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お風呂をめぐるあれこれ

気密性のかけらもない、古びたマンションに住んでいる。

なもんで冬場は、外からの冷気がそりゃあもう、窓の下あたりから何の思いやりもなくぴゅうぴゅうと入ってくる。

だってレースのカーテンが揺れている。

思わずフリースのひざかけをぐるぐると丸めてロール状にし、レースのカーテンを押さえるように、床とのすき間を埋めた。やれやれこんなふうだから、我が家はいつだってごちゃごちゃなんだ。

リビングでそんなふうなので、風呂場なんてひどいものだ。

窓からの冷気をそのまま反映して、隅々までしんしんと冷えている。

浴槽も、なんというのだろうあの、昭和時代によく見られた「深くてせまい」タイプなのである。きっと「ぎりぎり昭和生まれ」の同世代な方々は、一枚くらい、幼い自分が「深くてせまい浴槽」に入っている写真が、色あせたアルバムに入っているんじゃないかと思う。

少なくともわたしは、結婚式の準備で夫とそれぞれ昔の写真を集めていたとき、まったく同じような「深くてせまい浴槽」に浸かっているこども時代の写真をみて、ああ、ほんとうに同じ時代を生きてきたんだなあ、と思った。

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どうでもいいことをすごくしんけんに書いています。

<※2020年7月末で廃刊予定です。月末までは更新継続中!>熱くも冷たくもない常温の日常エッセイを書いています。気持ちが疲れているときにも…

自作の本づくりなど、これからの創作活動の資金にさせていただきます。ありがとうございます。