最近の記事

さくら

   隣の席の結城が落とした消しゴムが私の足元に転がってきた。  私は、それを拾って彼に手渡してあげる。飛び切りの笑顔とともに。  結城は照れ臭そうに消しゴムを受け取り、ぎこちなく礼を言う。消しゴムを受け取るとき、わずかに袖口から銀色の端末が見えた。  黒板に視線を戻してからもおどおどしている結城に私は意味ありげな視線を向ける。あ、目が合った。かわいらしく微笑む私。慌てて黒板に視線を戻す結城。  私は窓の外を見やる、淡いピンクのサクラの花びらが風に舞っている。  結城はい

    • 読書会に参加してみて感じたこと

       これまでいくつかの読書会に参加してきた。  そんなに多くはないけれど、いろんなタイプの読書会に参加したし、主催者側に立って読書会を開いてもみた。  読書会って楽しいよということをなんとなく伝えてみたいと思って筆を取る。 1 オンラインでの紹介型読書会  私が初めて参加したのは、オンラインでの紹介型の読書会。  紹介型というのは、参加者それぞれが自分が紹介したい本を持ち寄って、その本を他の参加者に紹介する形態。  その会ではZOOMを使って、顔出しなしの音声のみでの参加とい

      • ヤドリギ

         今日の授業も退屈だ。歴史の吉田先生がウケ狙いのつもりで発するジョークはいつも面白くない。 「焼き畑農業の畑に豚がおったらどうなる?」  吉田先生が得意な顔をして私たち生徒に質問してくる。  出た出たあの顔。絶対に面白くないことを言うに決まっているのに、先生は得意満面で話を振ってくる。  生徒はだれも答えない。吉田先生の授業は面白くないし、吉田先生が一応強面の生徒指導教師なこともあって、目を付けられないようにみんな大人しくしていたいのだ。  暇を持て余した私は、左手首に装着

        • ディストピア小説のネタ出し。※作るかは不明。

          思考実験。 もしも、人生の定年が65歳だったらどうなるだろうか。 現状の認識として ○高齢者の医療費の社会的な負担が大きくなり続けている。 ○老齢年金制度に関して、現役世代が減る中で、高齢者が増えて負担割合が増している。 ○少子高齢化により、高齢者でも労働力として勘案され定年が延長されるなどしている。 私の願望として、 ○60歳までは頑張って働くから、老後はゆっくりさせてもらいたい。 ○長生きはしたくないから65歳くらいで安楽死を選ばせて欲しい などと考えている。 人生

          山内マリコ作品たちを読んで感じたこと

          本を読んでいて、「あ、この人は私だ」と思うことがある。 物語の主人公であったり、脇役であったりそれは様々なんだけど、いや、主人公が多いかな。やっぱり心情が分かるからかな。 それは男性キャラクターでも女性キャラクターでもおこる。  私の場合、山内マリコさんの作品でよくおこる。 山内マリコさんの作品って、地方都市が舞台のことが多くて、場所を明確にはしないスタイルなんだけど、とっても富山県っぽいの。 山内さんが富山出身だから、多分にそれが出ているんだと思うけど。 ともあれ、

          山内マリコ作品たちを読んで感じたこと

          本についての思い出と思うこと

          本を読むのが好きだ。 小さいころから好きだった。たぶん母の影響だろう。 母はよく本を読む人だった。 私にもたくさん本を読んでくれた。買ってくれた。贈ってくれた。 幼稚園で絵本を読むが好きだった。先生に読んでもらうのも、自分で本を開いて絵を見るのも好きだった。 小学校では、図書室が好きだった。 たくさん本があって、目移りしながら読んでみたい本を探した。ハリー・ポッターを読んだのもこのころだ。 図書室で借りられなくて、お小遣いで買って読んだ。 友達とは話したり遊んだりする

          本についての思い出と思うこと

          親愛なるきみへ

          親愛なるきみへ きみのひとことが、ぼくの世界を広げてくれたんだ   きみのひとことが、沈んで消えそうなぼくの心を掬い上げてくれたんだ 今、こうして楽しく過ごせているのも、ぼくがここにいるのも、きみがくれた言葉のおかげなんだ   ぼくは、きみのやさしい思いやりが きみのゆったりとした話し方が きみのやさしい声が きみの考え方や文章が とても素敵だとおもう きみのことを人として尊敬している きみと友人として接していられることが嬉しいんだ ぼくは、きみがぼくくれた言葉はぼく

          親愛なるきみへ