配達自転車を追いかけて

わたしは街へと自転車をこいでいた。

信号待ちでとまり、足をつく。

ぼんやりと前をながめていると、某乳酸菌飲料のお姉さんが、自転車の前後左右に大きな荷物をのせて同じように信号待ちをしていた。街なかではよく見かける光景だ。

オフィスに配達かなあ。

荷物、重そうだなぁと思いながらぼうっと見ていたら、その自転車の後輪、左側にとりつけてあるフックにかけられたカバンが突然「がばっ」とひらいた。

フックにかけられた透明なトートバッグの取っ手が片方はずれ、もう片方だけで引っかかっている状態になったのだ。しかも中身の重みで、透明トートはほぼ、全開状態に。

ああ!

教えてあげたほうがいいかな。いや、教えてあげたほうがいいよね。いや、でもちょっと遠いんだよなぁ、ここ。近くのひと、気づいてくれないかな……。

そんなことを1、2秒思いあぐねているあいだに、信号が青に変わり、お姉さんは自転車をこぎはじめてしまった。ああああ。

ここから先は

1,778字
どうでもいいことをすごくしんけんに書いています。

<※2020年7月末で廃刊予定です。月末までは更新継続中!>熱くも冷たくもない常温の日常エッセイを書いています。気持ちが疲れているときにも…

自作の本づくりなど、これからの創作活動の資金にさせていただきます。ありがとうございます。