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アニメ業界の就活、だけでいいの?(減らせマスコミ難民)

こんばんは、ポストモダンの魔法使いです。

さて、昨今の事情はよく分からないですが、大学生のみなさんは就職活動に向けて準備中でしょうかね。いまアニメを作る仕事に就いて、好きな作品を作りたいと思っている方がいらっしゃったら、挙手をお願いします。

およそ20年前の僕だったら、真っ先に手をあげましたね。

でも今の僕は違います。

なぜなら、アニメを作る人たちは好きなようにアニメを作ることができないと分かってきたからです。これはアニメーターの方々は言うに及ばず、放送局から出版社から広告代理店からビデオグラムメーカーからレコード会社から音楽出版社、などなど全てに当てはまります。

アニメ業界に入るよりも一般企業の方が、好きなアニメに関われる可能性が高い

「お客さんが観て楽しいと思う作品を作る」ことが第一、その次にいわゆる「政治」というやつがきて(この「政治」の意味は文章を最後まで読めばわかります)、作り手が作りたいと思ってる作品を作るというのは優先度としては3番目くらいです。第一と第二と第三が運よく重なってヒット作が飛ばせれば作り手の発言力は高まるのですが、それはさておき。

それよりも、アニメ業界の外側から「この作品面白いからタイアップしたいんですけど、こんなイメージで絵を作っていただいてですね、あ、予算はこれくらいで」くらいのことを言える、ムカつくおっさんおばさんになれば、好きなアニメに好き放題介入できる可能性は高いです。

このムカつくおっさんおばさんの正体、これすなわち一般企業の宣伝・広報部署なんですね。

一般企業に入った方が好きなアニメに関われる理由

なぜ一般企業の宣伝・広報がアニメ業界から好き勝手言えるのか。それはアニメの作り手に直接お金を渡すのが彼らだからです。

「えっ、でもそれってスポンサーだよね。子供向け番組ならともかく、アニメ好きの人が観るような深夜番組は作り手自体がスポンサーになるって聞いたけど……」

という意見も聞こえてきそうです。

ところが、最近は一般企業の宣伝・広報とのタイアップの収入は、アニメの作り手にとっては無視できない額になりつつあります。アニメを作る側も積極的に一般企業との結びつきを深めようとしています。なので、一般企業の宣伝・広報担当がアニメ作品に関わる機会は、以前よりも増えているといえるでしょう。

回り道して「ライツ」の話

ところで、アニメのエンドロールを目を凝らして見てください。時々「ライツ管理」のような肩書きの人がいますね。このライツがタイアップ増加のキーワードなのです。

ライツとはもちろんrights(権利)のことです。どんな権利を指すのでしょう。

例えば、ある食品小売企業が「アニメのキャラクターをプリントしたパッケージでお菓子を売りましょう」という話が持ち上がったとします。

このとき、食品小売企業の宣伝広報担当は、アニメの作り手に声をかけます。「貴社の作品のキャラクターを、自社のパッケージにぜひ使わせていただきたい」と。

そうすると、アニメの作り手から食品小売企業に対して、パッケージにキャラクターを使用する権利を許諾し契約書を交わします(業界用語ではapprove:アプルーブといいます)。

その後、契約に書かれた代金を、アニメの作り手に対して食品小売企業が支払います。

上のような「キャラクターを使用する権利」と「お金の流れ」をひとまとめにしたものが、アニメ業界では「ライツ」と言われるものです。

昨今では業界人は作品のことをIPと呼びますが、これはライツがアニメビジネスにとって重要度を増してきたことを表しています。IPとはIntellectual Property=知的財産の所有権であることを鑑みると、業界人にとってアニメ作品は、ライツの塊という認識なのですから。

ちなみに、許諾にまつわる業務を一手に引き受けているのが、アニメのエンドロールに出てくる「ライツ管理」の人たちの仕事です(専門に「ライツ管理」職を立てていない場合は、憶測ですがプロデューサーがその業務を担当していると思います)。

ライツをめぐる発言力は、買い手となる一般企業の方が強い

さて、ここでMichael E. Porter教授の提唱したFive Forcesにならって、売り手と買い手の力関係を見ましょう。

一見、権利を許諾する側、つまりアニメの作り手の方が立場が上のように感じますね。キャラクターの使用を「許す」という言葉のイメージからすると。

でも、実は買い手(例では食品企業の宣伝・広報)の方が発言力は上です。

買い手はアニメの作り手との価格交渉がうまくいかなかったとき、「そうですか、それでは別の作品をあたりますね、アニメじゃないかもしれないけど。とにかくさようなら」と言うことができます。

でも、作り手の方は手持ちの作品を捨てられない以上、制作資金を回収し利益を得るために、少しでもお金を稼がなくてはならない。どんなに世間的にヒットしている作品でも同じです。

こうなると買い手に対してアニメの作り手が取れる手段は、「値下げ」か「買い手の意向を尊重した作品の使い方を許す」のどちらかになります。

結果として、「買い手の意向を尊重した使い方を許す」ことをたいていの場合は売り手は余儀なくされるのです。最初の選択肢である安易な値下げは、アニメ作品の売上を押し下げますので。

買い手の意向を尊重すると、例えばCMのアフレコには買い手の宣伝・広報担当者も立ち会うなんてこともあるかもしれません。アニメでひっぱりだこの人気声優、いやマイナーでも担当者の推しの声優を起用するなんてことも、万が一の可能性ですができないともいえないです。まぁ、相当にイヤな宣伝・広報担当者としてアニメ業界内で噂が広まってしまうでしょうけど。

単にアニメに関わりたいだけなら、一般企業就職も視野に入れよう

というわけで、もしあなたがアニメに関わりたい「だけ」なら、一般企業に入って宣伝・広報部門を目指すのもアリです。本当にアニメを作る喜びと苦しみを味わいたいなら、アニメの作り手になった方が良いかと思いますが。

つけ加えるなら、B2Bの(企業を相手に商売をしている)会社とB2Cの(消費者を相手に商売している)会社でいうと、B2Cの方がアニメに関われる可能性は高まります。

僕はB2Bの企業に所属しているのですが、予算をアニメにつぎ込もうという意識は薄いです。その理由は別稿に譲りますが、例外としては少し前の大成建設の新海誠ムービーや日本IBMのソード・アート・オンラインコラボ、最近は日本ガイシのポケモン起用くらいでしょうか。ですので、会社のWeb宣伝・広報を担当している僕でも、アニメコラボをした経験はありません。

長くなりましたが、アニメに関わる機会はどんな企業にいてもそう変わらなくなってきています。アニメ業界にこだわらず、広い視野をもって就職活動に臨んでいただけたら、マスコミ難民の数も減るのではないでしょうかね。皆さんの参考になりましたら幸いです。

蛇足

世の中、「誰がこんなしょぼい企画を通したんだろう」と首を傾げるアニメコラボが増えていますね。その原因の一端は買い手側の一般企業の担当者が強い影響力を行使した、そう、上で挙げた「政治」の結果かもしれません。

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アラフォーおじさん。普段は勤務先のWebプロモーションとWebディレクションを担当。アニメ制作関係者ドキュメンタリー自主映画上映を目指し奮闘中。 https://twitter.com/pomowizard90、連絡先はpomowizardアットジーメールドットコム
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