みの苦しみ・楽しみを味わってきた。それをPRするビデオというのだから作ること自体が楽しい。大森さんが元エンジニアで映像撮影に明るいことから、彼がリードして3分ほどのビデオの割り当てを提案し、登場メンバーが英語コメントや振りを検討した。先週金曜日に細かい詰めとリハーサルを行い、月曜日に一気に撮影しようという計画。

登場するのは5名。大森(エントランス)、田吉(オープンスペース)、片木(研修室)、尚(書籍とプログラム)、田辺(受付)、そして撮影は若い清見。清見はさすが現役のママで、スマホでのビデオワークに長けている。アングルと動きについては、清見が監督だ。この流れを3テイクで極力編集を少なくするように。自社製品のビデオで撮影するメンバーはとても楽しそうだ。

尚は内心、気になることもないわけではなかったが、このプロジェクト自体、役職や元々の専門性を引きずらず、フラットにオープンに最善を尽くすポリシーである。楽しい雰囲気を重視して、撮影チームを盛り立てて作成した。ビデオの最後は、メンバーが勢ぞろいして笑顔で手を振るシーン。”Please vote for our project.” こういった仕事をさせてもらえることは幸せなことだ。

登場メンバーが演技に徹したチームワークのあとは、個人の編集に頼ることになる。そこは元エンジニアの大森が集中してベータ版を作ってくれた。すぐにそれを数名で見ていいところ、変えるところを意見集約する。そしてまた大森が編集。1-2時間のうちにほぼ完成し、それを部長に見せた。部長は笑顔で見ながらも、最初の10秒か15秒ほどみて「いいんじゃない」と去っていた。あまり関心がないな。

このグローバルアワードは、国内人事が関連会社含めて15社ほど、海外拠点の人事も10ヵ所ほどから参加がある。その年の注目施策が受賞してきたこともあり、POLARISプロジェクトメンバーは受賞する気、満々である。国内はもちろん、グローバルも狙っている。

それなのに、部長があまり関心を持たないとはどういうことか。受賞を狙える題材だから部長の関心は高いはずでは?と思いつつ、尚は「他の案件で頭がいっぱいなのだろう、例の人事システム導入が大変そうだからな」と察した。

その日の19時頃に、ほぼ最終版のビデオが出来上がり、尚は安堵と共に帰途に就くことにした。ゴールデンウィーク明けから、今後の企画のために連携を予定している社外との打ち合わせや、POLARISでのオリジナル企画実施が複数進み、丁度金曜日に大きな講演会を終えたところだった。他の業務では新人の人工知能教育に関するアンケート分析も進めていたが、今日は帰ろうと決めた。

思い返せば昨年1年間、自ら飛び込んだプロジェクトで、新しい人事の育成の形を模索してプログラムを検討した。同時にフロアレイアウトや設置する物品について、デザイナーや総務の方々と、喧々諤々含めて忙しくも楽しく尽力してきた。11月1日のPOLARISオープン以降、軌道に乗ってきているし、さらにプログラムの中身を濃くしていくフェーズにあるのだ。達成感と今後への期待が身体中に満ちた状態で、会社のゲートを出て東京タワーを眺めた。

人は、人事らしくない仕事というかもしれない。プロジェクトの8割は建築家・デザイナー・総務など人事以外のメンバーだし、いままで人事の仕事に、スペース計画や社員向けの公開プログラムなど存在しなかった。しかし尚は、これからはこういった仕事こそ、人材育成だと感じていた。POLARISという学びにフォーカスした場で、社員が自由に利用できるプログラム、誰に押し付けられるのでもなく、ピンときたもの、興味があるものを選んで受けることが出来る。“上司に選ばれないと受けられない”、“研修なんて最後に受けたのは何年前だろう?”、あるいは“研修なんて役に立たない”、そんな声とは無縁。ぜひ受けたい、こういうことを知りたかった、面白い、役立つ、そういった内容を用意しているのだ。

5月20日、とにかく今日は満足して帰ろう。尚はその日を特別な一日だと感じていた。

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