見出し画像

はるの ゆきだるま(絵本)

絵本『はるの ゆきだるま』を紹介します。

さみしげな冬の景色にはじまります。

やまの なかに ゆきだるまが たっていました。
ゆきだるまは ずっと ひとりぼっちでした。

ある日、どうぶつたちが通りかかります。

「このあたりも まだ はるが きていないね。」
「はるって いったい なんだろう?」
ゆきだるまは おもいました。

こぎつねや、こぐまや、こだぬきや、こりすがいます。
ゆきだるまが話しかけると、

「うん そうだよ。みんな もう はるが まちきれなく なったんだよ。」
こうさぎが かけよって いいました。
「はるって そんなに すてきなものなの?」

ゆきだるまがそう聞くと、みんな春をほめました。

「おはなが いっぱい さいて、ちょうちょが とびはじめるのさ。」
こうさぎが ふりかえって いいました。
「はるを みつけたら、ゆきだるまさんにも
はるの おみやげを もってきてあげるね。」

こうして、約束をひとつしました。

ゆきだるまは また ひとりぼっちに なりました。
でも、もう さびしくは ありません。
「こうさぎさんたち、どんな はるの おみやげを  もってきて くれるかなあ。」
ゆきだるまの こころは、はるの ことで いっぱいでした。

やがて、春が来ました。

やまのふもとでは、どうぶつたちがよろこんで遊びます。

「そうだ。ゆきだるまさんに おみやげを もってかえるんだった。」

そう、こうさぎが思い出した時、もうさくらが満開でした。

どうぶつたちは急いで、花を摘んで、やまへ行きました。

どうぶつたちが ついたとき、
ゆきだるまは とけてしまって いました。
「ごめんね。ゆきだるまさん。」
こうさぎは なきながら いいました。

そこに花を置いていきました。

それから春がすぎて、こうさぎがとつぜん、言いました。

「あっ、ゆきだるまさんだ! ゆきだるまさんが いる!」

どうぶつたちはみんなで駆けて行きました。
しかし、それはゆきだるまではなく、

ちょうど ゆきだるまの たっていた あたりに さいた  たくさんの しろい はなでした。
どうぶつたちは だまったまま いつまでも
その はなの ゆきだるまを みつめていました。


『はるの ゆきだるま』作・絵 石鍋芙佐子 偕成社 1983

この記事が参加している募集

雨の日をたのしく

眠れない夜に

詩の図書館の運営に当てます。応援いただけると幸いです。すぐれた本、心に届く言葉を探します。