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なぜあなたは選ばれたのか。 制作の現場では、発注する相手をどうやって決めている?(前編)


私は、9年間ほど、とある企業でがっつり働いておりました。
そこでは、出版関係の上流工程(本の中身の制作)から下流工程(印刷会社に下版)まで、また経営企画からプロジェクト推進、新規媒体の工程設計・立ち上げに至るまで、もうどこをどう考えても無節操にw、多岐にわたる仕事を経験させていただきました。
同時にナレーターの事務所にも所属していたので、今風にいうとパラレルワーカーでしょうか。その件については、いつか機会があればお話しようと思います。

終盤、現場で広告を制作するディレクターを経験した時期があるのですが、

今回はその時のお話をさせていただきたいと思います。

当時、私が担当していたのは、紙の雑誌広告がメインでした。
私の場合は、企画と取材を含むコピーライティングは基本自分で行い、
デザイナーとカメラマンは常に外注していました。

この広告制作ディレクター(以下D)時代の私を例に、
外部スタッフに発注するとき、発注する側は何を考えているのか、
という視点をご紹介させていただければと思います。

もうおわかりですね?
そうです。ナレーターも発注先のひとつですから、
この後をナレーターに置き換えつつ読んでいただくと、参考になるのではと思います!デザイン事務所は、さしづめマネジメント事務所ですかね。
ただし今回のお話では、特に宅録で受注するケースが置き換えやすいです。

この後は、デザイナーさんを例にとってご説明します。
そのデザイナーさんですが、発注する側の観点では、大まかに以下の4つに分けられると思っています。


1)クリエイティブはお墨付き、料金も高い凄腕デザイナー

広告賞に出品したいなと言うくらい気合が入っている案件の場合は、間違いなくここです!

料金が高いことについては、予算内であれば大丈夫、という感覚です。
個人のお金ではないので、「安いほど良い」とは、Dの立場では考えません。「いただいた予算をいっぱいまで使い、できるだけ良いキャスティングをして良いものを作りたい」という考え方です。

ただ…、この凄腕デザイナーさんたち、広告業界での大先輩でもあり、気難しい方が多く、たいがいは私の言うことなんて聞いてくれませんw
逆にクリエイティブな提案されることが多く、それはもちろんありがたいものの、その意外性のある案をクライアントに通してくるのは、至難の業…。

私はよく、提案を通してこられずに持ち帰りました(←ダメDの特徴)。
とある凄腕デザイナーさんに「もうお前とは仕事はしない!!」とキレられたことがあります。納品時刻が刻々と迫る中、まる2日ほど電話にもメールにも出てくれない、ということが…。(これはマジ堪えた…、胃が痛すぎた…)
それでも、また別の案件があると「凝りずに電話しちゃいました、てへ」
とか言ってつい連絡をとってしまうのが、この層の方々です。向こうも仕事なので、何もなかったように応対してくれます。
(Dは神経図太くないとやってられない仕事なんですよ〜w)


2)クオリティが高め安定していて小回りも利く、デザイン事務所

そこまでの納期も予算もないけれど、ある程度以上のクオリティを求められている。もしくは私の企画力では心もとなく、企画アイディア(アートディレクションとか)もほしい、などとなると、このカテゴリの制作会社さんを頼ります。

デザイン事務所は、複数タイプの人材を抱えているため、幅広い案件を受けてくれることが多い。
デザイン会社内で、まだ指名のこない新人君をアサインすることはあるものの、必ずトップがチェックして、一定のクオリティを担保してくれます。
つまり、その会社としてのクオリティを満たさない場合は、自社内で担当を変えたり、トップ自らが腕をふるってくれるということです。

そして、人海戦術で、厳しい納期や厳しい顧客対応(理不尽な修正が入りまくるなど)にも、力強く応えてくれます。
「もー、今度だけですよ?次良いの回してくれるよねぇ?」としっかり睨みをきかせつつ(サスガです)。
ここは、大量の案件を動かすDにとって、とーってもたいせつにしなくてはいけない外注先になってきます。たいがい引っ張りだこです! 
うちあわせ等で出向くときには、必ず菓子折りを持っていきますw


3)フリーランスの個人デザイナーさん

流れの(笑)フリーランスに発注するのは、かなりの勇気が要ります。
信用の問題が大きいです。
タフな顧客対応に途中でついてこられなくなるかもしれないし、
体調を崩したり不幸があったりして、納期を守れないかもしれない。
こんなリスクがあるので、独自人脈で見出したフリーの方を採用することは稀です。
友達のデザイナーがフリーになったから…なんて理由で採用することも、ほぼないです。
納期と品質の面でクライアントの信用を失うのが一番怖いし、
何かと手がかかりすぎて自分の時間を奪われるのも嫌だから。
制作Dというのは、たいがい多くの案件を同時並行で進めているので、
クリエイティブではない部分に手がかかることを、とにかく嫌います。

もしそのデザイナーが社内のDとすでに取引実績があったら、
「この方どんな感じ?」と聞きに行って、良さそうなら声をかける。

私はだいたい、まずは2)の会社にあたってみます。
とはいえ業界的に忙しい時期は集中しているので、今キャパがない!と断られます。そこで、次にフリーのデザイナーさんを検討し始めるのです。

一方で、企画意図的にどうしても「とがったもの」が欲しいときにも、
フリーのデザイナーさんをあたります。

言い換えると、
「何でもそつなくできるけど、その分個性少なめなデザイナーさん」
(これはこれで貴重なスキルです)は、業界的な忙しさに比例して、たくさん仕事がまわって来る。

「得意分野がはっきりしている、とがったデザイナーさん」
は、案件が来る回数こそ少なめであるものの、
企画色の強い、おもしろい案件のときに起用してもらえる可能性が高い。

どちらのタイプなのか、Dはポートフォリオを見て判断しています。
ポートフォリオしか、その方の得意分野を知る手立てがないためです。
ポートフォリオを頻繁に更新し、流行りの表現が得意なことをアピールしてくるデザイナーさんには、自然と発注が多くなります。



【後編】に続きますが、さらに赤裸々な内容となっております。(有料)


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