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玉川学園 図書館のヒミツ

玉川学園の「MMRC」って、なんだろう??

玉川学園は、幼稚部から高等部までの一貫教育を展開している私立学校だ。
緑豊かなキャンパスで、ハヤブサの仲間であるチョウゲンボウをはじめ、多種多様な動植物が生息しているそうだ。
訪れた時はあちこちから金木犀の香りがして、敷地内を歩いているだけで気持ち良く、学びに集中できそうな素敵な場所だった。

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「MMRC」は、「マルチメディアリソースセンター(Multi Media Resource Center)」の略称で、この玉川学園の読書活動と学習活動を支える「総合情報図書館・情報センター」である。

幼稚部、小学部、中学部、高等部がすべて同じ敷地内にあるため、幼稚部生から高等部生まで、全員が学校図書館として「MMRC」を使うことになる。

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(絵本から一般向けの本まで並べられた「おすすめ本」「新着図書」の棚)

MMRC探検① ~対象を限定しない棚づくり~

MMRCでは、幼稚部生向けから高等部生向けまで、すべてを同じ棚に並べている。
書架を対象学年別にしないことで、どの年代の子たちも読む本の幅が広がり、絵本を高校生が借りていったり、小学生が大人向けの本に興味を持ったりといった光景がよく見られるそうだ。

もちろん、幅広い年代が利用する図書館ならではの「本を見つけやすくする工夫」もばっちりで、分類をイラストで示す等、視覚的に読みたい本の場所が分かるようになっている。

MMRC探検② ~自習コーナー~

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これは、「わかめテーブル」と呼ばれている机。わかめのくぼみの部分に腰掛けることで、テーブルを広く使え、全体を見渡しやすくなる玉川学園オリジナルのものだ。
椅子の高さも、MMRC内のその他の椅子より低く設定されている。こうすることで座ったときに周りと顔の高さがずれ、圧迫感を減らす効果があるそうだ。

この「わかめテーブル」、先生たちにも大人気で、ここで会議が行われることもあるそうだ。

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これは「ハイカウンター」と呼ばれている場所。高めに設定された椅子と机で、一人で学習する際に使用される。外の景色も良く見え、まるでカフェのようなスペースだ。

このハイカウンター、なんと、学校図書館では避ける傾向にもある「死角」にあえて設置されている。人目を気にせずに勉強できる環境を学校の側から用意するという姿勢に、生徒への信頼を感じる。

MMRC探検③ ~洋書と英語多読コーナー~

玉川学園には国際バカロレア(IB)クラスや、その準備教育として幼稚部からのBLES(バイリンガル教育プログラム)というクラスがある。そのため、英語の絵本から洋書まで所蔵し、英語多読にも適した環境づくりをしている。

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子どもたちが自分の実力に合った本を見つけやすくするために、多読図書を10段階に分け、年間300冊以上を追加して蔵書を増やし、無理なく読む力をつける体制を整えているそうだ。

新学習指導要領でも英語が小学校5,6年生の正式教科となったこの時代に、楽しく、無理なく英語に接することのできるこの取り組みは、非常に重要なものだと感じた。

MMRC探検④ ~その他のコーナー~

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(先生たちの推薦図書コーナー)

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(雑誌コーナー)

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(新聞のコーナー)

その他、先生たちの推薦図書コーナー、雑誌や新聞のコーナーが設けてあり、子どもたちが知識を広げられるきっかけが盛りだくさんだ。

MMRCの読書ツール

MMRCには、本が置いてあるだけではない。
本をもっとたくさん、楽しく読むための仕掛けやツールがたくさん用意されている。

MMRCの読書ツール① ~読書ノート&読書通帳~

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(左の水色のものが読書ノート、右3冊が読書通帳)

読書の記録をつけていくために、小学部低学年向きの「読書ノート」と、小学部高学年向きの「読書通帳」が用意されている。
表紙を見ても分かる通り、かなり凝った作りになっている。「読書通帳」は、まるで本物の通帳のような見た目で、心が躍る。

中身は小学部の先生と相談して作られており、見やすく、書き込みやすい作りになっている。
もしかしたら、お金がたまっていく本物の通帳より、こっちの通帳のほうが嬉しいかもしれないな、と思う。

MMRCの読書ツール② ~「夢への扉」読破チャレンジ~

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「夢への扉」とは、先生たちの推薦図書のことで、幼稚部から高等部まで、学年に合わせて選定されている。
「読破チャレンジ」は、まさしくこれを全部読んでみよう!という取り組みだ。推薦図書「夢への扉」は、本は読みたいけど何を読めばよいのかわからないという子たちに人気らしい。

MMRCの読書ツール③ ~読書すごろく~

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幼稚部には、「読書すごろく」が用意されている。
先ほどご紹介した「夢への扉」(先生たちの推薦図書)の表紙が、1つ1つシールになっていて、読むたびにこれを貼って1マス1マス進んでいくものだ。

つまり、読書ツール②の「読破チャレンジ」の低学年バージョンである。
幼いころ、わたしもシールが大好きだった。とにかく、シールをどこかに貼りたくてしょうがないのだ。
この読書ツールがあれば、無理なく、楽しく、たくさん本を読むことができる気がする。

どの読書ツールも、ただ本を読むだけでなく、イベント化することで、楽しさと嬉しさがプラスされる。子どもたちの成長を第一に考えているからこそのひと手間に、温かく熱心な想いを感じた。

MMRCは探究型学習の中心地

玉川学園では、開校以来、子どもたちが主体的に取り組む「自由研究」を重視している。小学部、中学部、高等部それぞれで、各自がさまざまな分野から自発的に研究テーマを見つけ、日々研究に取り組んでいる。

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(「探究のやり方」を学ぶ授業が「学びの技」)

そのなかで、2008年度に探究型学習の基礎科目として、中学3年生を対象にした「学びの技」という授業がスタートした。この授業の場となっているのがMMRCだ。

「学びの技」は多くの資料を集め、大量の文章を読解するところから始まり、10月にスライドやポスターで中間発表、卒業前の2月までに論文執筆という、大学の卒業論文とほぼ同じスケジュールで進められる。

MMRCの司書教諭は「学びの技」の授業の計画立案から参加し、各教科と連携して、論文作成時の補助資料の設置、MacとWindowsどちらも扱えるパソコンの貸し出し、生徒が学習しやすい場所の提供などで、子どもたちの論文執筆をサポートしている。

まなびのわざ

(「学びの技」論文集)

「学びの技」の論文集を拝見したが、きちんとした手順で作成されたもので、これを中学生が作成したのか、と心から感動した。

調べて、まとめて、考えて発信する力は、新学習指導要領でも「アクティブ・ラーニング」として推奨されている力であり、MMRCはまさにこれを先駆けて行ってきたといえるだろう。

おわりに

玉川学園では教育において、何よりも、五感を使って「本物に触れること」を大切にしている。そのためなら、スキー選手やNASAの長官など、海外から超一流のプロを招く手間も厭わない。
その一方で、「文献による知識」の強化も欠かさない。豊富な資料が揃ったMMRCがそれを体現している。

「知識」が「経験」の土台となり、もっともっとその先へと発展していくのだろう。

本物から得た「経験」と、MMRCで得た「知識」。
玉川学園の子どもたちは、この両輪で、未来を力強く進んでいくのだと思う。

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