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伊藤孝恵議員とのヤングケアラー政策意見交換会|イベントレポート

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5月24日に参議院会館にて伊藤孝恵議員とのPoliPoliユーザーさんとヤングケアラー政策に関する意見交換会を行いました!

政策について詳しくは以下のリンクからご覧ください。

ヤングケアラー支援については先日、厚生労働省と文部科学省がヤングケアラー支援に関する報告書を国として初めてまとめました

報告書をもとに「骨太」に反映され、これから国の支援が始まっていく、まさに今進んでいる政策です。

国からの取り組みが始まる中でどのような内容を盛り込めば、ヤングケアラー支援はよりよいものになっていくのか。今回は伊藤議員とPoliPoliユーザー8人の方々に話し合っていただきました。

オフラインで参加の方々の自己紹介

西崎さん

国際NGOで活動しています。今日はヤングケアラーについて理解を深めたいと思い、参加させていただきました。

平井さん

介護に関わる事業の立ち上げをしています。事業を立ち上げる中でヤングケアラーの問題が根深いことに気づきました。幸せの可能性を失っている人たちに何かできないか考えています。

小原さん

今年28歳になりますが、8年前に父親を亡くして3年前に姉を亡くしました。今も母親を面倒見ています。去年埼玉の知り合いがグループホームの立ち上げに参加して、そこから福祉分野にも仕事として関わっています。ヤングケアラー支援についても何かできないか考えたく、今回参加しました。

オンラインで参加の方々の自己紹介

持田さん

一般社団法人ケアラーアクションネットワーク協会の代表をしている持田です。自分自身も元ヤングケアラーでして、きょうだいヤングケアラーの支援活動から始まり、現在も主にヤングケアラーの支援をやっています。

志田さん

母が高校時代に精神疾患になって、父は自分が20歳の時に亡くなったので、自分としてはヤングケアラーよりも若者ケアラーとしての実感が大きいです。精神疾患を持つ親の子供の会の集いにも参加したりしています。

奥村さん

30歳過ぎから介護を経験しました。そこからケアラーのコミュニティを作ったり、ヤング・若者ケアラーに関する講演活動や出版活動をしています。若者ケアラーヤングケアラーの何か力になれないかと思い活動していますが、その中でヤングケアラーを18歳で縛る意味はあるのか問題意識を持っています。全世代型のケアラー支援が必要だと思っています。

かたさん

高校生の時に父親が高次脳機能障害になり、ヤングケアラーになりました。大学を休学したりしながら、就職活動をやっています。父の障害は交通事故で負ったものだったので、介護制度をうまく使えず苦労しました。

宮崎さん

ヤングケアラーのコミュニティを運営しています。コミュニティを通じて若者ケアラーの転職支援とかをしています。15・6歳の頃から難病の母親の支援をしていて、今も実家で定期的に介護をしています。

伊藤議員のヤングケアラー問題にかける想い

伊藤議員

ヤングケアラー問題は、なかなか国会では注目されてこなかった問題です。なので先ずは党内からと、2019年春に勉強会を開催し、その後も委員会や調査会なので質問したり、調査項目に入れて頂いたりするなど、認知度アップの取り組みをしてきました。

昨今、厚生労働省と文部科学省が全国調査をしてくれるまでに至り、ヤングケアラーの実態が少しだけ知られるようになってきました。

ヤングケアラーの全国調査では教育委員会への調査を行う予定でしたが、それだけでは足りないので児童・学生本人ににも調査することになりました。全数調査ではありませんが、それでもたくさんのヤングケアラーがいることがわかりました。

当初の調査計画では、教育委員会(学校)への調査のみを行う予定でしたが、それでは調査の意味が半減なのだと訴え、児童・生徒本人にも調査して頂けることになりました。全数調査でなかったのは残念でしたが、それでも、たくさんのヤングケアラーがいることがわかり、政治の取り組みが必要だと可視化されたのは大きな一歩だと思います。

埼玉県のように筆記式の全数調査をやったり、ケア条例をつくったりする自治体を増やす為に今は、愛知県の自治体議員達と一緒に(※伊藤議員は愛知県選挙区)作戦を練っています。6月議会や9月議会で議会質問するほか、市長に直接働きかけてくれる自治体議員もいて、各自治体で少しづつヤングケアラー支援が始まっています。

そして最も重要だと思っているのは「ヤングケアラーを可哀想な存在にしたくない」

ヤングケアラー支援先進国のイギリスでは、ヤングケアラーの課題が顕在化した当初「大変な目に遭っている可哀想な子ども達を救おう」というようなアプローチをしてしまったため、ケアする側とケアされる側のどちらにもスティグマが生まれてしまったといいます。日本では是非、頑張りすぎているケアラーを客観的にアセスメントし、場合によってはケアから少し離す。その際、彼ら彼女らが罪悪感を抱かないよう、家族丸ごとひっくるめて支援すると共に、ケアに対する正しい知識を伝える。ケアラーに自分の将来や未来を想像してもらう、ほんの少しの空き時間、心の余裕を持ってもらいたいと思います。家族を愛すには、愛せるだけの心の余裕も必要なのです。

今日はみなさんの経験や意見をお聞きできればと思います。どうぞよろしくお願いします。

ヤングケアラーを取り巻く課題とは?

持田さん

私はヤングケアラー支援先進国のイギリスに2013年と2019年に視察に行きました。昨年からはイギリス視察時に知ったプログラムを運営する団体でも実施しています。

PoliPoliのスライドの「目標に向けた取り組み」に沿ってお話をするならば

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まず「ヤングケアラーを見つけにいく施策」について。
ヤングケアラー自身が健康なので見つけにくい、埋もれやすいという側面はあります。かわいそうだと思われたくなかったり、家族のことを他人に言えなかったり、家族の役に立っているという気持ちがあったりして、なかなか困りごとを言い出せないのが現状です。そのため、行政や学校と民間支援団体が連携して子どもの直接支援につなげていく必要があると思います。

次に「情報を届ける施策」について。
これはヤングケアラー問題自体の認知度が低いのが課題です。わたしたちは、SNSを使って情報を届けています。

次に「話を聞く」「集う」場所や専門職の育成 について。
ひとりひとりに寄り添って「子どもの話を聞く」「子ども同士で集まる」ためにはソーシャルワーカーと民間支援団体との連携が必要です。また、未就学児や小学生の子どもに向けた施策はすでにありますが、中高生に特化した施策がまだありません。中高生から「10代同士で集まりたい」というニーズがあったので、コロナ対策もあるため、まずはオンラインで集まることから始めました。リアルでも会える居場所支援の準備も始めています。

最後に「心と体のメンテナンスする施策」について。
日本にはヤングケアラーに特化したメンタルケアプログラムがないので、わたしたちはイギリスで行われているプログラムを日本人向けに改良して実施しています。基礎学力をつけるための学習支援だけでなく、このような発展的な学習支援も必要であると感じています。またヤングケアラーだけではなく、親御さんへの心のケアもやってほしいと思います。家庭ごとにいろいろなケースがありますが、家族の困りごとの解決を家族だけに任せない施策が必要です。

大人になったきょうだいケアラーの支援を25年やってきて、これまで930人くらいのきょうだいの方々と意見交換をしてきた経験から気づいたことがあります。それは17歳の時の自分が考えていることと、現代(いま)の17歳が考えていることがまったく同じだということです。つまりヤングケアラーが抱えている課題が解決されていないってことなんですね。本当は家族全体が丸ごとケアされて家族だけでケアに取り組む現状から解放されないといけないのに、昔から同じ状態がずっと続いています。

平井さん

お金を稼げる方法をヤングケアラーの人たちが知ることも大切だと思います。経済的に余裕がないと保険外のサービスを使うことができないんですね。ヤングケアラーの方が稼ぐ力をつけることが解決につながるとも思います。

伊藤議員

リカレント教育はもともと余裕がある人に対して行われるものではないんですね。シングルマザーやヤングケアラーがその場にながらにして稼ぐ力をつけられるようにするための教育は確かに大切ですね。

平井さん

福祉の世界はお金を稼ぐとかをするのが悪とかダメだとか考える人が多いです。でもお金が稼げないと持続可能性がないし、スケールしないなと思います。パブリックマネーに依存しない仕組みを作っていかないと。

宮崎さん

ヤングケアラーの就職・転職支援をしていますが、ヤングケアラーの人たちは介護に理解をくれる会社とかに就職・転職していきますので、それに理解のある人や会社が増えていくといいなと思います。

介護してきたのを評価してもらえない…

かたさん

介護はひと段落して就活をしたのですが、就活ではそれまで自分がやってきたことが評価されませんでした。

就活している時、会社の人事の人たちが介護とか家族とかについて聞いちゃいけないような雰囲気がありました。私にとって介護は生活の根本にあるものでした。

その上で学業とかお金を稼がないといけません。自分の生活の根本を評価してほしかったです。そうしないと介護をしていない人たちと差が出てしまいますから。

支援の場や制度が増えてほしいと思いますが、そもそも社会が介護への正しい認識ができていないと思います。それは介護の負担に対する評価が定量的にできないからだと思います。

それでも人の命に背負うことはバイトとかにも同じような価値があると思います。私は介護している父にも感謝しているし、自分の人生に自信を持っているので、その経験を社会に否定されてしまうと、家族ごと否定されたような気がしてしまいます。

宮崎さん

要介護者が亡くなるなどケアが終わったときにケアラーが次の人生をどのように歩むのかに対する視点が抜けていると感じます。ケアラーに未来を見せて、次の仕事に就けるようにしなければいけませんが、そのためには社会にこれまでケアラーがやってきたことが評価されるようにしてあげないといけません。

伊藤議員

その意味で言えば、精神疾患の場合は出口がないようにも思います。ゴールが見えないのが辛いし、日本に於いて実は、入院日数が一番長いのは精神疾患の方々なんですよね。精神疾患に対するケアについてもお聞きしたいです。

志田さん

スティグマへの懸念はありますよね。精神疾患を持っているそのものがスティグマになってしまう。精神疾患にはものすごい偏見があって、世の中には受け入れられていません。

親が子どもに「他の人に喋ってはダメだよ」と言うことで子どもが相談する機会を奪ってしまうこともあります。なので、精神疾患の偏見がなくなってくれることが一番望ましいです。

ケアラー自身が精神疾患にかかる危険が高いのも問題です。私がコミュニティ内で実施したアンケートでは24%の精神疾患ケアラーが精神疾患にかかり(平均は5%)、精神疾患にかかるリスクが高いのは69%との結果が出ました。

伊藤議員

それで言うと今回、ヤングケアラーに関する調査を厚労省と文科省が共同で行ったのは評価できるところだったと思います。

西崎さん

厚生労働省に文部科学省が協力して調査が行われたのがヤングケアラー分野でしたね。

ケアラーにとってどんなお仕事が望ましい?

小原さん

僕がケアする中で困っていたのは自由な時間がなく、体を壊してしまい仕事ができないということでした。仕事をできなくなってしまって。ただそれでもやらないとだめ。出口がないとおかしくなるので、そこで便利屋という仕事を始めました。第三者の人が手を差し伸べてもらえればもう少し楽になると思っていました。

家の中で仕事する方がいいのか外に出る方がいいのか。人それぞれのパターンがあると思います。僕はむしろ家を空ける方がよかったですね。

伊藤議員

介護の経験を生かした仕事にはどのようなものが向いていたりするんでしょうか。

奥村さん

協力者の有無などケアラーによって介護をする環境は全然違います。僕の場合は在宅ワークするしかなかったです。ケアラーは夜寝る時間がないと心をやられていきます。

一つ提案したいのは夜間の緊急短期ステイ・レスパイト支援です。夜間から早朝の介護ってすごい大変なんですね。

他にも要介護低い人の支援が不足しているとも感じます。要介護1とか2とかでも手が離せなかったりはするんですね。

伊藤議員

今日はすごいヒントをたくさんいただきました。お一人お一人から忘れられない「ワンワード」をいただきました。今日は想いがある方々に参加してもらったと思っていますので、これからも一緒に政策を考えたい、長いお付き合いをいただければ幸いです。

まとめ

先日、PoliPoliには有識者・当事者機能が追加されました!

これは政策分野で実績のある人は現場で活動する方々が政治家さんとつながりやすくなる機能です。(詳しくは以下のリンクをご覧ください)

これからも意見交換会などのイベントを通じて実際の現場で経験したことや支援の現場の声を政治家さんに伝えられるプラットフォームを作っていきたいと思います!

ぜひ以下のリンクから政策に参加してみてください!