百聞は一見にしかず。過去のPOP作品を見てアイディアやテクニックを吸収しよう!
先月7月1日、第5回となる「2022年 全国学校図書館POPコンテスト」の募集を開始しました。特設サイトで応募要項をよくご確認いただき、奮ってご応募ください。
さて。ここで、第4回のふりかえりをしておきましょう。
まずは、参加校、参加者が最大であったということが嬉しいです。
授業の一環として、また学校図書館を盛り上げる取り組みの一つとして徐々に定着している様子がわかります。
コロナ禍ということで、今回の一次、二次審査はスキャンデータにて行いました。最終選考で初めて実物のPOPを見させていただきましたが、改めて生の凄さを実感しています。画面越しに見ても素晴らしいPOPばかりでしたが、やはり手書きの良さを味わうには、現物に勝るものはないのです。
皆さんとぜひこの肉声の凄みを共有できればと思います。
表現方法の豊かさやテクニックも、回を重ねるごとに明らかにレベルが上っています。小・中学生と高校生のレベル差も縮まっているように感じました。先生や司書の方々が熱意を込めてご指導されているのでしょう。
一次、二次選考では学校ごとのひとかたまりで見させてもらうのですが、明らかに「レベルが違う!」と唸らされる学校が増えました。国語、美術、書写など異なった教科でチャレンジしている学校もあります。
教え方で悩まれている学校も多いはず。取り組みで際立った成果をあげている学校の好事例も、どこかで取り上げたいと思います。
また、今回の新たな試みとして、WEBからも応募が可能になりました。
初めて海外からの参加があったり参加校の自体の増加にも直結しました。
デジタルPOPの募集開始もトピックスです。
手書きとはまた違った工夫も見られ、選考するこちら側としても進化に対応しなければならないと痛感しています。受賞作品以外のPOP作品のデータ化も進められています。
百聞は一見にしかずです。
ぜひ多くのPOP作品を目にしていただき、良きアイディアやテクニックを吸収し、次回のコンテストに生かしてください。
POPは本の魅力を人の個性を加えて伝えることのできる魅力的なツールで、本と人とをつなぐ磁石のようなもの。ソーシャルディスタンスの時代だからこそ、より一層重要性が増しているように感じます。
ぜひご一緒に盛り上げていきましょう!
ここからは、"POP王"的な視点で、各賞の中からいくつか取り上げてみていきたいと思います。ぜひ、「2021年学校図書館POPコンテスト結果発表」とあわせてご覧ください。
👑POP王賞
『こどもかいぎ』
・・・いかにも話し合いをしている細やかな子どもたちの表情に、パソコンや名札、虫眼鏡に飲み物など小道具まで丁寧に描きこまれています。会議の様子が空気感までそのまま伝わってきますね。色彩の鮮やかさとイラストの良さ、そしてカタチの面白さに引きつけられましたが、「おこられたとき、どうする?」という問いかけをキャッチコピーとして目立たせ点と、「ごめんなさい」が言いやすくなります!というコメントがとりわけ素晴らしい。文句なしに読んでみたくなりました。
『おしゃべりな五線譜』
・・・カラーとフレームがとてもいいですね。鮮やかな花々の配置の良さ、画面の上を左右丸めて柔らかくして、下側は波打つようなデザインにした工夫が目を引きます。「あなたの音はどんな音?」というキャッチーな問いかけに表情の見えない女の子の姿。奥行きまで感じられて、なんだか自由な音が奏でられているよう。コメントも的確で見る者の想像力を掻き立てるような空気感がとても良い。とても「おしゃべり」(雄弁)なPOPです。
『スガリさんの読書感想文はいつだって斜め上』
・・・イラストの上手さと「斜め」に切ったデザイン性が優れています。タイトルに入っている「読書感想文」に「斜め上」のイメージがそのまま。物語の世界観が、バランスよく一枚の画面に表現されています。字も読みやすいですし、原稿用紙、ペン、しおり、本のイラストも上手く、配置も絶妙。なんといっても「本の読み方は自由です!!」という力強いフレーズにも心を奪われて思わず膝を打ちました。
『盗賊会社』
・・・これは完璧なPOPです。完成度の高さに立ち尽くしました。オリジナリティーあるイラストは、細部に至るまでまったく妥協せずに丁寧に気持ちをこめて塗り込められていて思わず唸りました。キャッチコピーやコメントも、自分の言葉で綴られていてよくまとまっています。ただ上手いだけではありません。見れば見るほど気分も楽しくなって、まるでテーマパークにいるよう。作品に対する深い深い愛情も感じられました。「読書が苦手な人はまずはこれを読め(パンチ)」も素晴らしい!
👑本への愛情が伝わるPOP賞
『バナナじけん』
・・・本当にこの作品が好きなんだという気持ちが全体から伝わってきます。イラストも味があって良いのですがコメントが秀逸です。イラストのこの後がどうなるか気になりますし、小学生が楽しめるとわかる。特におすすめの場面が書いてある点も好感度が高いです。自分の言葉で表現している強みを存分に感じます。
『産まれてすぐピエロと呼ばれた息子』
・・・難病・奇病の本というと手にすることをためらってしまいますが、このPOPはそうした先入観をすべて取り払ってくれます。説明コメントも的確なばかりか愛と優しさに満ちていて、これなら読んでみたいと思わせます。劇場ステージのようなフレームと女の子のイラストも効果満点。完成度が高くて存分に引きつけられました。
👑本の魅力が伝わるPOP賞
『焼肉を食べる前に。』
・・・思わずニヤリとしました。焼き肉はみんな好きなメニューと思いますが、このPOPにはまったく焼き肉感が出ていない点がいいですね。そう、考え方を変えさせる力を感じるPOPです。かわいい牛はもちろん、優しい色彩に包まれた包丁に目、目、目・・・この意外性、ギャップが素晴らしい。まさに本の魅力を捉えた絶妙なPOPです。
『全力片想い』
・・・センスがありますね。実にきれいなPOPで一目惚れでした。黒板に教卓、教室の空気が見事に伝わってきます。あらすじやキャッチコピーを白とピンクのチョーク色で表現した工夫も効いています。後ろ姿の女性や書きかけのメッセージなど見入ってしまいました。立ち止まらせる工夫もバッチリです。
👑インパクト賞
『まちんと』
・・・これはもう現代アートの世界ですね。驚きました。思いの丈をまずは色彩で表現していて凄い才能です。インパクト絶大です。これを書けたら気持ち良いでしょう。眺めていても清々しい。タイトルを載せた鳥と白いキャッチに著者名もキレイで引き立っています。字の見やすさも大きな評価ポイントとなりました。
『ぼくはイエローでホワイトでちょっとブルー』
・・・まずはこの眼力が凄い。ハッとしました。選考していて真っ先に目が合ってしまいましたね。目だけを切り取ったデザイン性だけでなく、色彩の妙も素晴らしいです。タイトルのカラーがものの見事に使われています。上手いです。イラストを邪魔しないキャッチやあらすじのバランスも的確です。
👑キャッチコピー賞
『5%の人 時代を変えていく、とっておきの人間力』
・・・シンプルなキャッチコピーですが、それだけにグサッと心に刺さりました。もしかしたら「5%」の少数派なのかもと思ってしまって、本がここにあれば間違いなく手にしてしまいますね。デザインも吹き出し風になっている点もいいですし、派手な色彩にも惹かれました。黄色にオレンジ。ビビットで脳裏に焼きつけられます。印象に残るPOPです。
『「時間どろぼう」を退治する方法』
・・・全体的にやや大人しい印象のPOPですが、右上の問いかけ「あなたの大切な時間 盗まれていませんか?」にハッとさせられます。「こういう人が狙われている」の選択肢も当てはまらない人はいないでしょう。この問題、他人事じゃないな、と思わせてこれを読めば解決できるんだ、ということもわかります。コメントの流れが非常に上手いです。泥棒のイラストも味わい深いですね。
👑イラスト賞
『クレヨンのくろくん』
・・・POPでクレヨンを使うのはなかなか難しいのですが、よくぞチャレンジして素敵な作品に仕上がりました。色使い、バランスも個性的でいいですね。丁寧に一字一字「どんないろもすてきだね」と書いたメッセージもよく伝わってきます。本当に上手い下手を超えた愛情を感じました。これPOP作成の基本です。
『永遠のゼロ』
・・・バランスが良くて魅力的なPOPです。空を飛ぶゼロ戦はプロペラの音が聞こえるよう。向日葵にも表情があって本当に引きつけられるイラストです。戦争を感じさせる焦げ跡の効果も満点。フレーズはシンプルですが、場所もよくて絵と引き立て合っています。細部に至るまで計算されていると感じました。
👑おもしろPOP賞
『ビジュアル版 戦国武将大百科(3)合戦編』
・・・笑いました。思いっきり個人的なつぶやきが書かれていて好感度満点です。メインコピーも右下の吹き出しも、どちらともチャレンジーですね。しかもダブルで面白いです。ピカイチです。この伸び伸びした感じから夢中にさせる本の素晴らしさが伝わってきます。とても良いです。ただしこの個性、なかなか真似はできないですね。
『13歳のきみと、戦国時代の「戦」の話をしよう。』
・・・このPOPの良さは、存分に自分の言葉で表現している点と自ら楽しんで書いている点です。「こいつら当時めっちゃバズってた!!」って最高。キャッチコピーの宝庫ですね。戦国三英雄がこんなにも活き活きと描かれるとは。ワクワク感のおすそわけ。本そのものの魅力も伝わってきます。
👑アイデアPOP賞
『はらぺこあおむし』
・・・大人気の作品で毎年、あおむしのイラストPOPを見かけますがこのPOPのオリジナリティーには目が止まりました。まさか足形で胴体を作っているとは。さらにめくらせる工夫まで取り入れています。こうしたアイデアは本当に好きな作品で、物語世界を心の底から楽しもうとしている気持ちから生まれたのでしょう。素晴らしいです。
『ドグラ・マグラ』
・・・アイデア抜きにしても、物語世界そのものを見事に表現したPOPで完成度は極めて高いです。読みどころの切り取り方、胎児のイラストなどプロ級でしょう。最大の工夫は見開きにした点ですが、ただ造形的に凝っているだけでなく、開かせる意味合いを感じさせていいと思いました。しかも磁石を使って開閉しやすい配慮もしてあって、心憎い限り。とてもいい仕事していますね。
👑大人の全力POP賞
『おしりたんてい』
・・・この作品も大人気につきたくさんのPOPが集まります。大多数は人気キャラクターの全身、もしくは顔が描かれるのですがこのPOPは大胆にも頭だけ!このユニークな切り取り方に一票です。顔は誰でも知っているんです。POPの下には本もありますし。でもつい描いてしまいますね。勇気ある試みだけでなく、じけんのにおいの表現やぜひ顔だけでものキャッチも絶妙。このPOPタダ者ではありません。
『プラネタリウムのふたご』
・・・素晴らしく完成されたイラストに鳥肌が消えません。そのままポストカードにして値段を付けられるのでは。色彩、奥行き、空気感・・・物語の魅力もギュッと凝縮させていて、全てにおいて最高です。彗星のイメージも鮮やかに伝わってきますね。いしいしんじ先生にもお見せしたいです。
👑デジタルPOP賞
『世界から猫が消えたなら』
・・・劇場スタイルで作品の魅力を的確に表現しています。中央の猫にまず目がいきますが、スクリーンの小物も配置やデザインが素晴らしい。キャッチコピーも生きていて、さらに「皆さんがこの物語に色付けしてみて下さい。」のコメントが秀逸。真っ白なスクリーンに鮮やかな色が見えるよう。作品愛が感じられました。
『余命3000文字』
・・・鋭い切れ味あるテクニックが印象的でした。本を抱えた人物のイラストもオリジナリティーがあって目を引きますが、物語の肝でもある文字を存分に遊ばせる表現に唸りました。文字のデザイン化、なかなか出来るようで難しい。燃え上がる炎のインパクトも絶大でそのまま書店でも使える即戦力POPと感じました。
※まだお読みになってない方は、ぜひ、
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