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【第3回ポリガレ『飛ぶ教室』】環境配慮行動の裏に潜む心理的な癖

こんにちは、食べるの大好き、PolicyGarage行動科学チームの加藤です。

みなさん、仕事でも日常生活でも、「市民の行動を変えるのって難しいなぁ」「なぜ家族が言うことを聞いてくれないんだろう」などと感じること、ありませんか?
人にはいろいろな心理的な癖があるので、「やりなさい!」と言うだけでは変わらないことがあるのが、難しいところです。

今回は前回に引き続き、英国ナッジユニットが公表しているレポートから、そんな心理的な癖をいくつかご紹介したいと思います。

このレポート自体は、実は、サステナブル(持続可能)な食習慣の促進に関するものです。サステナブルな食習慣とは、例えば地産地消、環境負荷の低い方法で育てられた食品を選ぶ、食品ロスを減らすなどといったことを心掛けた食習慣のことです。
なぜ世界的にこの分野に関心が高まっているかというと、世界の温室効果ガス排出量の約21~37%を食品のサプライチェーンが占めているからです。
日本人は伝統的に環境によい食生活をしているイメージがあるかもしれませんが、平均一日一人あたりお茶碗1杯分にあたる食料を捨てており、一食分の食事による温室効果ガス排出量の約1/4を肉類が占めています。8月には環境省も、「サステナブルで健康な食生活の提案」を発表しています。
このレポートの中では、サステナブルな食習慣を呼びかけるための12のコツが分かりやすく紹介されているので、ぜひ本記事の末尾の和文要約をご覧になってください。

と言いつつ、実はこのレポートで取り上げられているポイントが、環境関係の施策全般やそれ以外の分野にも応用できる内容になっているので、今回はそんな観点で3点ご紹介したいと思います。

■「あなたのため」か「社会のため」か(全般)

例えばシートベルト着用義務化のように、個人の自由を制約しつつも個人のためになる政策は多数ありますが、このとき「自分の勝手だから、自分の自由に口を出されたくない」という理由で反対にあうこともしばしばあります。
では、禁煙やサステナブルな食事の促進の政策など、本来は社会のため(受動喫煙防止、環境保全)である政策については、個人へのメリット(健康)よりも社会的なメリットをアピールすべきなのでしょうか?
ある研究では、「社会のため」のナッジよりも「個人のため」の方が受け入れられやすいことが示されています。これは、政策を受け入れるにあたって、自分自身へのメリット・デメリットというのが重要な判断基準になるためです。
つまり「社会のため」とPRされていたとしても、自分がその政策で不利益を被る側になる可能性が高ければ(例:煙草やお肉が大好き)、結局は拒否感が先行してしまうことになるということです。

■罪悪感を感じさせるよりも、望ましい行動をとることにプライドを感じられるメッセージ(コツ④)

「このチョコレートケーキを食べるとあとで後悔するよ」とネガティブなことを言われると、自分を肯定しようという気持ちが働いて、自分を合理化したり(「たまのご褒美だし!」)、忠告そのものやそれを言ってくれた人を拒絶したりして(「この人は分かってないだけ…」)、結局食べてしまう。
それより、「ケーキを食べなければどれほどそれを誇りに思うか」想像してもらう方が、行動につながることが実験で示されています。
特に、大変だったり楽しくない行動について、この傾向が顕著とされています。

■ときには、行動に紐付いたアイデンティティを打ち破る(コツ⑦)

例えば「環境配慮」や「菜食」は女性的、「肉食」は男性的なアイデンティティと紐づける人が多く、それと自分自身のアイデンティティとのギャップが無意識に行動の障壁になっている場合があります。
そのため、そのイメージを打ち破るメッセージを発することで、行動を促進できる場合があります。
例えば日本の「イクメン」という造語やその宣伝は、育児を男性的なイメージと結び付けた好例だとして紹介されています。


環境問題の悲惨な結末をイメージさせることで行動を促したり、環境に良い商品のパッケージに緑色や、お母さんをイメージさせる絵を使ったりする例がありますが、行動を変える効果はどの程度あると皆さんは考えますか?

(参考)英国ナッジユニットの発行したレポート:サステナブルな食習慣を促進するための12のコツ

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『飛ぶ教室』は、ドイツの作家エーリッヒ・ケストナーの、知恵と勇気を題材にした児童文学小説です。
タイトルの『飛ぶ教室』は、小説内の戯曲の題名で、世界中を飛び回って現場から学ぶ、未来の理想の学校を描いています。
知恵と勇気を持って社会を変えようとする方のために、最先端で現場主義の学びの場を提供したいという想いを込めて、ポリガレの『飛ぶ教室』を開講します。
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