【二本目:その席にて待つ】『いま、なんどきだい』【第十一回の配信】
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※無料公開中は虎徹書林作品のご紹介(真ん中へんと最後あたりの二回)が含まれます
腹が減っているのは皆、同じ。無理矢理にでもそういうもんだと信ずれば、辺りの席から漏れ聞こえてくる陰気な囁きも、昼飯に真剣勝負を挑まんとする熱意の現れに思えなくもない。
相席の老人と共に品書きを眺め、これにしようかそれともこっちにしようかと思案していると、徐に老人が、わざと無愛想な風を装い、女将を左手を上げる仕草のみで呼び止めた。
「玉子とじ」
それを受けた女将が心底意外だといった顔