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とあるご夫婦の、とある糸島移住のお話。

先日のnoteで、「とある取材で素敵なご夫婦の自宅に伺ってお話を聞く機会があった」と書いた。

そのご夫婦のインタビュー記事が公開されたので、今日はちょこっと、そのライター後記のようなものを書いてみたい。

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今回お話を聞いてきたのは、札幌から福岡・糸島へ移住したご夫婦。圭太さんと、沙織さん。

もともと圭太さんは札幌市役所に12年勤めていて、沙織さんも8年ほど、会社員として働いていたそう。おふたりともいわゆる「安定したお仕事」に就かれていた。

そんな仕事をふたりとも辞めて、糸島へ移住。いったいどんな経緯があったのだろう。そして移住されて、実際いまはどんなふうに暮らしているだろう。そんなお話を聞きに、ご自宅をたずねた。

山が近く緑に囲まれた土地に、ご自宅を発見。

ドアを開けていただいて玄関を入ったら、いきなりサーフボードがずらりと並んでいて、なんだか勝手に嬉しくなった。

いや、わたし自身は運動音痴で、波乗りにチャレンジしたことすらない。ないのだけれど、いくつか海辺の街で暮らしていたこともあって、ビーチカルチャーの空気感はとても好きだ。自分は憧れだけで止まってしまうぶん、海と親しむ方たちをみると単純に、ああ素敵だなあと尊敬してしまう。

なんだかほくほくした気持ちになってリビングのドアを入ると、ふわり、コーヒーのいい香りがした。

「入った瞬間にコーヒーの香りがしていいですね」と言ったら、「え、コーヒーの匂いします?」とにこやかに返されて、ああもうこれが、ここでの日常の香りなのだな、とおだやかな気持ちになった。

ふたり暮らしにちょうどよい、心地よい大きさの一軒家。木を基調とした空間に優しいBGMが流れて、窓からは緑あふれる庭が見える。なんだかとっても居心地がよくて、家なんだけれども、カフェのようだ。

こうやって、自分たちの思い描くライフスタイルをひとつひとつ、つくっていっているのだなあ……。“森”色に設えられたカーテンを見て、それを選ぶふたりの姿を想像しながら、そんなことを思う。

コーヒーを片手にぼうっと物思いにふけりたくなってしまう空間で、いやいやあかん、仕事せねばとなんとか自分を律して、いろいろとお話を伺ってきた。

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もともとは「海辺でカフェ」がやりたくて、糸島へやってきたという話。でも移住後、飲食店ではたらくうちに、自分たちがやりたいのは「カフェ」ではないなと、「夢が更新されてきた」話。そして始めた、新しい事業の話。

おふたりはいま、『森とコーヒー。』というコーヒー関連事業をはじめて、ネットショップなども展開されている。年内には自宅の庭の隣にトレーラーハウスを置いて、そこを焙煎所にするそうだ。

なぜ、安定したお仕事をやめて移住したのだろう。なぜ、カフェではないと思ったのだろう。なぜ、固定の場所じゃなくて移動式のトレーラーハウスなのだろう……。

そんな思いの背景をいろいろと伺ってきたので、「ライフスタイル」「移住」「転職」「お店をはじめる」あたりのキーワードに興味のあるかたは、ぜひインタビュー記事を読んでほしい。

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個人的に印象的だったのは、おふたりの自然な笑顔と、自分たちが心地よいと思えるライフスタイルを突き詰めて考え続けている姿勢だった。

お話のなかで、「最初はこう思っていたけれど、やってみるうちに変わって、こうなった」ということがいくつか出てきたのだけれど、その柔軟性というか、変に固執せずにどんどん更新してゆくスタイルは、見ていてとても心地よくて、時代にのってすいすいと泳いでいるような軽やかさを感じた。

あとはね、最後に淹れてもらったコーヒーがおいしくて。

コーヒー、好きだけれど、大手チェーンのブラックコーヒーは濃すぎてあまりたくさんは飲めないと感じる自分にとって、すっきりとして罪悪感なく飲みきれる、やさしい味わいだった。

“ああ、わたしも、今住んでいる街じゃなくて、もうちょっと、都会と田舎の中間あたりに引っ越してのびのび暮らしたいのだよなあ……”。

「自分たちらしいライフスタイル」を探しながら、着々と形にしてゆくおふたりの姿をみていて、さてわたしも、自分の引っ越しにぼちぼち真剣になろう、と思った。

(おわり)


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P.S. ぽこねんアカウントとして公開させていただいているお仕事はまだまだ一部なのですが、せっかくなのでその一部については、たまにこんなふうに、ライター後記的なものを書いてゆこうかなと思っています(掲載媒体の許可を得られているものに限り)。

取材で得たものを、「大勢に読みやすいもの」として記事にすると、どうしてもこぼれ落ちてゆくもの、削らざるをえないものはあるし、でもそのふわふわとしたまとまらないものが、個人的には紹介したいものだったりするので、そんなふとした感情を、noteのほうに書きとめられたら。

自作の本づくりなど、これからの創作活動の資金にさせていただきます。ありがとうございます。