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お試し移住から考えるその土地で暮らす意味~高島編~

こんにちは、Polaris 自由七科のちひろです。
Polarisでは「ここちよく暮らし、はたらく」ことを大切にしています。日々のここちよさにとって、どこに住むかということはとても大きな要素の一つ。コロナ禍でリモートワークが進み、「移住」が注目されたりもしました。しかしそれでも、住む場所を変えることはそれほど簡単ではありません。

今年の夏、Polaris取締役の野澤恵美(のざわさとみ)さんが、滋賀県高島市に家族で1カ月間お試し移住を体験しました。高島市には、恵美さんの元職場の後輩で転職後もずっとお付き合いのある上田未來(うえだみき)さんが移住しており、未來さんを訪ねてこれまでも何度か訪れたことがあったそう。今回は行政の制度を利用して、夏休みに長期滞在してみることに。すると、今まで感じたことのなかった「土地に生かされる」という感覚をもったそうです。

移住を考えるとき、たとえば生活のしやすさや教育環境、移住者が多いかなど、様々な条件について検討してみると思います。一方でここちよさとは、そういった条件や数値では測りきれないのも事実。高島で暮らすここちよさはどこからくるものなのか。高島に住んでみた感想を恵美さんと未來さんに話してもらいました。

プロフィール

野澤恵美(のざわさとみ)

一番左から恵美さん、自由七科メンバーのくわっちゃん、弥和さん、そして私。
いつもリモートではたらくメンバーが高島に集合。

Polaris取締役。コミュニティ事業部担当。東京都狛江市出身、三鷹市在住。5児の母。
一緒に仕事をした人など、自分と関わりのある人を訪ねながら多拠点で暮らしてみたい、という思いがあり、2022年8月に1カ月間、家族で高島にお試し移住を果たす。
お試し移住の体験記はこちら。

上田未來(うえだみき)
アートイベントスタッフをきっかけに高島に通うようになり、20XX年移住。2019年にシェアキッチン「白湖(はこ)」をオープン。滋賀県出身。
白湖の情報はこちら

左から恵美さん、未來さん、白湖に定期的に出店されているめぐみさん。
地元食材を使い、郷土料理にインスピレーションを受けたごはんにお腹も心も満足。

多様性を包摂してくれる風土

さとみ:私は東京生まれ東京育ちで、今まで暮らしの中で歴史を感じることがなかったのだけど、高島で暮らしていると土地に脈々と受け繋がれているものを感じたんだよね。受け継いできた自然や歴史が、自分を包摂してくれているような感覚があった。お会いした移住者には繊細な感じの人が多かった印象があるけど、高島には多様な人を受け止めてくれる包容力があるのかも。

未來:私も移住者と接していると“柔らかい”人が多いなと感じます。中には、都会では生きづらさを抱えていた人もいると思います。でも、みんな芯は強い。仕事も娯楽もたくさん選択肢がある都市とは違って、自分で仕事を創りだしていかないといけなかったりしますしね。生きることに真剣に向き合っている人が多いんだと思います。人に合わせることが苦手で、自分が納得する生き方をしようという思いに忠実というか。そうすると内省のループに入っちゃったりもするけど、そこに時間をかけることには寛容な土地。適当に解を出さずに、ゆっくりと自分と向き合うことができる風土があります。都市よりも時間の流れがゆったりしてますね。

さとみ:そうだね。そうした風土の背景には、自然環境からの影響が大きいと思う。琵琶湖がいつもすぐそばにあって、人の心を癒してくれる。波がなくて、静かにそこにあるのが海とは違う感覚をもたらしてくれるよね。もちろんそれだけではなくて、人々は琵琶湖の水に生かされている存在。空が広くて、里山があって、高島は自然の巡りをおのずと感じる土地だよね。自然というと厳しさの面も大きいけれど、高島では自然のやさしさの方を強く感じたな。

未來:高島にいると、そうした自然が脈々と受け継がれてきたものだということをひしひしと感じます。自分もその大きな流れの中にいて、自分をどう活かすか、土地のために何ができるのか自然と考えちゃいますね。

里山に囲まれた高島。青く広がるのが琵琶湖。

巡り巡る価値

さとみ:未來さんがやっている白湖(はこ)は、まるで交差点のような場所だと思った。近所のおばあちゃんが来て、話したいことをただ話して帰って行ったこともあったよね。滞在中、お客さんじゃないけど、近所の人がふらっと寄っていくことが何度かあって、すごくいいなと思った。目的のない場所が街にあるって大事だよね。

未來:経営的にはダメかもしれないけど、数字だけでお店を捉えたくないと思っています。もっと高い視点で、回り回ってくる価値みたいなことを考えたい。

さとみ:回り回ってくる価値というと、私もPolarisで働いたことがその人の人生の何かの役に立てばいいなと思ってやってる。仕事のやり方を見ていると、その人の家庭での様子とか、子どもにこういう風に接しているんだろうなというのが見えてくることがある。仕事でぶつかっている壁も、それを乗り越えることで、その後の人生が変わってくるんじゃないかな。仕事ってその人らしさが現れるもの。仕事のやり方が変われば、仕事以外のどこかにも影響が出ると思う。私は組織づくりに関わりながら、人の人生に関わる仕事だなと思ってやってるよ。

白湖でのイベント風景

生態系の中で自分を活かす

未來:やっていることの価値が直接自分に返ってこなくても、どこかで役に立っていればいいですよね。自分もまたそうした誰かの恩恵に彩かっているのだから。高島はその恩恵が歴史の上に成り立っているんです。高島という生態系の中で、お店や自分の役割を果たしていけたらいいですね。お店を経営していくうえで、数字はもちろん大事ですが、それだけじゃない価値を認めてもらえるように、お店や自分を常にアップデートしていきたい。

さとみ:組織というのも一つの生態系だよね。高島が私を受け入れてくれたように、Polarisが多様な人を受け入れられる東京の高島みたいな場所になるといいな。

未來:高島で自分を活かすことを考えていると、どんどん本来の自分に近づいていく感じがするんです。これからも過去から受け継いできた高島の良さを、未来に残していきたいです。

さとみ:私は高島で、自分自身も柔らかく変化して、外に開かれていく感覚があった。この感覚をもって、これからどう生きていくか、お試し移住で新しいテーマが見つかった気がするよ。

編集後記:住む土地から何を受け取り、何を返すか


さとみさんの高島滞在中に私も日帰りで高島を訪れました。針江という水のきれいな地区を車で走っていると、子どもたちが浮き輪を着けて流れるプールのごとく水路で遊んでいるのを見てびっくり。この地区には湧き水を汲める場所がたくさんあり、住民のみなさんは生活用水として使われているとのことでした。
 
私たちが生きる上で必要不可欠な水を生活や遊び、様々なシーンで共有することが、さとみさんや未來さんが感じている土壌を生み出しているのかもしれません。
 
二人が感じた土地に生かされる感覚は、理屈では説明しきれないことではあります。でも少なくとも二人は、その思いを共有できている様子。そして高島の包容力が、自分たちを本来の自分に近づけてくれていると感じているようです。
 
住む土地から何を享受するか。住む場所を考えるときの新しい視点を二人から教えてもらいました。

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