Free Throw - syrup16gレビュー
三年前から聴き始めたsyrup16g
初めは何となくの心地よさで聴いていたが、気づけば心を奪われてしまい、自分の音楽,精神面に多大な影響を与えたバンドである
今では自分を構成する一つとして存在している
そんなsyrup16g、たくさん曲を出しているがようやくほぼほぼ聴き込めたと思うので、文章を書く練習として、またよりシロップを好きになれるよう各アルバムについて私的に解釈しレビューしていこうと思う
あくまで自分なりの解釈,感想ということで
予めご了承いただきたい
時系列で書いていこうと思うので、今回は一番初めのアルバムであるFree Throwについて
こちらのアルバムは初めこそあまり聴かなかったが、シロップを聴き込んでいく内に大好きになったアルバムだ
初期の時点で五十嵐節が炸裂している
1.翌日
syrup16gの始まりを飾るのは、言わずと知れた名曲
イントロはdelayedead ver.と違いこちらは歪みが少なく、コンプとコーラスで構成されている
初期の五十嵐さんのライブ用ボードは、歪みがBOSSのBD-2しかなく、後はアンプやコンプで歪みや音圧を足していくといったシンプルなものとなっている
そのため他の曲に関しても聴きやすいものが多い
出だしの歌詞から良い
月並みな感想だがきれいな印象を受ける
嘘から抜け落ちたのは、その目があまりに純粋過ぎたからだろうか
これも美しいままの想像で
去年の後半は東京の友人の家に居候していた
池袋駅から徒歩圏内のためよく駅を利用したが、とにかく人が多かったのを覚えている
人混みに揉まれながらなんとか新宿で降りて、タイムスに寄った後御苑を歩くのが休みの日の過ごし方だった
俺は結局あきらめてしまったけれど、このサビはシロップにしては明るい歌詞となっている
歌詞で度々登場する「明日に変わる意味を」
タイトルでは翌日と表現されているが、この歌詞は前述の喧騒も〜の部分から、平坦な毎日、楽しい事や辛い事これら全ては等しく訪れるものであり避けては通れない
しかしそれらは決してネガティブな事ではなく、予定調和的な救いになるのではないか
辛い事ばかりの日々に希望が訪れるのも決まっているのなら、明日に変わる意味は十分あるはずだ
そう言い聞かせているようにも思える
だから諦めず奇跡に向かうのだろうか
2.Sonic Disorder
panic disorder(パニック障害)をもじったタイトル
シロップはこういったのが多い
翌日同様これもdelayedeadに収録されているが、こちらの方がテンポは遅い
ライブでよくやっている印象 特に入りが良い
思考は無化し(昔)
シロップを聴いていると、素直な感情表現も多いが思考停止を表している歌詞もいくつかあると感じる
当時の五十嵐さんの精神世界を映し出しているのだろうか
こういう卑下した言い方は割と自分もやりがちだなと感じる
わかっていても終わりが見えていたとしても、関係を切れない瞬間がある
俺は弱いので..
だから、こうやって自分の行為を卑下して許された気になって、尚君を望んでしまうのだろうか
先生俺にもクスリをください
3.Honolulu★Rock
正直初めはタイトルセンスを疑ってしまった
と、同時にダイアモンドユカイが脳裏に浮かんだ
よく女性の話には共感なんて言うが、これもそれと同じ類の問題なのだろうか
相手のためを思っての行動は、詰まるところ向こうの理解力に委ねられてくる
どれだけ思いやりがあったり気が利いていても、伝わらなければ意味をなさない
大抵人には思いやりが存在しているが
ただ、それを相手にどう伝わえ/るかどうかはまた別の話で
五十嵐さんはその部分をとても丁寧に考えていたのではないか
割と他人は割り切って考えており、わざわざ自分の思い方について疑問を持つ人は少ない
ただこれについて考えてしまうと途端に路頭に迷ってしまう
だから初めから白旗を挙げたのか
自分はハワイにも行ってみたいです あとバリも
4.明日を落としても
これも名曲
このアルバムはdelayedeadに再録される曲が多い
こちらのver.では終始繰り返されるコードの他にリードフレーズが入っているが、これがまた良い
浮遊感を助長している
言い切ってしまった
心に闇を抱える人間への解像度が凄い
貴方もそうだったからですか
日記の書き出しの様な歌詞を気怠げな感じで歌っているが、内容を見るとかなりリアルだ
今でこそこういった考えは割と周知というか、特に若者層に多いと感じるが、1999当時ではまだ浸透してない考えなのだろうか
翌日で明日に変わる意味を問いていたのに
やっぱりこうなってしまうのか、なんて悲しさを感じる
でも、この暗い文章を口語体で歌われると
まあそうだよな・・と沈黙せざるを得ない
サビの後半から様子は変わり始める
前述した心境の吐露に対する自分の解答を持ち合わせていた
より詳細に言うならば自身に対する処世術か
初めから最低を貫いていればそれより辛くなることは滅多にない
悲しいけれど救いにもなりうる
でもそれはその場しのぎでしかなくて
一時的な痛み止めと変わらない
そういう自己の弱さを見つめ、曲はギターソロへと突入していく
そしてラスサビが終わりアウトロに入ると
do you wanna die?と問われる
曲を通してここまで負を肯定されてしまうと思わずはいと言いかねない
人を沈黙させる力がこの曲にはある
5.真空
こちらもdelayedeadにて再録
イントロの圧がすごい
おそらくこのアルバムの中で一番激しいナンバー
出だしから大丈夫かと言いたくなるほど切羽詰まっている状況
けど、そんな夜は確かに実在している
最低って人によって変わるものだろうが、それをいったら自分もそうだ
今もなお活動しているのが答えだが、シロップは陰鬱や諦観を表現した歌詞が多い割に、死にたいと直接書いた歌詞は出てこない
ex.シーツでも死にたいようで死ねない~♪とあるが、ここでの死にたいは既に本人の中で消化されており、死ぬという願望は霧散しているように感じる
要するに、シロップは意外と前向きなバンドだと思うわけだ
冷静に見るとサビ前の歌詞がこれってなんだか笑ってしまう
良い入りで好きだけれど
おそらく優等生だった五十嵐さん、学生の頃はさぞ退屈していたのだろうか
数学の先生が言いたい事を全く理解していなかった当時の俺は空き教室でほぼ尋問のようなものをされていたな
文系なので
曲の合間に流れるフェイザーが気持ちいい
ギターソロのコーラスについては概ね同意
6.You Say 'No'
真空から一転スローナンバー
現実感帯びた日記調の歌詞が展開されている
苦悩や悲しみについて歌っていると思いきや、時折それすらおこがましいなんて言うものだから、たまに俺は突き放されたように感じる
そこまで俺は自分に厳しくなれない
死ぬのも当分無理そう、はもはや俺たちの季語だ
syrup16gなりの挨拶である
散らかった部屋の部分だけ自分の答えがないのは、やっぱりYouは誰かの存在を明示しているのだろうか
永遠と運命、どちらも初めから決まっているのならば同じ意味合いを持つ
けれど所詮時間なんてものは人が暮らしやすくするための物差しでしかなく、本当の時間なんてものはわからないしそもそも存在しない
永遠の愛と運命的な出会い、両者はしばしば恋愛において用いられるがこれも上記同様主観的なものだ
絶対的なものはこの世にはそう多くない
7.向日葵
残りもあと二曲に差し掛かる
バイトの合間から書き始めてようやく終わりが見えてきた
出だしのこの部分が好きだ
きっとそんな訳ないのだが、半ば強迫的に言い聞かせている感じが良い
身長も高いわけではなく、線の細さで言うとアニメ版の初号機くらい細い俺からするとこういうことはよく考える
これに踏まえて威圧感なども持ち合わせていないのでよく舐められやすい
五十嵐さんから想像するにこれは身体的なものでは無く、精神的なものだと推測する
ただ、それを手に入れたらもう前の自分では無くなるのだから、無敵のスーパーマンにはなれなくてもいいのかもしれない
ツイートやそれこそ公衆の面前に向けて文章を書いている今なんかにこの歌詞を見てしまうと、他人の猿真似をしている自分に絶望してしまう
大人数での飲み会だってそうだ
自己肯定感が低い割にプライドだけが高いからこういうことになる
五十嵐さんもうやめてください ねえ
8.愛と理非道
とうとうラストナンバー
今の自分がシロップで一番好きな曲はと聞かれればこれを挙げるだろう
こちらはdelayedにて再録されているが、あちらはギターが無いのに対し、こちらではギターがメインとなって構成されている
ほぼ終始鳴っているリフがとても良い
なぜかこのリフを聴くと新海誠の言の葉の庭を思い出してしまう
何にも考えたくない時はこれをひたすらリピート再生する
タイトルにもある理非道
フロイトのリビドーかと思っていたが、実際のところ理非とどちらか未だにわかっていない
愛と、と付いているのでここではリビドーとして解釈する
Love is destructive.
といった言葉があるように、愛は非常にエネルギー性が強い
リビドーもそれに付随するものだとすれば、日常はたちまち崩壊してしまうだろう
そうしてお互いしか目に入らなくなったら、あとは腐敗していくだけ
現代の社会人なんて大抵死んだ振りeveryday
少子化,低賃金,メンタルヘルス,年金問題…etc
誰もが不景気だと感じる今の社会では
こうやって日々を過ごしていくしかない
そうして一日がそっと終わっていく
甘ったるい絶望が続いていく
もはや死体として生きている自分は思考を停止し眠っていたが、目が覚めるとファーストナンバーで問うた翌日にたどり着いた
何にも考えたくない理由となった辛い日々は振り返ってみると、案外どうでもよかった
結局奇跡は起こらず、辛い日々に変わりはないのだけれど
それでも希望は自分に回らなかっただけで、他の誰かが救われたならと
空っぽの頭で思うのだろうか
ラストナンバーに関しては他と比べて詩的な歌詞となっている
前述した感想など俺の曲解した感想でしかないが
頭に入ってきづらい歌詞や繰り返されるリフがこの曲の浮遊感を構成している
この感じがたまらなく好きだ
終わりに
ようやく書き終えた
途中からpcで書いていたがレポートを書いていた大学の頃を不意に思い出した
初めての試みだったが無事終えれてひとまず安堵している
まだまだ好きな曲,アルバムがあるので、時間を見つけまた更新していきたい
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