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偶然、おっさんの鼻の中に侵入してしまった気の毒な米粒の話


米粒

おっさんは時に、
唐突な笑いを
もたらすことがある。

ある日のこと、
隣の部屋から
全速力で僕のいる部屋に

必死の形相の
おっさんが入ってきた。

僕的には、
この時点で
まあまあおもしろい…

必死の形相の
おっさんに訳を尋ねてみた。


「どうしたん?
 死にそうな顔して・・・笑」

すると、
おっさんは答えた。

おっさん
「晩飯食ってて、
 むせて、米粒鼻の中入った。
 何粒かわからんけど。やばい。
 出てけーへん。どーしよ。
 なんか鼻の奥痛いし。」

とのことだった。
これも、まあまあおもしろい。

でもいまいち、
唐突すぎて
僕の笑いのスイッチも
入ってないし…


「風邪ひいただけちゃうん?
 ほんで鼻の奥
 乾燥してるんちゃうん?」

って返してみた。

すると、
やっぱり必死の形相で
おっさんは

おっさん
「ちゃう。ぜったいちゃう。
 だって飯食ってる途中で
 むせてからやもん。」

なんか怒ってる。
と同時に、
洗面台の蛇口で
鼻うがいを試みている。

当然普通の洗面台なので、
流れ落ちる水に対して
積極的に横から顔を
もっていっている。

しばらく試みていたけど、
ようやく無理だと
気が付いたのか

ただおっさんは
顔面を水浸しにしただけで終了した。

実に滑稽である。
ですが、言葉にしてはいけない。
なぜなら、僕は後輩であるから

おっさんを立てなければいけないし、
何より
当の本人のおっさんが、いまだに
必死だからだ。

改めて僕はおっさんに言った。


「やっぱ風邪なんちゃうん?
 引っかかってから
 しばらくたつでー」

相変わらず、
おっさんは
鼻をフンフン鳴らしている。

そんなこんなで、時間は過ぎていき
僕の帰宅予定時間になった。

相変わらず、
暇そうなおっさんは
犬猫の写真を見ながら
ことあるごとに
フンフンいっている。


おっさん
「ほんま、米粒しつこいわー。
 なんか僕のこと好きみたいやな
 この米粒♪」

全く共感できなかったが、
一応先輩なので
僕は、愛想笑いを返したのち
おっさんに言った。


「多分風邪かもしらんから、
 早めに明日おっさん
 休みなんやし病院行きよー。
 長続きしたら副鼻腔炎なるかもやでー。」

すると、おっさんは

おっさん
「わかった。
 明日も鼻の奥痛かったら、
 一回病院行ってみるわー
 むせたタイミングで
 風邪なったのかもしれへんし。
 ありがとうー」

妙に素直である。
続けざまに、おっさんは言った。

おっさん
「でも多分これ、米粒やねーん。
 鼻におるねーん。
 わかるねーん。」

なんだか、うっとうしいので
僕は無視して帰った。笑


僕の帰宅後のルーティンは決まってこうだ。
近くのスーパーでこしらえてきた
食材を、ちょっとだけ手を加えて
YOUTUBE片手に、酒を飲む。

もうこれを、1年近く続けている。
店のスタッフは僕のことをアル中ともいう。

そんな中、
楽しくYOUTUBEを見ていた画面に
LINE電話が鳴った。

なんだか、
見慣れた腹の立つ名前が
表示されている。

そう。おっさんである。

僕は受話ボタンを押して、
電話に出た。


「もしもし、どうしたー?」

相手は間髪入れずに、答えた。

おっさん
「明日病院行かなくて済みそうー。」

やけにハッピーである。
心配なので聞いてみた。


「風邪かもしれへんし、
 一応行ってみたほうがいいんちゃうん?
 病院にー」

すると、
アゲアゲなおっさんは答えた。

おっさん
「鼻からようやく、十五穀米
 出てきたからもう大丈夫ー
 鼻の奥も、もう痛くないー」

素敵な報告やけど…
どんなむせかたしたん?

しかも…十五穀米やったんや笑
健康的やな…

また次回。


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(๑╹ω╹๑ )