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#でかい波にビビった日 / 前編

早朝、ティムに叩き起こされた。

『えっ!なに!なに!』時間は朝の4時30分!? マジか!? 

『なんだこんなに朝早く』・・

『バードロックで波上がってるぞ!しかもメンツル!』

『えぇー!』

オレは急いで顔を洗い支度をした。バナナとミネラルウォーターだけをバックパックに詰め込みティムの車に乗り込む。いつもの通りサーフィンの道具一式は前日に車内にセット済みだ。

バードロックの駐車場にはすでに何人かのサーファーの姿があった。ウェットスーツに着替えてビーチへとつながる木の階段を転ばないように慎重に・・朝靄(あさもや)に濡れて滑りやすいので気をつけながら急ぐ。まだ夜が明けきっていないので、あたりはうっすら暗い。

砂浜で準備運動しながら波のカレントを探ってみる。ブレイクの切れ目に岸から沖へ回り込むように向かうカレントを発見した。ティムはすでにパドルアウトして波待ちしているようだった。

丁度、オレがパドルアウトして沖へ向かっているときにティムが1本目の波に乗ってきた。頭サイズのメンツル波は、海底の水が次々と吸い上がっていくようにして波のショルダーが形成されていく。次の瞬間ティムの姿がスッポリと波に覆われてしまった。

『えっー!』

上半身をかがめたティムの体がスッポリとチューブに入ったのが見えた。

『マジか!?  イヤッホー!スゲェー!』

メンツルで形のいい波だったなぁ!

パドルアウトしながら・・ティムではなく、波を見ながら”うっとり”としてしまった。

結構長い距離をパドルして、ようやくウェイティング・ポジションにたどり着いた。

サーファーの数はオレとティムを除いて2〜3人といったところか!? 波は全員に行き渡るくらい充分にある。次々とチューブをメイクするサーファー!ワイプアウトするサーファー!歓声をあげるサーファー!今ここにいるすべてのサーファーが歓喜するぐらいに今日の波は特別にいい。

ようやくオレに順番が回ってきたが・・めくれるように早い波に、十分にレールに加重することができずにボードから振り落とされワイプアウトしてしまった。時間にしてどれぐらいだっただろうか!?

とにかく海の中で長いこと振り回され続けた。やっと水中から顔を出したと思ったらすぐに次の波がブレイクして、またも海中深くに引きづり込まれてしまった。ようやく抜け出した時には、酸欠で頭がボォーっとしていた。

『怖かったぁー!』マジでそう思った。

テイムや他のサーファーにも『おい!大丈夫だったか?』と声をかけられたが・・まったく大丈夫じゃなかった。戦意喪失である。

それでも、何とか自分を奮い立たせてウエイティング・ポジションへと向かう。

セットの波が次々と入ってはくるのだが、なかなかテイクオフできなかった。さっきのワイプアウトが精神的にかなり効いていた。

『恐い!!』

とにかく波待ちしながら深呼吸を繰り返して気持ちをしずめる。と、次の瞬間!ティムが『セットが入ってきたぜ!GO! GO!』

恐怖を払拭(ふっしょく)できずにいたオレだったが・・ティムの声援に後押しされ無我夢中でパドルを始めていた。

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