見出し画像

#11 みちでバッタリ/いちごの淡雪

旬の食べものには「走り」(一番さき)と「名残」(終わりごろ)がある。

いちごももうそろそろ終わりかなぁ、でも、あまおうが1パック200円で買えたりして、ウレシイ。

画像4

卵白といちごで、和菓子の「淡雪かん」を作ることにした。

いちごの淡雪の作りかた

名残のいちごで、淡雪。
淡雪かんは、えーと、なんて説明したらいいんだろう、
フワッフワのメレンゲって言えばいいのかな。
しゅわしゅわのムースのようなお菓子です。

材料(グラス3つ分)
・いちご・・・6粒くらい+飾り
・卵白・・・2個分 ※余ったときに冷凍しておけば、自然解凍で使えます
・グラニュー糖・・・30g~40g(いちごの甘さで、お好みで)
・粉寒天・・・2g
・水・・・100cc
お好みで飾りにレモンなど。

作りかた
①いちごをブレンダーやすりこぎなどでピューレ状にする。
②水と粉寒天を鍋で沸騰させて、1分ほど火にかける。①のピューレを加えてさらに1分加熱し、入れ物を変えてすこし冷ます。
※キウイやパイナップルで作る場合も酵素で固まらないので、必ず加熱してください。
③ボウルに卵白 を入れ、砂糖を3回に分けて入れながら、角が立つまでメレンゲを立てる。
④③のボウルに②の寒天液をそーっと流し込む。
⑤型に入れて固める(いちごの薄切りを型に入れるなどしてもよい)
冷蔵庫に入れて2時間くらいで固まります。

画像1

ふわふわでござる。

画像2

断面を見せてもかわいい。柄にもなくかわいいものを作って、照れる。

一緒に味わいたい詩


舌にのせるとふわ〜っと溶けて、いちごの粒がぷちぷちと甘酸っぱい。
何度も何度も口に運んでは、胸に淡い思いが広がる。
レモンの皮が、爽やかに苦い。

12歳の岡真史さんが書いた、こんな詩はどうだろう。

みちでバッタリ 岡真史

みちでバッタリ
出会ったョ
なにげなく
出会ったョ
そして両方とも
知らんかおで
とおりすぎたョ
でもこれはぼくにとって
世の中が
ひっくりかえる
ことだョ
                  『ぼくは12歳』より。一部抜粋。

そのあと「なんべんもこの道を歩いた」けど、
「もう一ども会わなかったよ」でストンと終わるこの詩。

気になる人に、バッタリ出会った。
気になる人と、目があった。
気になる人に、「おはよう」って言われた。

「世の中がひっくりかえる」くらいの大・大・大事件!

なのに、友だちや親にはバレないように、なんでもないような顔をして。
次の日には、また会えるかもと思いながら胸をドキドキさせて。
もらった何でもないメールを、何度もベッドの中で見返したりして。
(アドレス交換するだけで、ドキドキしたよね〜エモい〜〜)

ひとを好きになる、って、世の中がひっくりかえることなのだ。
淡い、でもまったくもって無視できない気持ちを、人知れず幾度も反芻する。

まっしろなメレンゲにいちごの赤いピューレをまぜあわせる瞬間。
淡雪がふわーっと溶け、また一口、また一口と甘酸っぱさを味わう瞬間。

ああこんな恋だった、こんな淡い、まじりけのない、実らぬ恋だった・・・と
学生時代の一瞬一瞬の心の動きを思い出して、胸がキュンとなる。

いつか訪れる恥ずかしさと戸惑い、
恋にいつの間にか落ちたリアリティを
こんな風に凝縮した歌を、ほかに知らない。
(ほかの詩があったら教えてほしいです)

作者の岡真史(おか・まさふみ)さんは、12歳で自ら死を選んだ。
もっと、彼の気持ちが揺れ動く瞬間を、目撃したかったな、と思う。

詩は人生の一幕の目撃、なのだ。



余談。


いちごの淡雪、凍らせるとまたすごーく美味しいです。
シャリ、ふわ。ハマりそう。
はじめからそうしたい場合は、砂糖を+10gくらいしてもよいかな。
生クリームを入れなくても、こんなにフワフワになるとは、大発見。
ハーゲンダッツじゃなくてこれでよいよ。

画像3

そういえば、「いちごの俳句ってどんなんがあるんやろ〜」と思って
神様の贈り物ことインターネット(byしりひとみさん)でググったところ、

あるきながらいちごくひけりいちご畑 正岡子規 
いちごある園の小道や下駄の跡 正岡子規 
いちごとる手もとを群山走りけり 正岡子規
唐人の皿に盛りたるいちごかな 正岡子規 
いちご盛つて紅の雫流れけり 正岡子規 
ほろほろと手をこほれたるいちご哉 正岡子規

正岡子規、めっちゃいちご詠むやん。

いいけど。

画像5

作者とおすすめの本


作者についての私的解説
岡真史(おか・まさふみ)1962-1975、東京生まれ。
夏目漱石を愛読するような繊細で早熟な読書家だったようだ。お父さんは小説家・高史明さんで、彼の『生きることの意味 ある少年の生い立ち』という名著が受賞した年の死だった。両親が遺稿をまとめて『ぼくは12歳』というタイトルで発刊。

おすすめの本


『生きることの意味 ある少年のおいたち』(※お父様の本)もあわせてどうぞ。←めっちゃ読書感想文向きの本です。


この記事が参加している募集

おうち時間を工夫で楽しく

そのお気持ちだけでもほんとうに飛び上がりたいほどうれしいです!サポートいただけましたら、食材費や詩を旅するプロジェクトに使わせていただきたいと思います。どんな詩を読みたいかお知らせいただければ詩をセレクトします☺️