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超特急は、データではなく物質で。

待ちに待ったCDがとうとう届いた。

再配達にならないように、万が一引きとめられた時はそれを振り払ってでも帰るつもりでいよう。そう自分の心に誓って出勤した。

無事(厳密に言うと少し有事だったけど)帰宅。夕食の支度をしながらまだかまだかと、ヘッドライトが光らないか、エンジンとドアの閉まる音はしないか気にしすぎていると、ついにいつもの佐川さんがいらっしゃった。

1日で一番、気持ちに余裕のある夕食後という時間帯に開封。約2ヶ月前から首を長くして待ち焦がれていた宝物が、目の前に広がっている。

ダンボール箱を開く、楽しい。梱包のラップみたいなやつを開く、楽しい。実物を手に取る、やっぱり楽しい。

注文するときのサンプル画像とは比べものにならないくらい、実物は素敵だ。幼い頃から私は、CDのフィルムを剥がすのが恐ろしく苦手で、永遠に開けられないのではないかとイライラが止まらないのだが、開けてしまえばそんなのすぐに忘れてしまう。

再生するよりも前の山場といえば、歌詞カードを開くこと。この時点で既に気に入るだろうなという曲がわかってくる。実際聴いてみるとその予想が外れることもあるから、面白い。

CD本体と歌詞カードとCDケース。こんなにも光り輝く貴重なものを自分みたいな奴が手にとって良いのだろうかと、恐る恐る触れてしまう。物質的には、この世のありとあらゆる場所に存在しているCDと、ほとんど変わりがないのに。


CDを買わなくたって、スマホがあればいつでもどこでも音楽が聴ける。CDを買うよりもサブスクを使った方が断然お得。私も実際Spotifyを愛用していて、今まで知らなかった曲やアーティストにたくさん出会うようになった。

でも、果たしてそれだけで満足できるだろうか。私は出来ない。スマホを開かなくたって、家の中をふと見渡した時に視界に入ってくる音楽が欲しい。「耳で聴く音楽」ではなく、「目で観る音楽」という贅沢が欲しい。そしてそれは、数多くいる好きなアーティストの中でも特に大切で、かけがえのない人たちじゃないと担えないポジションだ。

データさえあれば何でも出来るようになりつつある時代だからこそ、直接肌で触れた時の質感が際立つ。今から半世紀前の日本のように、物質的に豊かではないから一つひとつの贈り物や届け物が特別に感じられる、という点はあるだろう。

ただ、それだけではなくて、今の日本のように物質的にはMAXにほど近く豊かになり、何でもデータで取り込むことができるから、むしろ手元に直接届く「モノ」が特別に感じられるーーそうとも言えると思うのだ。

どんなに世界が発展したって、私は超特急を肌で感じたい。

皆さんが肌で感じたいものは、何ですか?


#買ってよかったもの

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