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「一般書通信」の中の人たちが読者に贈りたい本 2022

「本」を贈るのって、ドキドキしませんか?

「あの人はこの本が好きかもしれない」「この本を読んでどんなことを思うだろうか」「ぜひこの本読んで話したいなあ」

誰よりも相手のことを考え、思う。
本を選ぶ瞬間って、そんなすごくかけがえのない一瞬だと思うんです。

……とまあ、なぜこんな話をしたかと言うと、今日は「本を贈る日」だからです。

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【サン・ジョルディの日】
親しい人に本を贈る日。4月23日。昭和61年(1986)に出版関係の団体が始めたもの。サン=ジョルディ(Sant Jordi)はスペイン、カタルーニャ地方の守護聖人で、スペインでは命日の4月23日に本の市が立ち、花とともに本を贈り合う習慣がある。(デジタル大辞泉より

この文化、ご存じでしたか?


4月23日は、この「サン・ジョルディの日」です。さらに言うと、ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)が、本とその作者たちに敬意を表するために定めた「世界本の日」(世界図書・著作権デー)でもあります。

ポプラ社一般書通信では、毎年サン・ジョルディの日に、編集部メンバーから「読者に贈りたい本」をあげてもらっています。

人それぞれに贈りたい本が違っていてとても面白く、各所から好評いただいておりまして……

今年もやります!

「あなたが、読者に贈りたい本を一冊、教えてください」
というお題で、編集部メンバーの有志にオススメ本とコメントを聞きました。

「こんな本あるんだ~」「この本面白そうだな~」など、このブックリストが、新たな本の出会いになれば嬉しいです。
それでは、結果発表!
※順不同です

***

・末吉亜里沙が贈る本

森絵都 著『あしたのことば』森絵都(小峰書店)
コロナや育児で在宅の日々が続く中、手に取ったのがこの本。読んでいる間、不思議なことに過去の思い出が色鮮やかによみがえってきました。8つの短編それぞれに違う画家さんの扉絵があり、めくると突然カラフルな世界が現れて、わくわくが広がっていきます。おうち時間が増えた方にぜひプレゼントしたい1冊。


・稲熊ゆりが贈る本

エーリヒ・ケストナー  著『人生処方詩集』(岩波文庫)
身体の傷を治す薬と同様に、心の穴を埋める家庭用常備薬を作ろう。
そんな発想から生まれたのがこの詩集!
児童文学作家であるケストナーが、日々懸命に生きる大人たちのために詩を選りすぐりました。
「感情が貧血したら」など、症状ごとに目次がまとめられており、
単なる慰めではないユーモアや皮肉を交えた深い言葉たちに、人生のヒントを貰えます。


・編集Sが贈る本

瀬尾まいこ 著『夏の体温』(双葉社)

それぞれの主人公が他者と出会い、少しずつ心を通わせていく一瞬が描かれた物語。表題作を含む3篇が収録されています。どの作品もじんわり温かくなりますが、特にお薦めなのが、「魅惑の極悪人ファイル」。「小説に悪人が出てこなくてリアリティがない」と言われた大学生小説家の大原さんが、悪人を書きたいと思い、学園一腹黒と噂される「ストブラ」を取材するのですが、その描写と二人のかみ合わないやり取りが、もう面白すぎて!! ずっとこの二人を見ていたいという気持ちになります。
一人だと味わえなかった楽しさ、自分一人だと味わえなかった悲しさ、自分一人だと味わえなかった苛立ち、自分一人だと味わえなかった喜びが、つぶさに描かれている物語です。


・吉川健二郎が贈る本

服部文祥 著『アーバンサバイバル入門』(deco)

都会(横浜)に暮らしながら、衣食住をできるかぎり自身の力で作り出す暮らしを実践する著者による、読み応え満点の指南書です。人間が、自然とどのように折り合っていくべきなのか、服部さんの生活ぶりを垣間見ることで、深く考えさせられる一冊です。


・近藤純が贈る本

サリー・ルーニー  著『カンバセーション・ウィズ・フレンズ』(早川書房)
西加奈子さんがブログで紹介されていたのがきっかけで、この小説を手に取りました。心の奥のほうにあって知らん顔していた感情を、ほらっこんな風に感じることもあるでしょ、と取り出して見せてくれるような感じがする作品です。翻訳小説を最近読んでいなかった私でも、21歳の大学生であるフランシスの物語にぐいぐい惹きこまれました。


・浅井四葉が贈る本

ル・コルビュジエ 著『小さな家』集文社
隠居する両親のためレマン湖畔に建てた家を、写真やデッサンを交え紹介した本。飼い犬が喜ぶ覗き穴、目の覚めるような眺めが現れる仕掛けなど、シンプルながら緻密に、楽しく計算された家づくりにワクワクします。いつか行ってみたい……。


・辻敦が贈る本

若松英輔 著『本を読めなくなった人のための読書論』(亜紀書房)
なんだか本が読めない時期がありました。気持ちがすすまない。わりと長い期間です。出版社に勤めているのに。編集者なのに。大学生の頃はノリノリで読んでたのに……。そんなとき出会ったのがこの本。けっこう救われました。


・藤田沙織が贈る本

『ものがたりの家 -吉田誠治 美術設定集―』(パイインターナショナル)
本を読むとき、登場する人物の暮らす家の中の様子を想像するのが昔から好きでした。
読みながら、間取りとか内装、家具なんかを勝手に設定して、登場人物がくつろぐ様子や料理をする姿なんかを思い浮かべたりするのが、今でも本を読むときのちょっとした楽しみだったりします。
この本は、そんな私のために作られた本ではないか!と、発見したとき胸の高鳴りを抑えられなかった一冊。たくさんの家や建物とそこにいる人物の暮らしが、それぞれページいっぱいに描かれており、いくら読んでも飽きない楽しさがつまっています。


・櫻岡美佳が贈る本

伊藤まさこ 著『まさこ百景』(ほぼ日)
スタイリストの伊藤まさこさんの私物が堪能できる一冊。オシャレな人はどんなモノに囲まれ、どうやってモノを選んでいるのか。まさこさんの好きが詰まったアイテムが、素敵な写真と想いのこもった文章で綴られています。私は中で紹介されているペンキにひとめぼれ。さっそく同じペンキを購入しました。アイテム探しに難航したら、この本を頼りにしています。


・森潤也が贈る本

枡野浩一 選『ドラえもん短歌』(小学館文庫)
「ドラえもん」のなかまたちや、ひみつ道具を読み込んだ短歌が集められた一冊。
<僕たちが今進んでいる方向の 未来にドラえもんはいますか>
といったように、グッとくる句がたくさん。考えさせられるもの、共感できるもの、泣けるものなどいろいろあって、隙間時間にちょっとずつ読み進めるのにぴったりです。

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