ルンバを手放した日。
2012年10月。
結婚祝いに同期一同から、ルンバをもらった。
実家を出て、夫と2人暮らしになった私。
私にとって、ルンちゃんは可愛い友達になった。
仕事へ行く時に、ルンちゃんに掃除をお願いする。帰宅すると、ルンちゃんが頑張った足跡がカーペットに残ってる。足跡というか、通り抜けた後。
「こんなに頑張ってくれたの。ありがとう。
階段からも落ちずにいたの。偉いね。」
余裕のない生活で、唯一ホッコリする瞬間。
ある日、ルンちゃんに事件が起きた。
いつものように、留守中の掃除をお願いしていたのだが、帰るとルンちゃんがフリーズしてる。
普段は掃除が終わると充電器に自分で戻るのに、キッチンでジーとしてる。
どうした!
駆け寄る。
抱き起こして裏側を見てみると、キッチンマットの糸を1本巻き込んでいた。
巻けるところまで巻いて、力尽きていた。
「頑張ってたんだね。目が粗いマットを置いて、ごめんね。」
事件後は、何かあると怖いので、留守中の掃除はお願いできなくなった。それでもルンちゃんは私の癒しだった。
2014年7月。
新居に引っ越してからは、ハンディのダイソンを買い、ルンちゃんの出番はパタリと無くなった。
2016年11月。
ルンちゃんは別の家にもらわれていった。
きっと元気にしていると思う。
2016年7月。
娘の入院で、少年と友達になった。その流れで母親とも付き合うように。
退院後も仲間で会うこともあった。
彼は母子家庭だった。とても幸せそうだった。
彼の人間性が好きだったので、家庭環境はどーでもいいことだった。
彼は母親が好きだし、母子家庭であることに不満もなく、友人と遊ぶのが楽しいと言っていた。働いている母親を彼なりに気遣っていた。大人以上に気遣っていたのかもしれない。
その母親は、楽しい集いの場で母子家庭の辛さや愚痴を延々と言っていた。息子の目の前で。
私の中にある、“嫌いな大人”がそこにいた。
ヒステリックな私の母親に似ていたのかもしれない。
私が思い付いた母親の口封じは、
「そんなに生活が大変なら、ルンバあげます。掃除の手間が減りますよ。」
その時、彼のために出来ることは
『ルンちゃんを譲ること』しか思いつかなかった。
その母親が、ルンバで黙るはずがないことも分かっていた。
それでも何もせずにはいられなかった。
我が家の押し入れにずーといるより、ルンちゃんも役割がある家にいた方が幸せかな、と勝手に思った。
子どもの時間や楽しい環境を、大人が奪わないでほしい。
彼を母親の呪縛から守ってあげて。
ルンちゃん。
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