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ep19.結婚指輪


マコトは必死で誤魔化してはいたが、麻奈はマコトの金欠を見抜いていた。そこで婚約指輪にはムーンジュエリーの、六芒星を象った指輪をお願いした。

お値段27000円(税込)。月収300万円の麻奈にしてはえらくリーズナブルだが、これは金欠のマコトへの気遣いだった。価格はどうでもいい、大事なのはその形だ。

夫婦の婚約指輪



六芒星、ヘキサグラム(六角形)の形をしている。ダビデの星とも呼ばれているユダヤ教のシンボルで、イスラエルの国旗に印されているのも有名だ。2つの三角形が合わさった形は、魔除けやエネルギーの調和を意味する。

日本で六角形と言えば麻の模様であり、「麻」奈にピッタリ。麻奈とマコトのイニシャルMは、見方によっては三角形が2つ並んでいるように見える。麻奈は安物の指輪に意味を持たせて、マコトに「この指輪でなければならない」と納得させた。

イスラエルの国旗
麻の模様
三角形が2つ並ぶとMになる



この指輪を披露したのが入籍してから2週間後。大麻の隠蔽工作もあったし、突発的な結婚だったから指輪なんて用意してない。麻奈にしてみればアリバイ作りの指輪の値段なんて、どうでも良かった。

大事なのは民衆の「あらー羨ましいわねー」より、指輪についての含蓄と意味付け。先述したような六芒星だの麻の模様だのと、ブログのネタになるなら何でも良かった。

そしてこれはステマでもあった。旧知の役員に結婚指輪の話をして、ムーンジュエリーと広告契約を結んでいた。27000円の安物の指輪で一体、いくら稼いだのか。錬金術とはこのことだ。アッパレ。

その証拠に麻奈は2019年2月、夫のブログ収入が入るやいなやハリーウィンストンの指輪を買っている。「夫がサプライズで用意してくれました」と言っていたが、麻奈が買ったも同然だ。

ハレブロの報酬が入金される前くらいから、麻奈は何とはなしにマコトに指輪の話をする。有名人の結婚指輪のニュースを観て「はぁー、羨ましいなー|ω・)チラッ」といった塩梅で。マコトは買わざるを得ない。小さい頃からずっとやってきた麻奈の必殺技だけあって、さすがに堂に入ってる。そうやって夫を操る。

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