世界に点在する7人のチームで、とあるコーヒーカルチャー誌を編集するひと。
お洒落なコーヒーカルチャー誌の日本語版編集長さんに取材だというから、どんな雰囲気の方だろう、スタイリッシュにはほど遠い自分がちゃんとお話を伺えるかしらと、内心どきどきしていた。
取材場所として指定されたのも、素敵なカフェ。
入る直前、道の反対側から、同じようにカフェを目指して歩いてくるひとがいた。颯爽と歩くその姿に、ああ、きっとあの方に違いないと確信する。
店の前で挨拶をすると、気さくな返事と、はにかんだような優しい笑顔。
緊張していた心が、フッとゆるんだ。
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そんな彼、室本寿和さんは、世界53カ国で読まれるコーヒーカルチャー誌『STANDART』日本語版の編集長だ。
オーストラリアやオランダでの居住経験も経て、いまは福岡に拠点をおき、世界に点在する7人のチームで、そのコーヒーカルチャー誌を作り上げている。
先日、そのインタビュー記事が公開されたので、今日はまたちょこっと、そのライター後記的なものを書いてみたい。
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室本さんにお話を伺っていて、個人的に一番刺さったのはその働き方に関するお話だ。中でも、国境を軽々と飛び越えるチームのあり方は衝撃だった。
“まずチェコにオーナーとデザイナーがいて、スロバキアにスロバキア語とチェコ語版を作っている人がいて、ちょっと前まではブラジルにコンテンツを考える人がいて……今はイギリスに戻りましたけど。ロシア語版を作る人がモスクワにいて、僕と日本語版を一緒に作っている友人がオランダ、そして僕が日本の福岡にいて。ちなみにオーナーは今年25歳で、とても柔軟な発想力の持ち主です。”
出所:【F-LIFE SHIFT story vol.13】オランダから移住し、世界53カ国で読まれるコーヒーカルチャー誌を福岡で編集する理由。
今でこそ「リモートワーク」は珍しくない世の中だが、これはまたちょっと次元が違うと感じる。
どこかに大規模な“拠点”があるわけでもなく、本当に世界各地に、バラバラにチームメンバーが点在して、ひとつの雑誌を作り上げている。自立した個々があってこそ成せる、チームのあり方だ。それが成り立つチームメンバーたちとはきっと、働いていて互いに最高に楽しいだろうなと感じた。
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さらには室本さんが小さなお子さんを持つ2児の父であり、「子どもが生まれてからは働き方を変えたいと考えていた」とおっしゃっていたことも、育児中の自分にとって深く心にのこった。
いまは家族と遊んだり、一緒に昼食や夕食をとったりしながら、自宅を中心に、自分のペースで仕事を着実に進めてゆく。でもその舞台は、世界。
いつも身近にいてくれたお父さんが、実はそんな毎日の中、世界を舞台に仕事を繰り広げていたという事実に気づいたとき、お子さんはどんな気持ちを抱くだろう。きっと自慢のお父さんだよなあと、わたしは端からみていて勝手に思ってしまったりするのだけれど。
室本さんのライフスタイルやその背景については、いろいろとお話を伺ってきたので、コーヒーカルチャー、海外、移住、福岡、働き方、雑誌編集、ライフスタイル、あたりに興味のある方はぜひインタビュー記事をどうぞ。
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どんな暮らしがしたいのか。どんなふうに働きたいのか。
どんなふうに、日々の時間を過ごしてゆきたいのか。
確かにお洒落なコーヒーカルチャー誌の編集長さんに取材だったけれど、意外にもその取材を通して一番胸に残ったのは、自分にとっても身近なテーマだった。
(おわり)
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▼おまけ
▼ 前回のライター後記はこちら。
自作の本づくりなど、これからの創作活動の資金にさせていただきます。ありがとうございます。